Lionrugs President: ESMAEILI SAMIR —Interview—
最高級ペルシャ絨毯との出合い方
March 2022
日本最大級の商品量を誇る「ライオンラグス」社長エスマイリ・サミル氏に、ペルシャ絨毯選びの極意を伺った。
Esmaeili Samir / エスマイリ・サミル1982年、イランの老舗絨毯商の家に生まれ、幼い頃からペルシャ絨毯の山を遊び場にして育つ。3歳の頃に来日。兄ホセイン氏とともに家業を継ぐため、絨毯問屋や卸業にて学ぶ。その後、小売店「ライオンラグス」を立ち上げ、現在は浅草と青山に店舗を構える。4月下旬には、関西エリア初となる大阪店を出店予定。
「最近はペルシャ絨毯をアートとして捉え、複数枚所有する人が増えています。目の肥えた方が多く、こだわりも強い」
こう語るのは、イランの老舗ペルシャ絨毯商の4代目、エスマイリ・サミル氏だ。彼が経営するペルシャ絨毯専門店「ライオンラグス」の顧客は、30代後半から40代が中心層。経営者など、一定の成功を収めた男性だという。
「時計、クルマ、ファッションなどの趣味を嗜みつつ、家の中のものを追求したくなった男性が多い。一流のブランド家具をも手にした彼らは、最終到達点= “あがり”の趣味として、芸術品ともいえるペルシャ絨毯に辿り着くのです」
かつて、ペルシャ絨毯はその高い芸術性ゆえ、王室や一部の富豪のみ手にすることが許された。一般の人が購入できるようになったのは、数千年の長い歴史の中の、せいぜいここ100年の話である。
「絨毯を1枚手にすると、すぐにその魅力に取り憑かれます。何枚も手に入れるようになると、ちょっとした空間に敷いてみたり、壁に掛けてみたり、あるいはファッションのように季節や気分に合わせて替える楽しみを覚えます。そして単純に高価なものではなく、より希少価値の高い絨毯を求めるようになります。ペルシャ絨毯は成功者のみに許される高尚な趣味であり、ステイタスアイテムといえます」
今、人気を二分しているカテゴリは、新しいデザインや色合いでモダンな印象の「シルク」、そしてクラシックで正統派デザインの「アンティーク」だという。
「『シルク』は非常に洗練された雰囲気で人気。肌触りのよさも抜群です。ただ、徐々に手織り絨毯の味わい深さがわかってくると、やはりだんだんと古きよきもの、よりクラシックなものへと辿り着く。そのあたりは、ヴィンテージの時計やクラシックカーの世界と似ていますね」
では、初心者が購入する際に気にするべきことは何か、聞いてみた。「デザインで選ぶのがいいです。見た瞬間のフィーリングが一番大事。まず品質のよいものを1枚購入してみてください。使っていくうちに柔らかくなるのを感じるでしょう。そしてどんどん味わい深くなり、いい色に育っていくのです」
品質面において、素人目に見てもわかる見分け方の秘訣を聞いてみた。
「絨毯の裏を見てみてください。裏は絶対に噓をつきません。よい絨毯は、裏も表のように美しい。結び目のひとつひとつが細かく、丁寧に結ばれているか確認してください。よいものは密度が高いので削ることで長く使うことができます」
敷く場所やインテリアとの組み合わせはどのように考慮したらよいのだろうか。
「実用性を考えた素材の提案はできます。例えば、ダイニングだったら丈夫なウールがいいですし、リビングで芸術性を楽しむならシルクがいい。でもあとはデザインで決めて構いません。アートとして単体で完成されているので、基本的に合わない場所はありません。クローゼットでもキッチンでもトイレでも、アートは好きな場所に置くのがよいのです」
ANTIQUE【アンティーク】手織りの絨毯は非常に緻密なため、とても丈夫。数百年という単位で使用できるように作られている。質の高いものは使い込むほどに風合いが増していき、色は深みを帯びてくる。一般的に50年以上経ったものは「オールド」、100年以上経ったものは「アンティーク」と呼ばれ、より古いもの、そしてよりよい状態を保っているほど、その価値は飛躍的に高まる。近年では世界のオークションハウスにおいて数十億円という高値で落札されるものもあるほど。「アンティーク」を手にすることは、5000年の歴史を持つ文化継承の一端を担うことを意味するのだ。写真の絨毯はイスファハン産のもので、素材はウール&シルク。レザーソファ、ガラスのテーブル、アルコランプといった洗練されたモダンインテリアにも見事に調和している。サイズは約315×205cm。価格は要お問い合わせ。 Lionrugs(ライオンラグス青山店 TEL.03-6712-6088)