April 2023

LE BARCHE ― LA VERA CAMICIA COSTIERA

ナポリでの出逢いから生まれた“カミーチャ コスティエーラ” LE BARCHEが纏う、南イタリアのプロフーモ

ブランド名はイタリア語で“船”を意味する。美しいアマルフィ海岸にインスパイアされたそのシャツは、南イタリアのプロフーモ(香り)を美しく纏っている。
text yuko fujita
photography jun udagawa
styling akihiro shikata

レ バルケを象徴する“コスティエーラカラー”の、ふんわり柔らかで美しいこと。太陽の日差しに映えるリネン素材は実に涼し気で、胸には愛らしいバルカパッチポケットが付き、ポケット口はハンドで仕上げられている。ナポリで修業したふたりの美意識と技術的ノウハウが、見事にちりばめられた一枚だ。「アマルフィ」¥36,300 Le Barche(レ バルケ Tel.045-306-9340)

 ふたりにとって、イタリアを代表するビール「ペローニ」も、地元で消費されるファランギーナ種の白ワインも、4ユーロの大きなピッツァマルゲリータも、家庭用マッキネッタで淹れるエスプレッソも、さらには青果店に並ぶダッテリーノ種やサンマルツァーノ種のトマトまで、愛するナポリのいい思い出だ。

 サルトリア ソリートで修業していた河合正之氏とアントニオ・パスカリエッロ氏のもとで修業していた佐々木聖男氏は、2019年、ナポリの5つ星ホテルが並ぶサンタルチア地区ボルゴ マリナーリの庶民派トラットリア「オ タバッカーロ」で出逢った。ふたりはすぐに意気投合。毎週末に会う仲となった。

 お決まりの場所は、ナポリの中心地から海沿いに坂道を上がっていったポジリポの高台のさらに先、高級リストランテが数軒並ぶ“マーレキアーロ”だ。階段を下っていくと、岩石海岸の静かな海が広がっていて、日曜日はそこで一緒に何時間も過ごした。ヴェズーヴィオはもちろん、ソレント半島やカプリ島も望め、ほんの数百メートル先の沖合いには何十隻ものクルーザーが停泊し、海上でのんびりと優雅な休日を過ごしている。それらを眺めながらスーパーで買った瓶のペローニを飲むのが、ふたりの日曜の幸せだったという。

左:ナポリ市内ペトラルカ通りから。奥はカプリ島。右:レ バルケのファッション・ディレクター、河合正之氏。ナポリではソリートで修業。非常に素晴らしいメイド トゥ メジャーのスーツを手がける名古屋の「ギフト」(https://fashion-gift.jp)の代表兼フィッターでもある。着用しているのは、レ バルケの「アマルフィ」。

左:レ バルケのデザイナーは、横浜のサルトリア トラモントの佐々木聖男氏。ポッツオーリからプローチダ島に向かう船上で、手にはペローニ!右:サン・カルロ劇場にて。

 春から夏にかけては、カプリやイスキア、プローチダなどの島に加え、ソレント半島やアマルフィ海岸の町も一緒に回った。そこにはいつも、美しい海と空、鮮やかなブーゲンビリア、潮風の香り、生命力みなぎる太陽の光、人々の笑顔があった。とびっきりエレガントな紳士もたくさん見かけたし、沖合いでは同じくたくさんのクルーザーが南イタリアの海を楽しんでいた。日焼けした肌にパリッとアイロンのかかったリネンシャツをゆったり羽織り、ショーツにポジターノサンダルを合わせた紳士に、南イタリアの豊かなライフスタイルを強く、強く、感じた。

左:ふたりが最も愛するトラットリア「オ タバッカーロ」のスパゲッティ アッラ コンテ(9ユーロ)。右:ふたりが愛してやまないマーレキアーロ。沖合いに見えるのはソレント半島。

左:サンタルチアの港より。通りにはグランド ホテル ヴェズーヴィオ(左)、グランド ホテル サンタルチア(右)など、5つ星ホテルが並ぶ。中:日焼けしてナポリ感たっぷりな河合氏。右:象徴的な襟“コスティエーラカラー”の源となった、アマルフィ海岸の船上にて。

 このナポリで経験した感動を形にしたい。ふたりはいつしかそう感じるようになった。自分のサルトリアとは別に、何か一緒にできないか。そこから構想を練り始め、3年の時を経てようやく今春デビューするのが「レ バルケ」だ。

 アマルフィからポジターノ、プライアーノへと続く世界一美しい海岸線 “コスティエーラ アマルフィターナ(アマルフィ海岸)”からインスピレーションを得た“コスティエーラカラー”と呼ばれる象徴的な襟。その大きさやバランスはもちろん、胸元の開きの角度やボタン位置にもこだわり、イタリアのヨットの美しい曲線をイメージしたバルカパッチポケットをあしらった。後付けの袖も、3カ所の手縫い工程も、サイズスペックも、型紙も、自分たちが学んできたことや培ってきたことをすべて注ぎ込んで、形にしていった。

 何より面白いのは、これらすべてをメイド・イン・ジャパンで表現しながら、シャツに南イタリアの強烈なプロフーモ(香り)が宿っている点である。

デザインは1種類で、生地ごとにモデル名がついている。白のシャツは「カプリ」でネイビーとの2色展開。ストライプシャツは「アマルフィ」。ブラウンとグリーンは「ソレント」で、いずれもリネン100%。各¥36,300、右下の「ジャパンブルー」は青梅の壺草苑による天然藍灰汁発酵建ての天然藍染で、こちらはリネン63%、コットン37%。¥57,200 all by Le Barche(レ バルケ Tel.045-306-9340)

本記事は2023年3月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 51

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