JERSEY BOYS

ロロ・ピアーナの
“サンセット”を着る

June 2022

text tom chamberlin
photography kim lang

 ついに手元にロロ・ピアーナのボックスが届くと、私の胸は躍った。中には一反の“サンセット”ジャージーが入っている。ブラウンとグレイのハウンズトゥースのジャカードで、カシミア92パーセントである。手触りにはロロ・ピアーナらしさの中に強さがある。ジャージーに分類されるにはストレッチ性が必須だが、この生地は合成繊維ではない。カシミアのしなやかな肌触りとは裏腹に、しっかりとしたコシが感じられるのだ。

 魅力的な着心地はそのままに、私のスタイルと美意識に合ったジャケットに仕立てたかった。そこで、サックヴィル・ストリートにあるテリー・ヘイストのところへ生地を持ち込んで、すべての条件を満たすデザインをスケッチしてもらった。「ロロ・ピアーナの生地は仕立て映えするので、いつも好んで使っています」とテリーは言う。

「ロロ・ピアーナのワイルドなチェックのカシミアでオーダーして以来、毎月1着ずつオーダーされるお客様がいらっしゃいます。きっと最初の仕上がりを気に入っていただけたのでしょう。お客様の印象は生地で大きく左右されるものなのです」

1回目のジャケット仮縫いの様子。チャコと留め針を駆使して、問題の箇所を修正していく。今回の場合、ラペルの幅をやや広く調整し、左肩に少しだけゆとりをもたせた。

 デザイン的な特徴として、まずジャケットにベントがないことが挙げられる。これは、背中をより構築的にするためだ。まるでミリタリーチュニックのようにタイトで、いい感じのシルエットになった。ウェリントン兵舎の近衛兵団に入れてもらえるかどうかはわからないが。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 45
1 2 3

Contents