SIXTY YEARS OF THE BOND GIRL
ボンドガールの60年
October 2022
ボンドガールといえば遊んでいる女たち、という思い込みは捨てなければならない。
プッシー・ガロア、トレイシー伯爵夫人、ヴェスパー・リンドなどジェームズ・ボンドを虜にしてしまうような相手もいたのだ。魅力溢れる彼女たちを紹介しよう。
text CHRIS COTONOU
映画『007/ゴールドフィンガー』のプッシー・ガロア役オナー・ブラックマン(1964年)。
ボンドガールはそれぞれの時代のアイコンであった。その大半は、単なるボンドのアクセサリーではなく、肉付けされた自立したキャラクターだ。ボンドガールには、ジェームズ・ボンドに結婚を決意させた者もいれば(悲しいかな、ボンドが幸せに暮らすという結末にはならない)、ベッドルームで彼を裏切る者もいる。
初代ボンドガールは、『007/ドクター・ノオ』(1962年)のウルスラ・アンドレスで、ビキニ姿で海から登場したのが衝撃的だった。それから大きく変化を遂げ、『007/スペクター』(2015年)と『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2021年)でのレア・セドゥは、映画のストーリーに関わる中心的な人物となった。ここでは、過去60年間に登場したボンドガールの中から、私たちのお気に入りをいくつかご紹介しよう。
ヴェスパー・リンド
『007/カジノ・ロワイヤル』(2006年)はダニエル・クレイグが初めて007を演じた作品だが、エヴァ・グリーンが演じたヴェスパーがそのお株を奪ったともいえるだろう。
最初の出会いとなった列車で、ウィットに富んだ話をする彼女に、ボンドが惚れ込むことになる。強気で信じられないほど魅惑的な人物だ。しかし、悲しいことにリンドとの関係は長くは続かなかった。
プッシー・ガロア
『007/ゴールドフィンガー』(1964年)の中で彼女の名前を聞いたボンドは「夢でも見ているのだろう」と言う。彼女は、ゴールドフィンガーに出てくる他の者と同じく、その後のシリーズにとって典型となる女性だ。
ガロアは有能で、少々バカバカしいところがある(プッシー・ガロア・フライング・サーカスという自分の名を冠した女性飛行隊を持っており、柔道の達人という設定だ)が、オナー・ブラックマンが演じると、忘れられない存在となる。
パロマ
『007/ノー・タイム・トゥー・ダイ』において、アナ・デ・アルマス演じるパロマは、あまりの美しさ、純真さ、そして銃の腕前でボンドの影を薄くしてしまった。彼女は最初の出会いから007を翻弄する。
彼女はボンドを誘っているのか? ただ親しげにしているだけなのか? それとも、彼のアプローチを拒絶しているのか? それは誰にもわからない。しかし、パロマは全シリーズの中で最高の「短い」ボンドガールのひとりとなった。
ジンクス
『007/ダイ・アナザー・デイ』(2002年)でハル・ベリーが演じるジンクスは乱暴で、ピアース・ブロスナン演じる007が初めて出会ったときから心奪われるアクションヒロインだった。男の頭蓋骨に穴を開け、壮絶な剣戟で敵を倒したことは忘れられない。
ベリーはオスカー受賞歴を誇る抜群の演技力で、ボンド以上のキャラクターを演じているのだ。
メイデイ
『007/美しき獲物たち』(1985年)にて、ボンドガールの中でも断トツの知名度を誇るメイデイを演じるのは、グレース・ジョーンズである。ボンドの宿敵だったジョーズを思わせる強さだ。
ジョーンズはアズディン・アライアの衣装を完璧に着こなし、ムーア演じる007を簡単に持ち上げるパワーを見せて、その存在感をさらに高めている。
テレサ・’トレイシー’・ディ・ヴィンセンゾ
『女王陛下の007』(1969年)でダイアナ・リグが演じた悲劇的なテレサ・’トレイシー’・ディ・ヴィンセンゾの最後は、ボンド・シリーズで最も悲しい瞬間のひとつだと言えるだろう。
トレイシーにはボンドの心を摑む何かがあり、短い期間ではあったものの、ふたりのロマンスは他のシリーズとは異なり本物であったと感じられる。彼女はスイス・アルプスでの激しい追跡劇で、ボンドの命を救うこともあった。
ハニー・ライダー
『007/ドクター・ノオ』(1962年)のウルスラ・アンドレスは、今でもスクリーンに映し出された最もセクシーな女性のひとりであり、ビーチでのシーンのおかげで瞬く間にセックスシンボルとなった。彼女は貝を採るダイバーだったが、その機転の良さで重要な仲間になっていく。
ボンドガールのリストを作るにあたって、初代を取り上げないわけにはいかない。ライダーはすべての始まりであり、多くの人にとって比類のないボンドガールなのだ。