July 2016

GOODWOOD FESTIVAL OF SPEED

マーチ卿による、年に一度のモータースポーツ祭典

issue06

『ハケット ロンドン』が協賛するウイリアムズのブースでのハケット氏。この他、ファラーリ、マクラーレン、メルセデスAMG等がブースに新旧マシーンを展示。まさにクラシックカーからF1までの祭典。一日18万人の観客も納得。

 もちろん、企画には自信を持っていた。古今東西の名車やF1をはじめとする歴史的なレーシングカーが一堂に会して、車を愛するファンに直に接してもらう。憧れの車に対面して、本当に触ってもらうのだ。いや、それだけではない。新旧の超一流ドライバーを集結させて、彼らに実際それらの名車を走らせてもらう。単なるコレクターの愛好品となったクラシックカーに命を吹き込むイベントを開きたい。それがマーチ卿の夢だった。

 しかし、初回のFoSに対するスポンサー集めは容易ではなかった。もちろん必死で告知はしたが、それでも実績のないイベントに対する理解はなかなか深まらなかった。「1万人集まれば大成功だと思っていたのです」。今から22年前、マーチ卿はまさに神に観客の来場を祈っていた。

競うのはスピードとエレガンス 結果的に1万人が成功の基準となった第1回FoSに2万5000人の大観衆が押し寄せた。マーチ卿は英国人の車に対する愛情の深さに「改めて脱帽した」と言う。グッドウッドハウスの前庭を埋めた大観衆は、それまでは高嶺の花でしかなかったさまざまな美しいクラシックカーを間近で見て感激のため息をつき、嬉々として写真を撮りまくり、さらにはその美しい車のオーナーたちと談笑した。そして、デイモン・ヒルが1975年の飛行機事故で非業の死を遂げた実父グラハム・ヒル所有のMk2ジャガーのステアリングを握り、タイムトライアルとなって復活したクライム・ヒル競走に参加した姿に熱狂した。

 以来、FoSは倍々ゲームで成長した。開催期間も初年度の1日開催から翌年の2回目からは2日開催となり、1996年からは3日開催。そして2012年からは現行の6月最終週木曜日を初日とする4日開催になった。現在では一日最大18万人の大観衆が押し寄せ、4日間のトータルで6000万ポンド(約120億円)もの売り上げを誇る世界的な大イベントである。

「もちろんここまでのイベントに成長するとは思っていませんでした」

 創設当時、今日のFoSの成功を予想できたかと尋ねると、マーチ卿は破顔一笑してそう即答した。そして第1回FoS当時の思いを明かしてくれた。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 06
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