SHIMA KANKO HOTEL 01
人々を魅了する“シマカン”へ
June 2020
伊勢志摩国立公園の豊かな自然に抱かれ、英虞湾を静かに見晴らす志摩観光ホテルは、1951年の創業以来、日本のラグジュアリーホテルの礎を築いてきた名門だ。海と山の恵みを知り尽くす総料理長、樋口宏江シェフが手がける美食は、多くの賓客を魅了してきた。村野藤吾が遺した優美な建築と、世代を超えて受け継がれるホスピタリティ。そのすべてが織りなすクラシックホテルの本質は、訪れる者を静かな品格で包み込む。
text yukina tokida

開業当時の「ザ クラブ」。現在はカフェ&ワインバー(写真下)や鉄板焼きレストラン、茶室などがあり、今もゲストを迎えている。
太陽の神様であり、沼田の大蛇(おろち)を撃退した須佐之男命(すさのおのみこと)の姉である天照大神(あまてらすおおみかみ)が祀られていることでも有名な伊勢神宮。そこから約1時間、電車に揺られると「志摩観光ホテル」がある賢島駅に到着する。
賢島駅からすぐの場所に位置する“シマカン”の愛称を持つ同ホテルがこの地に誕生したのは1951年4月3日のこと。迎賓館の改修や京都の都ホテル(現ウェスティン都ホテル京都)などを代表作に持つ建築家・村野藤吾氏がかつて手がけた三重県鈴鹿の将校クラブの柱や梁が移築され、当時客室数25、定員48名の日本初の国際的リゾートホテルとして誕生した。この棟は、改修・リニューアルを経て現在も、カフェ&ワインバー「リアン」や茶室「愚庵」を擁するパブリックエリア「ザ クラブ」としてゲストを迎えている。

その後、新たなホテル棟として「ザ クラシック」が1969年に誕生。この建築も、村野藤吾氏による設計であり、その外観には氏の美学が細部に宿っている。各階に設えられた薄い庇が重なる屋根や、平面の屋根のなかで際立つ最上階の小屋、そして縦に走る細い柱、はたまた内装においては階段の角が丸みを帯びていたり、知れば知るほど驚きと感動の連続。また同館内のダイニングおいては、食事を楽しみながら英虞湾を一望できるようにと工夫が凝らされており、そこからの眺望は息を呑む美しさだ。

「ザ クラシック」開業時の外観。丁寧な改修を重ね、現在もその姿は色褪せない。

「ラ・ルメール ザ クラシック」の内観。







