THE RAKE FILM FEST: CASABLANCA
今も色褪せないボガートの姿:映画『カサブランカ』
September 2022
『カサブランカ』(1942年)のワンシーンは、長い映画史において最もスタイリッシュなものだといわれている。その人気は衰えることを知らない。
by FREDDIE ANDERSON
第二次世界大戦中のモロッコの都市、カサブランカを舞台に、アメリカ人バー経営者リック(ハンフリー・ボガート)は、ある女性(イングリッド・バーグマン)への愛か、ナチスとの戦いを続ける彼女の夫(ポール・ヘンリード)の脱出を助けるか、という選択を迫られることになる。
アメリカの映画評論家で歴史家のレナード・モルティンは、この作品を「史上最高のハリウッド映画」だと絶賛している。公開から80年経った今でも、世界で最も愛されている映画のひとつであり、ファッショニスタたちに多大なインスピレーションを与え続けている。
ボガートが着るクリーム色のディナージャケットは、映画そのものと同じくらいアイコニックなものだ。低めのボタン位置で美しく仕上げられたダブルブレステッド・スタイルである。適度なボリューム感のあるショールカラーを特徴としている。ボタンは同系色のマザー・オブ・パール製、ノーベントでラペルには拝絹がついていない
イブニングウェアを纏っていないときは、トレンチコートに濡れたフェドラ帽、そしてくわえタバコがお決まりだった。トレンチコートの下にはライトトープ色のスーツを着ている。これも1940年代の典型的なスタイルだ。
ノッチラペルのシングルブレステッドで、パッド入りの肩がボガードをより男らしく見せている。ゆとりのあるフィットで、シングルプリーツのトラウザーズはわずかにフレアがかかっている。
コスチュームデザイナーのオリー=ケリーがデザインしたイングリッド・バーグマンの淡い色のテーラードスーツも1940年代の典型で、帽子、手袋、ブローチで美しく飾られている。