ONCE IN DAVID'S CITY
現代のファッション界を変えた男、デヴィッド・ガンディ
April 2025
photography matthew eades

David Gandy / デヴィッド・ガンディ1980年、イングランド出身。英国のモデルコンテストで優勝した後、ドルチェ&ガッバーナのキャンペーンに起用され、大ブレイクした。THE RAKEインターナショナル版をはじめ、数多くの雑誌の表紙や、ブランド広告に登場している。メンズのモデルとしては最も成功したひとりとされ、別格のスーパーモデルとして君臨している。
ヴィンテージカーが似合う男ダヴィッド・ガンディが最も似合う場所は彼が生涯愛してやまないヴィンテージカーのコクピットである。普遍的な美しさを愛する彼がチョイスするアイテムは、クラシックなものばかりだ。
カシミアのドライビング・セーター Connolly 時計「スピードマスター ’57」¥1,408,000 Omega(オメガ Tel.0570-000087)
デヴィッド・ジェームス・ガンディは、1980年2月19日にイギリスのエセックス州バーズウィックで生まれた。父親は貨物会社を経営し、母親は主婦という家庭であった。決して裕福ではないが愛情に包まれた穏やかな少年時代を過ごした。
幼少期から「クラシックカー好きの少年」として知られ、英国の伝統文化や職人技に惹かれていた。少年時代は目立つ存在ではなく、むしろ控えめな性格で、モデルとしてのキャリアなどまったく考えもしなかった。
大学ではコンピューター関連の学位を取得し、将来は自動車業界での就職を目指していたという。現在の彼の姿はまさに人生の予想外の展開だと言える。
彼の人生はひとつの偶然から大きく変わった。20代前半、大学時代のルームメイトが彼の写真を英国のテレビ番組「This Morning」のモデルオーディションに密かに送ったのだ。彼は見事に優勝し、ファッションモデルとしてのキャリアをスタートさせた。
しかし、当時のファッション業界ではエディ・スリマンが確立した中性的で細身のモデルが主流で、筋肉質で男らしい体型の彼は「業界のスタンダードから外れている」と避けられることも多かった。

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彼が一躍有名になったのは、2006年にドルチェ&ガッバーナの香水「Light Blue」の広告キャンペーンに抜擢されたからであった。このキャンペーンは、地中海の青い海を背景に、白いトランクスを穿いたガンディがボートに横たわるという、非常にシンプルながら象徴的なビジュアルで、瞬く間に世界中で話題となった。
当時、この広告は1,100万回以上も閲覧される大ヒットを記録し、ドルチェ&ガッバーナの香水の売り上げは飛躍的に伸びた。細身で少年のようなモデルが主流だった時代に、彼は「力強く成熟した男性像」を提示し、それまでのトレンドを一新したのである。
ファッションモデルとしての成功だけにとどまらず、ガンディは多方面にわたる才能を発揮している。2012年には「デイリー・テレグラフ」紙にコラムを執筆し、同時期から雑誌でクルマ評論もスタートさせた。フォトグラファーとしても活動し、特にクルマ写真の分野では評価が高く、展覧会を開催している。
2021年には、自身のブランド「David Gandy Wellwear」を立ち上げた。このブランドは、「着心地のよさ」と「サステナビリティ」をテーマとしている。
彼のファッション哲学は一貫している。「トレンドに流されるのではなく、普遍的な美しさを追求する」というものだ。そのため、彼が愛用するアイテムは、スリーピーススーツ、チェスターコート、トレンチコートなど、クラシックなものが多い。
特にスーツの仕立てにはこだわりを持ち、ヘンリープールをはじめサヴィル・ロウを頻繁に訪れている。ガンディにとって、スーツは単なる服ではなく、「武器」であり、「クラシックな装いこそが時代を超える美しさを持つ」と語っている。

ガンディはクラシックカーの収集家としても知られている。「ミッレミリア」などのイベントに参加してはその魅力をアピールしている。彼にとって、クラシックカーもまた「時代を超える美しさ」を象徴するものなのだ。
プライベートでは、長年交際していたステファニー・メンドロスと結婚し、2021年には第一子が誕生した。父親となった彼は、社会貢献活動にも力を入れている。
ガンディのキャリアは、単なるモデルの成功物語ではない。彼は男性像を再定義し、クラシックな美しさを現代に蘇らせたのだ。実業家、父親、社会貢献者としても多方面で活躍し、その影響力はファッションにとどまらず、ライフスタイル全般に広がっている。ガンディが築き上げたスタイルと哲学は、これからも多くの男性にとっての「目指すべき姿」となり続けるだろう。

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DIGITAL TECH: TOM GREEN
HAIR STYLIST: BOBBY COLLIER AT LARRY KING
GROOMING: RACHEL SINGER CLARK
PHOTO ASSISTANTS: WILL CORRY & EZRA JOLLY
RETOUCH: THE LAUNDRY ROOM
本記事は2025年3月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。
THE RAKE JAPAN EDITION issue 63