March 2022

Lionrugs President: ESMAEILI SAMIR —Interview—

最高級ペルシャ絨毯との出合い方

photography tatsuya ozawa

エスマイリ家はイランで130年以上続く絨毯商。3代目ナセル氏が1981年に日本でのペルシャ絨毯普及のため来日。日本で唯一、イランカーペット協会の鑑定士資格を持つエキスパートだ。写真左がライオンラグス代表取締役社長のサミル氏。中央が父ナセル氏。右が卸業とメンテナンスを展開する兄ホセイン氏。

 では2枚目、3枚目と購入していく場合はどのようなものを選ぶべきなのか。

「ペルシャ絨毯は産地によってデザインや素材などが異なるため、気に入った産地を見つけると同じ産地のものを買い集めたくなるかもしれません。でもそれではあまり面白くありません。さまざまな産地の、よいものを集めるほうがいい。それが一番お洒落な敷き方への近道になります」

 どこかファッションの楽しみ方に通じるものを感じさせる。インテリアとの組み合わせにも同じことがいえるという。

「家具のテイストとあえて違うものを組み合わせたり、大胆な配色を選んだりしたほうがユニークです。モダンなインテリアに、『アンティーク』というのがかっこいいんですよ。それに、異なる国のテイストとのミックスも面白い。ペルシャ絨毯は中国のアンティーク家具や和室の畳にも、不思議と合うんです。冒険したほうが楽しいですし、お洒落に見えますよ」

 そもそも、ペルシャ絨毯の価格はどのように決められているのだろうか。

「まず結びの『細かさ』。続いて『色』、『デザイン』の順で決まります。ウールの場合は『古さ』も加わる。より古くて状態のよいものに高値がつきます。そういう意味で、メンテナンスは大事です」

 具体的には、どのようなメンテナンスが必要になるのだろうか。

「洗い、削り、補修です。約7年に1度必要になります。ただし腕のいいプロの手に限ります。よい絨毯はよいメンテナンスによって、完璧な状態を保てます。例え犬にかじられたとしても、元の姿に戻すことができる。手織りならではの良さですね。私たちは日本国内にメンテナンス専門の自社工場を持っています。イランから各工程の職人を来日させていますので、本場と同等のサービスが可能。弊社で購入したものでない絨毯も承ります」

 近年、古きよきものに桁違いの価値が生まれるのは、あらゆる業界で聞く話でもある。ペルシャ絨毯の価値は今後どうなっていくのだろうか。

「イランでは職人の数がどんどん減っていっていますし、人件費も高くなっています。一方で、数十年前の絨毯や100年以上昔に作られた『アンティーク』が非常に人気ですから、今後、物としての価値は間違いなく上がっていくでしょう。買ったものが買ったとき以上の価格になることも、長い目で見れば十分にありえます」

 そのためには質の高いものを持っておくこと、自分でその価値を理解しておくことが大切だとサミル氏は語る。最後に、ペルシャ絨毯の真の魅力を尋ねた。

「現代において、これほど気が遠くなるほどの時間をかけて人の手で作られ、代々受け継いでいけるものは他にありません。手織りには、心地よい手触りと温もりがある。それに家の雰囲気を変える圧倒的なパワーがあります。人が集まる場所をつくってくれますし、絨毯が家族の歴史を見守ってくれます。これらはすべて、お金を出しても買えない価値なのです」

SILK【シルク】オールシルク素材には、伝統的なものには見られなかったようなデザインと、パステルカラーなど独特な色彩感覚、あるいは逆に色彩を抑えたシックなデザインなど、斬新な絨毯が次々と登場している。モダンなものも多く、日本の富裕層の好む都会的なインテリアにももちろんマッチ。非常に洗練された雰囲気で人気がある。高品質なシルクの肌触りは繊細で滑らか。まさに美術館に展示されている芸術作品のように優美なペルシャ絨毯である。写真の絨毯はクム産のもので、100%シルク。ブラックとゴールドの大胆な色彩は、部屋の雰囲気を変えるというより、“生み出す”存在だ。サイズは約198×198cm。¥13,200,000 Lionrugs(ライオンラグス青山店 TEL.03-6712-6088)

本記事は2022年3月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 45

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Contents

<本連載の過去記事は以下より>

ペルシャ絨毯五大産地と、その特徴

確かな1枚と出合える専門店:ライオンラグス青山店

美しき“ペルシャ絨毯”の小宇宙