MANNERS MAKETH MAN COLIN FIRTH

最強のジェントルマン、コリン・ファース

September 2019

世界的に大ヒットした映画『キングスマン』の続編、『キングスマン:ゴールデン・サークル』の公開で、前作の死からまさかの復活を遂げるコリン・ファース。
思えば当然のことだ。「英国らしさ」こそが、作品の精神的支柱なのだから。
text shiho atsumi

Colin Firth / コリン・ファース1960年イギリス出身。舞台で活躍の後、’84年に『アナザーカントリー』で映画初出演、『高慢と偏見』、『ブリジット・ジョーンズの日記』シリーズで世界的なスターに。’09年の『シングルマン』でヴェネツィア国際映画祭男優賞、’10年には『英国王のスピーチ』でアカデミー主演男優賞を受賞。

 ロンドン、サヴィル・ロウの高級テーラーを隠れ蓑にした、どこの国にも属さない世界最強のスパイ機関「キングスマン」。その活躍を描いた『キングスマン』は3年前に世界的なヒットを記録したイギリス映画だ。「イギリス」「スパイ」とくれば、当然思い浮かぶのはジェームズ・ボンドだが、映画はそのボンドの世界観――あらゆる部分に貫かれた英国スタイルや、ユニークなガジェット――を踏襲した楽しみに満ちている。主演のコリン・ファースは語る。

「60年代に育つと、この手の物事を楽しむようになるんだ。スパイ映画のスタイルとキャラクター、そのルーツは60年代にある。それは私が愛してやまないものだ。ハリー・パーマーの映画『国際諜報局』、ジョン・スティードのテレビシリーズ『おしゃれ㊙️探偵』、初期の“007”。スーツに身を包み、如才なくクールで優秀で、さらにめちゃくちゃ冷静。彼を超えてゆくなら死を覚悟しなきゃいけない。これらは私が子供の頃、映画と恋に落ちた頃に愛していたものだよ。この手の映画に出ることを私は夢見ていたんだ」

最も「英国紳士」なアクター ジェーン・オースティン原作のTVドラマ『高慢と偏見』や映画『ブリジット・ジョーンズの日記』シリーズでいかにもイギリスらしい口下手なインテリを演じ、『シングルマン』『英国王のスピーチ』で折り目正しいスーツの着こなしを見せたコリン・ファースは、今の映画界で「英国紳士」のイメージを最も体現する俳優だ。

 彼が『キングスマン』の主役ハリー・ハートを演じることになったのは54歳。だがアクションの面においてさほど心配しなかったのは、もうひとりの主人公エグジーを演じる新星タロン・エガートンの存在があったからだ。ハリーが町のチンピラであるエグジーをスパイとして仕込んでゆくスパイ版『マイ・フェア・レディ』で、コリンの役割は師匠=ヒギンズ教授。アクションの多くは若手の弟子が担当するのだろうと。だが予想は大きく覆された――というより、度肝を抜かれたというほうが正しいだろう。コリン・ファースは言う。

本記事は2017年11月24日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 19

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