From Kentaro Matsuo

THE RAKE JAPAN 編集長、松尾健太郎が取材した、ベスト・ドレッサーたちの肖像。”お洒落な男”とは何か、を追求しています!

「一番を目指すデパート」に惹かれた
山浦勇樹さん

Monday, March 25th, 2019

山浦勇樹さん

 三越伊勢丹 メンズテーラードクロージング バイヤー

text kentaro matsuo  photography natsuko okada

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最近、デパートのリニューアルが相次いでいます。有楽町の阪急メンズ東京に続き、去る3月16日には、紳士百貨店の雄、新宿の伊勢丹メンズ館が大改装を行ないました。

コンセプトは、“パーソナライズ”、“ラグジュアリー”ということで、オーダーメイドの比率を増やし、各フロアにコミュニケーション・スペースやラウンジを設けました。リニューアル前と比べると、オーダーコンテンツは、約2倍に増えたそうです。

パニコ、チャルディ、ダルクォーレ、アンダーソン&シェパード、リヴェラーノなど、キラ星のごときブランドが一堂に会しています。そんな伊勢丹のなかでも“イケイケな”部門のバイヤーを務めるのが、今回ご登場の山浦勇樹さんです。

「どうせ買うなら、しっかりとしたいいモノを、と思われる方が増えています。お年を召した方ばかりではなく、若い方にもトップレンジのテーラードに興味を持って頂いております」

 

価格的には、50〜60万円以上にも達します。これだけの売り場を任されたとなると、バイイングにも力が入るのでは?

「スーツって面白いな、と思って頂けるような提案をしたいですね。例えば、ツイード・スーツばかりを並べたり、春夏なのにフォーマルの提案をしたり。伊勢丹メンズ館はいつも“一番最初”と“ここにしかない”にこだわっています」

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 バルマー&ラムのモヘヤ混生地を使ったスーツは、リッドテーラーのメイド・トゥ・メジャー。

「テーラーの根本修さんは“押し付けがましくない”人。それぞれのお客様のご要望に沿って、ソリューションを導き出すという考え方です。ベースは英国ですが、とてもリラックスして着られる服だと思います」

 

シャツは、ヴァナコーレ。ナポリのシャツ屋で、25ヶ所ものハンド仕上げをしているモデルもあるとか。

「これはロングポイントのボタンダウンという、ちょっと変わった襟型です。これにカラーピンを付けました」

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 タイは太幅のドレイクス。チーフはAD56ミラノ。

シューズは、オールデンですが、なぜかロンドンのセルフリッジで買いました。

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幼い頃から凝り性だったという山浦さん。学生の頃はヴィンテージ・ジーンズにハマり、バイクを乗り回していました。将来の夢は、消防士だったそうです。

「消防署には、クイック・アタッカーという部隊があるんです。災害時にいち早く現場に駆けつけるために、オフロード・バイクに乗っているんですよ。しかも真っ赤なヤツ。いやぁ、カッコよかったなぁ・・」

へぇ、そんな部隊があるとは知りませんでした。

 

徒然と話をしているうちに、山浦さんと私は、同じ中央大学出身だということがわかりました。

「就職のときは、いろいろな百貨店やメーカーを受けましたが、その中で伊勢丹が最もしっくり来たのです。先輩がいった『この会社は、いつも一番を狙うのが好きなのだ』の一言が刺さりました。ずっと水泳をやっていたので、体育会系的なノリも好きでした。どうしても伊勢丹メンズで働きたいと思いました」

 

三越伊勢丹では、売り場のことを“お買い場(おかいば)”というそうです。そして売り場とバックヤードの間にある扉は“鉄扉(てっぴ)”と呼びます。

「いまでも鉄扉をくぐって、お買い場に入る瞬間は緊張しますね。日本のメンズ・ファッションをリードしてきたメンズ館は、スゴイ場所なのだと信じていますから。出る時も、必ず振り向いて一礼します」

 

ちなみに中央大学の校風は“質実剛健”とされていますが、それを絵に描いたような方ですね。中大は八王子の山奥に位置し、実際の偏差値はともかく、ファッション偏差値は最低クラスなのですが、山浦さんのような方がいると、そのイメージも変わりそうです。

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リニューアルした伊勢丹メンズ館の売り場より。
ガラス張りになった専属テーラー、ラ・スカーラの山口信人氏の仕事場。
売り場とは隔てられたラウンジ・スペースで、ゆったりとオーダーメイドを楽しむことができる。

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