KEVIN SEAH “Ikat & Block Print Shirt”

シンガポールのカリスマの大ベストセラー

June 2023

text & photography yuko fujita

 

 

左:愛らしい模様が入ったインドの手織り生地“イカット”を用い、シンガポールで縫製されたショートスリーブシャツ。¥40,700 右:タガネで彫った木版に染料をつけ、広げた布に捺していく。1色捺すごとに乾かして洗い、乾かして捺すという気の遠くなる作業を繰り返したブロックプリントによるトラとライオン柄。¥42,900 both by Kevin Seah / Afterhours

 

 

 

 シンガポールのクラシックメンズウェアの世界で最初に頭角を現したテーラーが、ケヴィン・シアー氏だ。アジアのメンズクラシックシーンでは、これまでイタリアをはじめとするヨーロッパのブランドやこだわりが詰まった日本のブランドのみで商品展開されてきた。が、今はそれらに加えて、自国の生産背景・職人を使って、その国の文化を感じさせるオリジナリティあふれるアイテムをいかに創造し発信していくかという新たなフェーズに入っている。

 

 インド・ジャイプールの職人が手彫りした木版を手で丹念に布に捺(お)しつけて連続模様にしたブロックプリント(木版捺染)の生地に注目し、そのシャツコレクションをシンガポールで作り上げたシアー氏は、ブロックプリントシャツを氏の店の大ベストセラーへと成長させた。

 

 今日では、染色前に経糸か緯糸に絞り染めのようなレジスト染めを施し、愛らしい模様を入れた手織り生地“イカット”のシャツもラインナップ。どちらもインド綿らしいサラッとした大変軽やかな生地で、風通しのよさが抜群。日本の夏の気候にもぴったりである。そして何より、インパクトのある柄がかわいらしい。

 

 

Kevin Seah/ケヴィン・シアー

ケヴィン・シアー氏は1975年、シンガポール生まれ。オートクチュールの世界で15年の経験を積み、2009年に自身の名を冠したテーラー「ケヴィン・シアー ビスポーク」をオープン。シンガポールのクラシックシーンの礎を築いた、同地のカリスマ的存在である。