October 2022

SHACKLES OFF

VBCの新しい色、
モロッカンブルーを仕立てる

text tom chamberlin
photography kim lang

バックパネルのバランスをチェックするロレンツォ・チフォネリ。

 このポケットはロレンツォが最近開発した、究極のユーティリティポケットだ。容量を増やすためにベル形のシェイプとし、入れるものによって伸び縮みするインバーテッドプリーツが畳み込まれている。フラップにはボタンが付いており、中のものが飛び出してしまうこともない。ポケットのサイズは、フランネルと同色の革製シガーケースを注文して、それに合わせて決めた。

 最初のフィッティングではポケットは付いていなかったが、シルエットは完璧だった。肩山のシルエットはチフォネリのアイコンで、その形を作るにはアームホールの配置が重要だそうだ。クチュール的でありながら、これは着心地のよさを追求した結果でもあるという。2回目のフィッティングでは、ジャケットはアームレスだったが、本体はほぼ完成していた。ここでロレンツォと私はこの生地の素晴らしさを再認識した。鮮やかで、柔らかで、滑らかで、刺激的だった。

 ようやくコロナ禍が下火になりつつある今、長年にわたって親交のあるロレンツォとこうして再び会えたことが嬉しかった。この年齢になると、自分が好きな人としか付き合いたくないし、そんな私に付き合ってくれる彼らに感謝している。

 ロレンツォにフィッティングしてもらうのは、楽しいスポーツのようだ。彼はあなたの回りを巡り、鋭い目であなたをスキャンする。彼はジャケットのウエストシェイプ、ヨーク部分を何度も確認した。私は身長が高く、うなじが長く、肩幅は広くかつなで肩なため、バランスをうまくとるには、たくさんの技術的な工夫が必要だろう。

 このVBCとパントン社がコラボした生地は、今までにない色味であり、今回はそれを最大限生かすよう工夫した。それは世界で最も革新的なテーラーにインスピレーションを与えた。私の新しいジャケットは、2022年のビスポーク界における、記念碑となり得るかもしれない。

左:フロントに配されたプリーツとフラップが装備されたカートリッジ・ポケット。右:背面にはハーフベルトが付きピンチプリーツが入っている。

6つボタン下1つがけの意匠は、チフォネリのアイコニックなスタイルである。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 47
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