July 2016

GOODWOOD FESTIVAL OF SPEED

マーチ卿による、年に一度のモータースポーツ祭典

issue06

「モータースポーツのガーデンパーティ」と称されるクラシックカーのコンテスト。優雅な催しに相応しく、カルティエが主催。車に詳しい著名人の投票で優勝を決める。

「イベントの成功も大切ですが、車を愛する人間としてまず、同じく車を愛する人たちを満足させたい、喜ばせたいと思いました。美しいクラシックカーをただ眺めるだけではなく、実際に疾走させてその本当の能力を見てほしいと思いました。それがこのFoSの発想の源なのです。自分自身、そういうイベントが観たいと思った。自分が子供時代に憧れた車を目一杯走らせてみたかった。しかもその車を私自身がアイドル視していた名ドライバーたちに走らせたらと、そこまで考えを巡らせてぞくぞくしましたよ。実現できたらユニークだと思いました。絶対成功するはずだとも思いました。でもまさかここまでのイベントになるとは、それは本当に思いも寄らないことでした」

 マーチ卿は、英国内でも『名門100コース』のひとつに数えられるグッドウッド・ゴルフコースから協議会とドレスコードを廃止した。

「決まりきってしゃちほこばったゴルフコースなんてつまらない。ジーンズとサンダルでプレーしてもかまわない」と語る次期公爵だが、英国ではシャツとソックスの組み合わせを間違えてメンバーを除外されるゴルフクラブもある。こうした反逆児的なところが、公爵家の嫡男でありながら若年でプロフォトグラファーとしても成功したマーチ卿の真骨頂だ。

「17歳でスタンリー・キューブリックと出会い、彼が監督した『バリー・リンドン』のスティール写真を撮りました。その時彼に『クリエイターなら自分の抱いたイメージに妥協するな』と教わりました。確かに他人のルールにはそれほど従順ではありませんが、それ以来、私は自分のイメージには非常に忠実なのです」

 古い規則に縛られず、自分のイメージに忠実にクリエイトする。そんなキューブリック直伝の思考回路が、公爵家の壮大な領地を舞台にしてスパークした。そしてマーチ卿は、時をも超えるモーターショーを創造したのである。

issue06

歴代のレーシングマシーンの展示。ファンは間近で憧れのレーシングカーに触れることができる。メカニックたちがファンのさまざまな質問に答えている。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 06
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