July 2019

GOOD to be HOME

アメリカンドリーマーが築き上げた驚愕の邸宅

左:トミー氏のオフィス。1840年頃のイングランド製デスクの下にはルイ・ヴィトンのアンティークトランクが。右:フランス製のテーブルと18世紀のインド製の鏡を配置したパウダールーム。

専門クリエイターたちとこだわり抜いた共同作業インテリアデザインへの取り組み方についてお聞かせください。
トミー氏:「デザイナーである私たちは共同制作が大好きですから、グリニッチを拠点とするインテリアデザイン会社と協力して取り組みました。特にキッチンとブレックファストルーム、子供たちの寝室には力を貸していただきました。また、インテリアデザイナーのマーティン・ローレンス・ブラードにも声をかけました」
ディー氏:「庭園にも工夫が凝らされました。ランドスケープデザイナーのミランダ・ブルックスは、かつての庭園の姿を取り戻してくれました。園芸家のフィリップ・ワトソンも、私たちが瑞々しい花をいつも飾っていられるようにと、華やかな切り花用花壇を設けてくれました」 

修復に最も苦労された点は?
ディー氏:「屋根は一筋縄ではいきませんでした。建設当時のままでしたから、粘土瓦を使うには型板を制作して手作りしなければならず、それだけで2年近くかかりました。さらに細部装飾や細工は、現在では注文すら難しいものでした。私たちは単にリフォームするのではなく、修復することを重視していました。現代の設備を壁に埋め込み、配管や配線を新しくする工事は、大がかりで費用もかさみますが、それだけの価値はありました」

伝統と現代性という相反する目的に、どう折り合いを付けられたのですか?
トミー氏:「家族のことを第一に考えました。例えばリビングルームのソファには、アンティークタペストリーを使ったクッションをいくつか置いていますが、ソファ自体は新しくて非常に頑丈なもので、幼い孫娘が跳びはねても大丈夫です」

インテリアデザインは、ファッションと同じくらい夢中になれるものですか?
トミー氏:「視覚型の自分にとって延長線上にあるものだと思います。クリエイティブな方々との共同作業を心から楽しむことができました。ファッションデザイナーとしての知識がインテリアデザインに応用できることももちろんあります」

お気に入りの部屋や好きなものは?
ディー氏:「グランドホールにある、彫刻が施された木製の階段と、暖炉が大好きです。どちらもこの館に元々あったものですが、とても美しく表情豊かです」
トミー氏:「キッチンとブレックファストルームは、家族で長い時間を過ごす場所ですね。それと、メディアルームも」

大理石が際立つ浴室。漆喰の壁はほのかなアンティークホワイトに。

子供部屋では名高い玩具メーカー、シュタイフ社のキリンのぬいぐるみが護衛役を務めている。

ゲスト用の寝室はトミー ヒルフィガーに影響を与えたアイビーリーグから着想を得ている。

上階・階段前のホールでの、トミー&ディー・ヒルフィガー夫妻。紅茶染めのような色合いに仕上げたアンティーク風の漆喰壁には、18~19世紀の絵画が飾られている。17世紀初期のリフェクトリーテーブルには、雄鹿の角で作ったフランドル地方の枝角付き燭台と、清時代の花瓶が飾られている。

THE RAKE JAPAN EDITION ISSUE 21
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