A SONG OF ICE AND FIRE
ダイアナ・リグ
相反する魅力を持つ女優
April 2018
救いようがないほど能天気 自らの思いとは裏腹に、彼女は昔から男性の注目を集めてきた。マイケル・パーキンソンはリグをこれまで会ったなかで最も望ましい女性と呼んだし、デーリー・テレグラフ紙によれば、モーターショーでファンが殺到し、トイレに隠れなければならなかったこともあるらしい。ドイツ警察が彼女のファンを警棒で食い止めたという逸話も残っている。それほど、彼女はいつもセクシーだった。
60年代は既婚の映画監督フィリップ・サヴィルと8年間同棲してタブロイド紙に書き立てられたが、リグは冗談半分に「尊敬されたいとは思っていない」と語った。彼女は2回結婚しており、最初の夫はイスラエルの画家であるメナヘム・グエフェン。再婚したスコットランドの大地主アーチボルト・スターリングとの間にもうけた娘のレイチェルも有名な女優だ。スターリングが女優のジョエリー・リチャードソンと浮気したため、ふたりは離婚したが、今でも友好的な関係を保っている。
リグは1994年にデイムの称号を得てからも、精力的に活動している。2008年のインタビューでは 、70歳にしてメルセデスを運転し、タバコを1日に20本も吸い、メルローのボトルを寝る前に1本空けると語っていた。「救いようがないほど能天気」だと自称する彼女は、自身の別荘のプールでは裸で泳ぎ、招かれたらどこにでもフライフィッシングに行くほど「釣りバカ」の道楽者だが、列に割り込む人やゴミを散らかす人、マナーの悪い輩には静かな怒りを爆発させるという。
彼女は最近出演した2作品でも、名声をほしいままにしている。リッキー・ジャーヴェイスが手掛けるテレビドラマ『エキストラ2:スターに近づけ! 』ではダニエル・ラドクリフと共演し、本人役で非常にドライな演技を披露した。そして、『ゲーム・オブ・スローンズ』で演じているレディ・オレナも忘れてはならない。彼女はこの役で6度目のエミー賞にノミネートされた。
いまや79歳になるデイム・ダイアナ・リグは現代的な作品と古典的な名作、ファンタジー作品とリアリティを追求した作品の双方で独特の存在感を発揮し、2008年まではスターリング大学の名誉学長を務め、さまざまなステレオタイプを打破してきた。『ゲーム・オブ・スローンズ』の原作である『氷と炎の歌』を地で行くような進化を遂げ、衰えを知らない豊かな知性から生まれる辛辣さをユーモアで包み、ホットでありながらクールな魅力を放つ。
「年を重ねるほど人生は面白くなる」と彼女は言う。『メディア』のセリフを言い換えれば、「人生は底なしのコップのようなもの。どれだけ注いでもきりがない」というところだろうか。