Rexhep Rexhepi Interview

最注目の独立時計師
ブランド、日本上陸。

August 2022

銀座の時計の名店アワーグラスが、スイス ジュネーブを拠点とする独立時計師ブランド「AKRIVIA(アクリヴィア)」の取り扱いを開始する。アクリヴィアは、独立時計師レジェップ・レジェピ氏により2012年に創設された新進気鋭のブランドだ。35歳にして20年のキャリアを持つ彼に、インタビューする機会を得た。

 

 

text NOBUHIKO TAKAGI

 

 

 

 

Rexhep Rexhepi/レジェップ・レジェピ

1987年コソボ(旧ユーゴスラビア)生まれ。12歳の時に父が働くジュネーブに移住。15歳でパテック フィリップの研修生として時計師のキャリアをスタート。F.P.ジュルヌなどを経て2012年に独立、「AKRIVIA」を設立。

 

 

 

「旅に出るなんてことはほとんどないんですよ。なんてったって時計師だから、やるべきことは時計作り。休みの日も時計作り。趣味が時計作りみたいなものです(笑)。でも日本での展開をスタートさせるためにやって来ました。ビジネスパートナーとも顔を合わせたかったし、メディアの方々に時計について直接説明したかった」

 

 初来日を喜ぶ彼の気さくで爽やかな人柄と、その若さに驚かされる。熟練の気難しい職人という印象は皆無だ。時計師としてのキャリアは20年だが、彼はスイス人ではない。

 

「コソボ(旧ユーゴスラビア)で生まれました。両親はすぐに離婚してしまって、祖母に育ててもらいました。父はスイスへ飛んでレストラン関係の仕事で働きに行っていました」

 

 

バーゼルワールドに初出展した2018年発表の「RRCC Ⅰ」。「レジェップ・レジェピ クロノメトル コンテンポラン Ⅰ」の頭文字である。グランフーエナメルのダイヤルを採用し、クラシックなスタイルとなっている。その審美性はケースバックから覗くムーブメントの隅々にまで見られる。シンメトリー(左右対称)にこだわっただけでなく、シングルバレルで100時間のパワーリザーブを実現するため摩擦係数を極限にまで抑える磨きが素晴らしい。手巻き、18KRGケース、38mm。価格未定 Akrivia

 

 

 

 では時計への情熱はいつからどのように生まれたのか。

 

「スイスから時々帰ってきた父が、いつも時計を身につけていたんです。子供ながらに、“これはなんだろう?”とずっと興味を抱いていました。そして12歳のとき、国を逃れて父のいるスイスに移住することになりました。スイスの空港に着いてたくさんの時計の広告を目にして、『僕は時計の国にやってきたんだ!』と理解しました」

 

 時計の国にやってきた少年は、やがて奥深い時計の世界にのめり込んでゆく。さまざまな本を読みあさって理解を深めていったが、知れば知るほど好奇心は止まらなくなった。

 

「そこで分かったんです。時計師になればもっと時計を学ぶことができて、いつか自分の好きな時計を作れるようになるんじゃないかと。これが僕のやりたいことだってね」

 

 

ブランド設立10周年となる今年発表された「RRCC Ⅱ」。外観こそ前作と似ているが、ダイヤルのディテールやムーブメントも大きく異なる。写真のローズゴールドモデルは、手描きのインデックスが施されたアイヴォリーのグラン・フー・エナメル。6時位置にはデッドビートセコンドが備わる。ケースは、一度引退した伝説のケースメーカー、ジャン-ピエール・ハグマンを招聘して共同制作したコラボレーションケースとなっている。またストラップはクイックリリース式で、オーナー自身が容易に付け替えができるようになっている。手巻き、18KRGケース、38mm。価格未定 Akrivia

 

 

 

 彼は15歳で名門パテック フィリップに入り、見習いとして学びながら働き始めた。

 

「アトリエのいろんな部門に配属されて学べば学ぶほどに魅了されていったのを覚えています。16歳のとき、トゥールビヨンを搭載した時計を腕に乗せてみて、大きく心を動かされたんです。それで将来絶対に自分の時計を作ろうと決心しました」

 

 そこからの毎日のモチベーションは、すべて自身の独立のために向けられた。2年後には技術者に昇進し、さまざまな仕事を任されるようになる。BNBコンセプトを経て、23歳のときにF.P.ジュルヌに移籍し、その技術力にさらに磨きをかける。そして2012年、25歳でブランド立ち上げを実現する。

 

 それからの毎年、コンスタントに独自性の高い時計を発表している。2017年までの間に発表した「AK」コレクションでは、トゥールビヨンをはじめ、モノプッシャークロノグラフやジャンピングアワーなど、特に複雑機構に注力した。

 

「とにかく時計という機械、特に複雑な時計が大好きなんです。でもこの仕事を突き詰めていくと、やがてその頂点はよりシンプルな時計に行き着く。毎日つけられる時計を作りたいと思ったんです」

 

 

プラチナケースの「RRCC Ⅱ」は、ブラックのグラン・フー・エナメルにホワイトローマインデックス、手彫りのグラヴェ・グラテの上に半透明のグレー・エナメルを使用した秒表示となっている。手巻き、Ptケース、38mm。価格未定 Akrivia

 

 

 

 そこで彼は2018年、スモールセコンドを搭載したシンプルな3針の時計「RRCC Ⅰ」を発表した。この時計で彼はGPHG(ジュネーブ・ウォッチ・メイキング・グランプリ)のメンズウォッチ賞を受賞する。彼の手がける時計はあっという間に世界に名を轟かし、評価されるようになった。

 

「シンプルというのはごまかしがききません。しっかりしたデザインの強さが必要でした。そこでエナメルのダイヤルを採用したんですが、非常に難しい技術が必要で苦労しました。僕が大好きな懐中時計のスタイルを意識していて、よりクラシックなデザインとなっています。もちろん中身の美しさも追求していて、ムーブメントもシンメトリーにこだわっています。また時計師である自分の顔がもっと見えるように、ダイヤルに僕自身の名前『REXHEP REXHEPI』を入れています」

 

 

 

「RRCC Ⅱ」のケースバックからは、やはりシンメトリーのデザインの手巻きキャリバーRR-02を見ることができる。ツインバレルでパワーリザーブは82時間。

 

 

 

 さらに2019年、2021年のOnly Watchオークションにはそれぞれ「RRCC」コレクションのユニークピースを出品しているが、それぞれエスティメートの約10倍もの落札価格を記録するなど、年を追うごとにその名声は飛躍的に高まっている。あの天才時計師フランソワ・ポール・ジュルヌや、業界の辣腕経営者ジャン-クロード・ビバーらに認められた彼の時計は、将来においても間違いなく価値を残すと評価されているのだろう。100本限定のモデルに多くの購入希望者が殺到するなど、既に人気は爆発しているといえる。

 

 そしてブランド創設10周年でもある2022年は、新作「RRCC Ⅱ」を発表し、ついに日本上陸を果たした。彼の探究心はまだまだとどまるところを知らない。

 

「もう既にたくさんのプロジェクトを同時進行で進めています。やりたいことは山のようにある。10年後も時計への情熱は変わらないと思います。今も毎日情熱が増え続けるばかりですから。歴史に名を残す偉大な時計師たちに敬意を表しつつ、自分らしい時計を残していけたらいいなと思っています」

 

 

アワーグラス銀座店

東京都中央区銀座5-4-6 ロイヤルクリスタル銀座

TEL.03-5537-7888(12:00~19:00)

www.thehourglass.co.jp/