November 2016

BIRTH OF A LEGEND:THE ROLEX ‘PAUL NEWMAN’ DAYTONA

伝説の誕生―ロレックスの“ポール・ニューマン”デイトナ

by wei koh
Issue07_P111_2

自分らしさの演出 ニューマンがスチール製の“ポール・ニューマン”(Ref.6239)を着用し始めたのは、1969年のレース映画、『レーサー』のPRツアー中というのが通説だ。レースの面白さに目覚めていた彼が、自動車を強く感じさせる時計を求めたとしても不思議ではない。

 そんな彼にとってデイトナはまさにおあつらえ向きだが、工夫の余地がないわけではなかった。ニューマンはデイトナに付属していたスチール製ブレスを一切使用せず、代わりに厚みのある黒いミリタリースタイルのストラップを使うことで、自分らしさを演出してみせたのだ。

 1972年の初レースの頃には、個性的な黒いストラップなどを備えたそのデイトナは、ニューマンにとって、片時も手放せない相棒になっていた。そして、彼の手首を飾るアイテムとして、象徴的な存在になっていった。その後40年間にわたり、ニューマンは数え切れないほどの場面で、この相棒とともに写真に収まった。

 最後までロレックスに特別な思い入れがあったニューマンは、晩年になると、ゼニス社のムーブメントを搭載した白いダイアルのデイトナと、ホワイトゴールド製のモデルを愛用した。

そして“レジェンド”へ ねじ込み式プッシャーを採用したRef.6263とRef.6265の製造が終了すると、“ポール・ニューマン・ダイアル”を擁するエキゾチック・ダイアルは使用されなくなった。しかし基本的なカラーテーマは、今日でもデイトナの現行モデルに影響を与えている。

 ロレックスとポール・ニューマンの間に、公式の協力関係が存在したことはなかったが、両者のアイデンティティーはデイトナを通じて結びついた。ロレックスがニューマンの回顧写真展の開催を、2度にわたって催していることも、それを物語っている。

 60年代後期のあるとき、青い瞳を輝かせ、カーレースへの情熱に満ちた未来のレジェンドが、艶やかなロレックス コスモグラフ デイトナをその偉大な手首にはめてみようと思い立った。ロレックスの本拠地であるスイスのマーケティングチームは、きっとその日に感謝していることだろう。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 07
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