Monday, September 2nd, 2019

伝説のダイバーズウォッチ
MILITARY HERO: THE TORNEK-RAYVILLE TR-900

無作法な埋葬

 海軍の規則に従い、腕時計はAEC(Atomic Energy Commission、アメリカ原子力委員会)に送り返され、低レベル放射性廃棄物として処理された。制服やバッジ、配管などの他の低レベル廃棄物と一緒にコンテナに入れられ、コンクリート詰めされた上で、アメリカの砂漠地帯の地中深くに埋められた。「トルネク-レイヴィル TR-900」は、わずか1000本あまりと生産数が非常に少なく、潜水中のダイバーが多くを紛失してしまった上、残ったほとんども70年代初頭を最後に政府によって廃棄処分されたため、現在あらゆるミリタリーウォッチの中で最もレアな製品と言えるかもしれない。近年の調査によると、現存する個体は20本ほどであると言われている。
 しかし、フォース・リーコンのモーリス・J・ジャック曹長(当時)のTR-900はAECによる廃棄を免れ、彼はその後もベトナムで腕時計を5年、さらに海兵隊で7年間使用した。1977年の退役時には、上級曹長に上り詰めている。退役後の10年間も、ジャックはいつもこの時計を着用していた。支給された当時のナイロン製のストラップに、小型の液体封入型コンパスを付けた状態で。
 TR-900はほとんど忘れ去られた存在となり、今となっては時計学で困難な時代を指す些細な脚注に過ぎないが、本稿によって再び正当に評価されることを切望してやまない。

唯一無二のダイバーズウォッチにオマージュを捧げた最新作

 1950年からブランパンのCEOを務めていたジャン-ジャック・フィスターは、スポーツダイビングのパイオニアでもあった。彼は自らの経験に基づいて、防水性、視認性、そして安全な回転ベゼルの開発に力を注ぎ、水中での正確な計時を実現した「フィフティ ファゾムス」を誕生させた。白から赤く変化してケース内への液体の侵入を知らせるディスクは1957年から「MIL-SPEC 1」と呼ばれたフィフティ ファゾムスに搭載。アメリカ海軍・海兵隊の厳しいテストをクリアし、ダイバーたちの手首に装着された。やがて「MIL-SPEC 2」へと進化すると、「トルネク-レイヴィル TR-900」と呼ばれるようになったのだ。
 そして2017年、これら「フィフティ ファゾムス MILSPEC」へオマージュを捧げるモデルが発表された。6時位置に搭載された水密性表示ディスクはそのままに、現代の革新的な技術を持ち合わせて見事に蘇った傑作である。

フィフティ ファゾムス オートマティック
インデックスにはスーパールミノバが塗布され視認性を確保。逆回転防止ベゼルを覆うサファイアは耐傷性に優れる。オリジナルに近いやや小ぶりなケース径も魅力だ。写真はセイルキャンバスストラップだが、NATOストラップ、SS製のブレスレットモデルも。30気圧防水。自動巻き、SSケース、40.3mm。世界限定500本。¥1,390,000 Blancpain

THE RAKE JAPAN EDITION issue 17
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