March 2022

JERSEY ORDER SUIT

BEAMS 中村達也氏に学ぶ
ジャージー生地で本格オーダー

photography susumu tsunoda

スポーティな素材の“気分”を表したカジュアル・コーディネイトの一例。モックネックのニット¥29,700 Blu Bre、シューズ¥28,000 Polpetta both by Beams Roppongi Hills(ビームス 六本木ヒルズ Tel.03-5775-1623)

―お店での人気はいかがですか?

「ちょうど1カ月前にサンプルが完成し、アナウンスをしたら、何人ものお客様から“作りたい”というオーダーをいただきました。カスタムテーラー ビームスの新商品としては、異例の大成功を収めています。顧客のほとんどは、本来、本格テーラードがお好きだった方々です。実は私も含めて、あのドローコードのジャージースーツはどこかしっくりこなかった。しかし今回の素材は違います。仕立て映えがし、きちんと見える。来年の秋冬は、既製品でも、数多くラインナップしようかと考えているところです」

―仕立てるときの注意点やおすすめのデザインはありますか?

「仕立てるときの注意点は特にありません。しかし、あまり大きめに作らず、ジャストサイズでお仕立てされることをおすすめします。最最近はビームスのスタッフでも、ゆったりめを好む者が多いのですが、ジャージーの場合、キレイにフィットさせたほうがいい。なにしろラクですから(笑)。それからデザインは、見た目ではわからないものの、やはりスポーティな素材ですから、両サイドはパッチポケットにしたほうがいいでしょう。ストライプは別として、無地やスポーティな柄物の場合は、そのほうが“気分”だと思います」

―コーディネイトは、どうすればいいですか?

「今回はジャージーという素材を意識し、スポーティな気分を生かすために、シャツをシャンブレーにし、タイもウールタイを合わせました。しかし、従来のスーツとまったく同じ見え方で、クラシックなタイやシャツなども合わせることができます。反対にニットなどを合わせてリラックスした表情で着こなすこともできます。汎用性はとても高いといえますね」

ジャージーと聞いて最も気にるのが、その耐久性だが、中村氏は自身が所有していた経験をもとに、その心配はほぼないと言う。現在は研究が進んでおり、伸びたりダレてしまうことは、少ないと考えられるそうだ。

―耐久性はどうなのでしょう? ジャージーというと、すぐに伸びてしまうのでは……

「耐久性はかなりあると思います。実はジャージーの生地が流行ったのは、今回が初めてではないのです。かつてイタリアのカンタレリというブランドが“プラネット・ジャージー”というジャケットを出していたことがあります。上着のみでしたが、コンセプトは同じ、服地に見えるジャージーというものでした。私はそれを12年前に購入し、現在に至るまで何年も着ているのですが、肘などが伸びることはまったくありませんでした。サイズやフィットもほぼ変わっていません。現在のものは、更に耐久性が増していると思います」

「先ほど、いろいろな生地メーカーが出していると言いましたが、実はそのほとんどは外注で、実際に作っているのは同一の工場だったりします。こういったことは生地業界では当たり前で、英国あたりには企画だけを専門とする“テーブルメーカー”といわれる会社もあるほどです。ジャージーもそれを得意とする専 の工場があるはずで、それだけに研究は進んでおり、耐久性において心配はいらないでしょう」

―これから、こういった生地は一般化していくのでしょうか?

「一般化していくでしょう。コンフォータブルに着られ、なおかつきちんと見える生地の需要大きいと思います。コロナ禍によって、今まで制服としてスーツを着ていた人たちが、スーツを着なくなりました。彼らはもう戻ってこないかもしれません。しかし、テーラードが好きな人々はまだたくさんいて、スーツの世界はより趣味性が高くなってきています。ジャージーのスーツ地は、ラクであるにもかかわらず、そういった本来のクラシック好きをも満足させるものです」

―テーラードの未来はどうなっていくのでしょう?

「クラシックなテーラードは決してなくならないと思います。実はビームスにおける先月のスーツの売り上げは、コロナ前より高かったのです。しかも驚いたことに、最近では20代の若者がスーツやジャケットを好んで買っていくのです。例えばハリスツイードのジャケットやタッターソールのシャツなど、われわれの世代から見ると、すごくクラシックなアイテムに、人気が集まっています。(ひとりの若手スタッフを指差して)そういえば彼も今日はハリスツイードを着ていますね(笑)。今秋一番売れているジャケットは、伝統的なガンクラブ・チェックでした。そういうのが今の若者にとっては新鮮なのです。ここ数年、台湾や東アジアの国々などでは若者たちの間でテーラードが人気でしたが、日本もひとまわりして、またそういう時代が来るのかもしれません」

本記事は2021年11月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 43

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