AN AFFAIR TO FORGET
セックス、ドラッグ、死、そして“甘い生活”
July 2018
ウィルマ・モンテージ殺害事件のエピソードからインスピレーションを得て製作された、巨匠フェデリコ・フェリーニの代表作『甘い生活』(1960 年)。イタリア映画界きっての色男マルチェロ・マストロヤンニと、ゴージャスかつ抜群のスタイルで人気を博したアニタ・エクバーグが主演を務めた。
女性スキャンダルが報じられて間もないにもかかわらず、裁判所に黒のセダンを乗り付けるシルヴィオ・ベルルスコーニはふてぶてしかった。険しい表情の裏には、あくまで身の潔白を装うという意図があったのかもしれない。火遊びを繰り返して首相の座を何度も失ってきた彼は、内心こう考えていたのではないか。
「まだ若いこの国家の歴史においては、大きなスキャンダルといえども数十年もすれば忘れられるだろう」
そうだとすれば、彼は正しい。ルネサンスの研究者なら証言してくれるだろうが、この土地の支配階級の中にある、退廃的な贅沢を満喫する技は、ローマ帝国とともに滅びたわけではない。
1953年に起き、のちにマリオ・シェルバ首相を襲ったあるスキャンダルは、イタリア国民の耳目を集めた。事件にインスピレーションを受けて映画『甘い生活』を製作したフェデリコ・フェリーニ監督も、そうした国民のうちのひとりだった。