SIXTY YEARS BOND'S BEST DESTINATIONS

60年間にわたる、ボンドの最高の目的地

October 2022

ジェームズ・ボンド作品の中で最もスリリングなのは、諜報員がどこで任務を遂行するかということだ。

007は、世界のあらゆる場所に出没している。

 

 

by CHRIS COTONOU

 

 


スイスのフルカ峠。『007/ゴールドフィンガー』(1964年)より。

 

 

 

 雪のリゾート地からカリブ海の島々、エジプトのピラミッド、イタリアのゴーストタウンまで、ジェームズ・ボンドは私たちが慣れ親しんだ国とはかけ離れた世界を垣間見せてくれる。そしてそれぞれの場所を反映した女性や仲間といったキャラクターが登場する。ここではボンド映画のシリーズから、あなたが旅行先リストに追加したくなるような、素晴らしい舞台をいくつかご紹介する。

 

 

 

イスタンブール

 


『007/ロシアより愛をこめて』(1963年)。

 

 ボスポラス海峡を船で進むと、イスタンブールはビザンチン帝国とオスマン帝国の建築物で輝いているように見える。その路地や民家が007の仕事場となり、心躍る東洋の冒険の旅が展開される。

 

 ホスト役であるケリム・ベイは、私たちのお気に入りのボンドの仲間のひとりだ。ふたりがタクシム広場やアヤソフィアを歩き回るシーンを見ると、自分もイスタンブールに行きたいと思わずにはいられないだろう。

 

 

 

 

スコットランド・ハイランド地方

 


『007/スカイフォール』(2012年)。

 

 すべてはここで終わる。最終決戦のために、ボンドはスコットランドのハイランド地方にある実家の邸宅にクルマを走らせる。映像のカラーパレットは寂しく暗いが、山や谷の壮大な美しさは、ボンドにとって内省的なものとなっている。この映画で彼は初めて故郷に帰るのだ。

 

 

 

 

日本

 


『007は二度死ぬ』(1967年)。

 

 ボンドは、戦後の経済的発展と楽観主義を背景に繁栄を続ける日本へのミッションに乗り出す。東京は華やかで、007は伝統的な家屋で入浴し、きらびやかなオフィスビルで戦い、そして古風な海辺の村に潜入する。

 

 当時この映画によって、多くの人が変わりゆく日本を初めて目にした。彼らはさぞかし驚いたことだろう。

 

 

 

 

スイス・フルカ峠

 


『007/ゴールドフィンガー』(1964年)。

 

 日曜日のドライブはいかがだろうか? 特にあなたがアストンマーティンDB5を持っていれば、フルカ峠ほど素晴らしい場所はないだろう。突然のヘアピンカーブで高速チェイスを強いられたらなおさらだ。そんな時は自分のペースを守って、息を呑むような景色を眺めたり、頂上の氷河を歩いたりするのがおすすめだ。

 

 

 

 

ジャマイカ

 


『007/ドクター・ノオ』(1962年)。

 

 ジャマイカは、おそらくジェームズ・ボンドの心の故郷である。原作者イアン・フレミングが最も幸福を感じた場所であり、ボンドはシリーズを通して何度もジャマイカの秘密の入り江“ゴールデンアイ”に戻ってきている(フレミングは1942年にこの地に惚れ込み、人生の大半をこの地で過ごした)。

 

 最も有名なのは『007/ドクター・ノオ』で、ボンドがビーチで貝採りをする美しいハニー・ライダーと出会う場面だろう。ぜひゴールデンアイを訪れてフレミング・ヴィラに泊まってみてほしい。

 

 

 

 

タイ

 


『007/黄金銃を持つ男』(1974年)。

 

 ジェームズ・ボンドは悪役フランシスコ・サラマンカを追って、全シリーズ中最も美しい場所のひとつであるタイのビーチリゾート、プーケットに向かう。興味深いことに、原作小説では舞台はジャマイカとなっているが、映画では前作がカリブ海の島で撮影されたため、プロデューサーが目的地を変更したのだ。

 

 

 

 

英国ロンドン、デュークス・バー

 

 

 

 私たち自身が“ロンドナー(ロンドンっ子)”であるため明らかに贔屓目があるが、英国の首都ロンドンにはボンドのたまり場がたくさんある。中心的な存在なのが、作者のイアン・フレミングが好んだメイフェアのデュークス・バーで、本の中でも大きく取り上げられている。

 

 ここはボンドファンにとって巡礼の地となっている。その多くは、フレミング自身が考案し、『007/カジノ・ロワイヤル』(2006年)にも登場した“ヴェスパー・マティーニ”を試しにやってくるのだ。