Interview: seven x seven Chief Creative Director, David Miskin & Kasumigaseki Capital CEO, Koshiro Komoto & Photographer, Leslie Kee
【インタビュー】seven x seven デイビッド・ミスキン氏 × 霞ヶ関キャピタルCEO 河本幸士郎氏 × レスリー・キー氏
June 2025
“ラグジュアリーを遊べ”をスローガンに掲げるホテルブランド「seven x seven(セブン バイ セブン)」。2024年春に福岡の糸島に初進出し、同年9月に沖縄の石垣島に2施設目をオープン。今年4月には写真家レスリー・キーの『SUPER MAGAZINE』20周年を記念したパーティやエキシビションを開催し、セレブリティやファッション&ラグジュアリー業界の関係者ら約200人が石垣に集まり話題を呼んだ。注目を集める「seven x seven」のビジョンや今回のコラボレーションについて、チーフ・クリエイティブ・ディレクターのデイビッド・ミスキン氏と、ホテル事業を手がけるfav hospitality group株式会社の親会社である霞ヶ関キャピタル株式会社President&CEOの河本幸士郎氏、そしてレスリー・キー氏に話を聞いた。
text kumi matsushita
seven x sevenのチーフ・クリエイティブ・ディレクターのデイビッド・ミスキン氏(左)と、霞ヶ関キャピタルPresident&CEOの河本幸士郎氏(中)、フォトグラファーのレスリー・キー氏(右)。
石垣空港から車で20分足らずで「seven x seven 石垣」に到着する。エントランス前に並ぶ高級レンタカーとシーサーに目を奪われつつ館内に足を踏み入れる。控えめだけれどもビートを感じさせる高音質なBGMと、ほのかな香りがふんわりと漂う。ガラス張りのロビーの後には真っ青なプールが広がり、琉球石灰岩を使った温かみのある壁とのコントラストがまぶしい。五感が一気に刺激され、ああ、リゾートに来たなとワクワクしてフロントに向かう足も早くなる。スタッフの笑顔に見守られながらセルフでスマートチェックインを完了させる。
seven x seven 石垣では、自然の恵みを生かした洗練されたデザインやセンスの良い音楽やフード、本格的サウナなど、上質なリゾートステイを提供する。プールは子どもも遊べる1階のそれと、大人限定のインフィニティープールのふたつを用意。シチュエーションやニーズに合わせたセルフホスピタリティという快適なラグジュアリー体験が味わえる。
「seven x seven」を手がけるのは、物流事業やホテルからヘルスケア領域まで広く不動産コンサルティング業を手がける霞ヶ関キャピタル。子会社fav hospitality groupが担うホテル事業において、多人数向けの宿泊施設ブランド「fav」やハイエンドライン「seven x seven」を展開している。石垣島の「seven x seven」は、世界の富裕層に向けた日本のラグジュアリーなホテル・旅館、レストランを発信するアワード「Luxury Japan Hotel Award 2025」で「The 10 Best Hotels in Japan」に選ばれている。
2024年9月に開業し、今年2月にグランドオープンを迎えたseven x seven 石垣。121ある全客室がオーシャンビューで、サウナやプライベートプール付きのスイートルームも用意。
seven x sevenのチーフ・クリエイティブ・ディレクターであるデイビッド・ミスキン氏は、このホテルブランドについて「ラグジュアリーに“セルフホスピタリティ”を掛け合わせた新しいコンセプトを軸にプロデュースしています」と語る。
「ブランドのタグラインは、“Where Luxury goes to play(ラグジュアリーを遊べ!)”です。『自由』であることこそが、今の時代における最高のラグジュアリーに欠かせない要素だと考えています。上質感のあるラグジュアリーな空間で、ホテル側の都合に縛られず、自らの意思に基づいて旅や時間の過ごし方をデザインすることをサポートし、自由でストレスのない滞在経験を楽しんでいただける場を目指しているのです。『便利』であることも重要な要素のひとつだと考えているので、スマートチェックインやデジタルコンシェルジュなどを導入したり、ゲストルームにキッチンと全自動洗濯乾燥機を備えたりもしています。高価なサービスを受けることだけが贅沢なのではありません。必要なものが必要な時に、そこにあり、自分のスタイルで自由に過ごせること。それが、今の時代に求められる本質的な価値なのだと思います。贅沢はさりげない気遣いやデザインなど細部にこそ宿ります。それを体感しに来ていただきたいと思っています」
グループで始めた新サービス「SEVEN MOTORS」によるレンタカーのラインナップも豪華。ポルシェやコルベット、BMW、レンジローバーのオープンカーから、メルセデスベンツ、アルファードなどのワンボックスやSUVまで、憧れのカーライフ体験と自由な移動手段を手に入れることができる。
この4月から5月にかけて、ホテルのグランドオープンを祝う意味も込めて、世界的フォトグラファーのレスリー・キー氏が手がける写真集『SUPER MAGAZINE』の20周年を記念した写真展も開催された。モードなファッションに身を包んだ多くのセレブリティを撮り続けてきたレスリーのエネルギーと愛の溢れる写真が「seven x seven」のエントランスやロビーを飾った。
写真展期間中には、レスリー・キー氏の写真がseven x seven 石垣のエントランスやロビーに展示された。リゾートホテルライフにアートやファッション、セレブリティなどのスパイスが加わることで、エモーショナルな空間や体験をより一層彩った。
20周年記念イベントを祝う、写真展初日に行われたパーティには、キー氏とミスキン氏が招いたゲスト約200人が集結。グラミー賞ノミネートアーティストであり、ビルボードのR&Bチャート14週連続1位を記録したトップR&Bシンガーのデボラ・コックスをはじめ、シンガポールのシンガーソングライターとして有名なネイサン・ハルトノ、俳優としても活躍する元AKB48の篠田麻里子、さらには総合格闘家の三浦孝太も来場した。
センスの良い音楽や居心地の良さと刺激とが融合した空間デザイン、自然の恵みを生かしたフードやドリンク、リゾート気分を盛り上げるプールやサウナ、そして「seven x seven」が生み出すコミュニティによる上質な会話や熱気を楽しんでいた。
パーティには、国内外からデイビッドやレスリーにゆかりのセレブリティや友人知人が集まり、プールサイドやレストランなどで歓談。夜が更けると地下1階のバー「Red(レッド)」でゲストライブや200種類のシーシャなどを楽しんでいた。石垣随一のナイトタイムスポットとしてのseven x sevenの実力もいかんなく発揮していた。
この写真展はミスキン氏とキー氏のセレンディピティから生まれたものだった。それは、パーティのちょうど1年前、180年の歴史を持ちLVMH傘下でさらに飛躍を遂げているハイジュエリーブランド「TIFFANY(ティファニー)」が東京で開いた大規模エキシビションの会場でのこと。ミスキン氏は、レスリーと初めて対面。彼の作品はもちろん知っていたが、展示品に興味を持って隅々まで見て回る姿に感心したという。後日、食事をしながらいろいろ語り合ううちに意気投合し、今回の企画が浮上。ミスキン氏が表紙を飾り、過去のアーカイブも収容した『SUPER MAGAGINE』の集大成的な雑誌を創り上げたのだ。
seven x sevenのチーフ・クリエイティブ・オフィサーであるデイビッド・ミスキン氏が表紙に抜擢された『SUPER MAGAZINE』20周年記念号。
グローバルなファッションリテールやラグジュアリーブランド、高級自動車などでVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)やクリエイティブディレクションなどを行ってきたミスキン氏は、レスリーとのコラボレーションについてこう振り返る。
「職業柄、多くの写真家と仕事をしてきましたが、レスリーの仕事の仕方は本当に素晴らしいものでした。中にはディレクションやシャッターを切るだけで現場を去り、あとはアシスタントに任せてしまうような有名カメラマンもいます。けれども、レスリーはたくさんのセレブリティをキャスティングし、ブランドの力を得てスタイリングをして、ライティングやポージング、そして仕上がりに至るまで深く入り込んでハンズオンで作品を作っている。もちろんスキルがあって、技術も知識も経験値も高いのですが、仕事への向き合い方が新鮮で、クオリティやディテールへのこだわりに感銘を受けました。そういった細部にいたるまでのこだわりや情熱は、私たちがseven x sevenをはじめとしたホテルのクリエイティブで大切にしていることでもあります。こういうイベントも、ホテルや本社のスタッフなどをはじめとする数多くの裏方の方々による努力で出来上っています。一緒に仕事ができて本当に良かったと思っています」
目の前にプールが広がる1階ロビーの奥には、スペイン語とポルトガル語で“リズム”“ビート”の意味を持つレストラン「BATIDA」(バティーダ)を展開。イタリア料理にメキシカンのエッセンスを取り入れたフュージョン料理が楽しめる。石垣島産の素材もふんだんに使用。
「seven x seven」のネーミングにはいくつかの意味が込められているとミスキン氏は説明する。
「この名前には、意図的に象徴的な意味を重ねています。7は、世界的に神聖でラッキー、そして力強い数字として知られていますが、私はそれを倍にすることで、運の増幅、祝福の重なり、そして訪れる方々に広がる可能性の象徴としました。古代の世界七不思議から、七つのチャクラ、七つの徳、音階の七音、そして一週間の七日間に至るまで、7という数字は文化や宗教、哲学の中で「完全性」や「調和」のシンボルとして繰り返し登場します。その数字を重ねることで、私たちは豊かさや高まりを表現すると同時に、ゲスト一人ひとりが自分自身の意味を見つけられる余白を持たせています。それこそが「seven x seven」の魅力であり、解釈は自由で、常に進化し続け、そしてとても個人的なものなのです」
これに対して、風水信仰の強いシンガポール出身で、多くのラグジュアリーホテルやリゾートホテルなどにも滞在してきたキー氏も、「seven x seven石垣は風水的にもとても“気が良い”ですね。海や自然の力を生かしながら、心地よさやエネルギーチャージにつながる空間デザインになっていると感じました」と加えた。
その土地の伝統や風土などを生かしたデザインは、旅情をエモーショナルに刺激してくれる。地元で古くから使われてきた琉球石灰岩を使用した壁にはサンゴなどの化石模様を施すことで、石垣特有のオリエンタルなムードを演出。
そしてキー氏は「このホテルを見ても、一緒に仕事を進めていくうえでも、デイビッドの美意識やこだわりは世界のトップレベルだと感じました。僕もニューヨークと日本に住んで多くの人々と仕事をしてきましたが、デイビッドの美的感覚や世界観の創り方はすごく繊細で、才能がある方だとわかったので、一緒にモノ作りができたのは光栄でした」と続ける。
ホテル内のいたるところで洗練されたデザインと良質なBGMが展開されるseven x seven 石垣。五感を穏やかに刺激しつつ、リラックスとエンパワーメントを促進する。
20周年を迎えた『SUPER MAGAZINE』は、レスリー自身のライフワークとして、自ら企画・キャスティングし、ほとんど自費で制作・発表してきたものだという。
「駆け出しのころは仕事も少なかったのですが、『未来は自分で作る』と言い続けて、さまざまな方々との出会いや縁を大切にしながら情熱を傾けて道を切り拓いてここまでくることができました。時代とともに内容も変遷しています。キャストも俳優やモデルなど誰もが知っているようなわかりやすいセレブリティ中心だったものから、最近ではブランドやエンターテインメントを支える方々や映画監督、ギャラリストなど裏方の方々も多く撮影させていただくようになりました。デイビッドは花形でもあるし、ホテルなどモノを創るクリエイティブな才能もあり、尊敬しています。これまで主にギャラリーやリテールストアなどで写真展を開いてきましたが、ホテルのエントランスやロビーなど、これだけラグジュアリーな空間やゲストの方々が過ごす特別な時間の中で私の写真に接する機会やアートに包まれるような体験を生み出してくれたことはとても貴重なものでした。私のキャリアのなかでも、未来の可能性につながる、新しい挑戦の第一歩となり、心から感謝しています」
レスリー・キー氏が撮影してきた世界を代表するセレブリティやアーティストなどのアーカイブ写真がロビーやエントランスを飾った。ケイト・モスやジジ・ハディッド、カーラ・デルヴィーニュやシンディ・クロフォードなどのトップモデルが勢ぞろいしたコーナーにも注目が集まった。
霞ヶ関キャピタルのトップであるCEOの河本幸士郎氏も、被写体として写真集やホテルで展示された作品に登場している。
「レスリーに撮影してもらった写真の中には、僕が知らない僕がいました。一緒に撮影に臨んだ娘からも『パパかっこいい!』と言われてものすごくハッピーで嬉しく、レスリーは僕の家族から神様と思われています。このエキシビションやイベントをseven x seven 石垣でできたことも特別なことだと改めて実感しています」と語る。
霞ヶ関キャピタルのCEOである河本幸士郎氏は、愛娘とともにレスリー・キー氏のエネルギッシュなフォトシューティングに参加。
河本氏が、ホテル事業を開始したのは4年前のこと。そのきっかけについてこう教えてくれた。
「単純に、日本に泊まりたいホテルがなかったからです。今、我々が展開しているホテルの数は16棟になり、進行中のものを含めると、30棟を超えています。銀座や六本木、由布院など日本各地に開業する構想があり、5年後には100棟を超える見通しです。フェラーリやポルシェなどの高級車がいつの時代にも人気なのと同様、ラグジュアリーな世界観を求める人々は世の中に大勢いらっしゃいます。まだこの世に存在していないコンセプトのホテルを僕たちが創っていきたいと思っています」
琉球・石垣を象徴するシーサーが鎮座する、サウナクリエイティブ集団のTTNE監修の本格フィンランドサウナ。17℃と9.5℃というふたつの水風呂に入ってから、プールを見ながらのんびり外気浴をする“ととのう”体験はやみつきになるだろう。
創業地である仙台に拠点を置くBリーグチーム「仙台89ERS」のスポンサードに続き、2025年3月には「seven x seven Racing」としてポルシェ911 GT3 Rを擁してスーパーGTのシリーズパートナーとして協賛をスタート。新たに立ち上げたホテルブランド「edit x seven(エディットバイセブン)」の第一号となる「edit x seven 富士御殿場」の開業を今秋に控えているだけでなく、今回のイベントが行われた翌週には、銀座の丸源ビル跡地を取得したとのニュースも入ってきた。霞ヶ関キャピタルと、「seven x seven」の存在感はこれからさらに増していきそうだ。