Guido Terreni, Parmigiani Fleurier CEO Interview

求められる時計を
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July 2022

昨年、マイクロローターを搭載して薄型化を達成した、ラグジュアリーかつスポーティな「トンダ PF」コレクションをローンチし、ますます勢いを増しているパルミジャーニ・フルリエ。

今年のWatches &Wonders での新作とその戦略について、CEOのグイド・テレーニ氏にインタビューする機会を得た。

 

 

text NOBUHIKO TAKAGI

 

 

 

Guido Terreni

グイド・テレーニ

1969年イタリア・ミラノ生まれ。ルイジ・ボッコーニ大学で経済学を学ぶ。2000年にスイスへ移住し、ブルガリグループのウォッチメイキング部門へ移籍。2009年にブルガリ・オルロジュリのプレジデントに着任し、11年間同ポジションを務める。2021年1月にパルミジャーニ・フルリエのCEOに就任。

 

 

 

「パルミジャーニ・フルリエらしいスタイルとして、“リッチミニマリズム”を意識しています。リッチというのは、製造工程が豊かであるということ。そして美観としてはミニマルであるということです」

 

 こう語るのは2021年1月にパルミジャーニ・フルリエのCEOに就任したグイド・テレーニ氏だ。パルミジャーニ・フルリエが今年4月のWatches &Wondersで発表した新作は、実用的かつシンプルで力強さがあり、機械式時計の本質を追求するブランドの方向性が感じられるものだった。

 

「新しい時計の開発においては、まずブランドが持っている価値、そして私たちのお客様がどういった方々なのかということを念頭に置いています。私たちのお客様の多くは、時計についてはもちろん、時計業界、またラグジュアリー業界についてよくご存知であり、また非常に控えめなテイストをお好みでいらっしゃる。ですから時計はピュアでシンプルかつエレガントであるべきだと考えました。デザインや仕上げにおける美観についても、それに見合うものでなければなりません。もちろんそこには私たちが誇る職人技術も盛り込みます」

 

 新作の中でハイライトとなった「トンダ PF GMT ラトラパンテ」は、クロノグラフ以外でラトラパンテ(フランス語で「追いつく」に由来する)機構を搭載した世界初の時計となっている。

 

「私自身、非常に出張の機会が多く、1年の3割ほどが出張です。ですが逆に7割はホームにおり、その際にGMT機構は必要ないわけです。時計の機能というのは、必要な時にだけ簡単に使えるものでなければならないと私は考えます。この時計は8時位置にあるプッシャーを押すとローカルタイムを表示し、家に帰ってリュウズを押せばホームタイム表示に戻れるという非常に便利な機構です。ユーザーフレンドリーですし、針も2本でシンプル。控えめです。そのおかげで視認性にも優れています」

 

 

Watches & Wondersで発表された4つの新作を紹介。共通するのは、ローレット加工を施したプラチナ製ベゼル。控えめながら力強いビジュアルを持ち、ミニマルでエレガントなブランドのアイデンティティを確立した。ハイライトとなる「トンダ PF GMT ラトラパンテ」は、シンプルかつ実用的な機構を世界で初めて搭載し話題に。8時位置のプッシュボタンを押すと、ロジウムめっきゴールドのローカルタイム針が一時間進むことにより、下に隠れているローズゴールドのホームタイム針が現れる。ホームに戻ったら、リュウズと一体化したプッシュボタンを押して瞬時に戻すという仕組みだ。「トンダ PF GMT ラトラパンテ」自動巻き、SSケース×Ptベゼル、40mm。¥3,509,000 Parmigiani Fleurier

 

 

 

「トンダ PF」コレクションは、メゾン創立25周年を記念して2021年9月に突如発表された。これはテレーニ氏が初めて手がけた新コレクションである。通常、新作時計の開発というのは、少なくとも年単位の時間がかけられるものだ。しかし氏は、就任から半年強で新コレクションを発表した。しかも発売するやいなや瞬く間に成功を収め、さらに翌年となる今年は、世界初の機構を備えたモデルやスケルトンモデル、そしてフライングトゥールビヨンを搭載した新作を発表したのだ。

 

「幸いなことに、パルミジャーニ・フルリエは既にさまざまな技術を持っていましたし、細かい部品の調達もグループ企業で確立していました。マイクロローターを搭載したムーブメントや、ダイヤルのギヨシェ、ラグやブレスレットの製造技術などが既にあったのです。ですからこの短期間で新作の開発を進めることができました」

 

 それにしてもそのスピード感には驚かされる。テレーニ氏の行動力も大きいのではないか。

 

「私は2021年1月に就任していますが、入ったその日からすぐに『トンダ PF』のデザインにとりかかりました。2月にはほとんど固まり、スタイルが確立しました。3月にはプロトタイプが完成。そんなわけでスムーズに開発が進み、9月に発表という形が可能になりました」

 

 すぐに行動に移せたのには、予めアイデアを明確にしていたからだという。

 

「就任する前からずっと、パルミジャーニ・フルリエのお客様にとってどんな時計が良いかを考え、検証してきたのです。ブランド全体を考えてみると、アイデンティティを語る“スタイル”がやや欠けている気がしました。伝説的な時計師であり修復師であるミシェル・パルミジャーニの素晴らしさや、高度な技術力を有していることをうまく打ち出していくために、改めてブランドの方向性を考え直しました」

 

 

パルミジャーニ・フルリエの美学が詰め込まれたスケルトンモデル「トンダ PF スケルトン」。芸術的なそのオープンワークは、バランスとボリュームを保ちながら、ムーブメントの有機的な動きと構造を明らかにするためにつくられている。華美になることなく、時計としての機構を純粋に見せる優美な1本だ。写真の18Kローズゴールドケースと、ステンレススチールケース×プラチナベゼルの2バリエーションを展開。「トンダ PF スケルトン」自動巻き、18KRGケース、40mm。¥11,847,000 Parmigiani Fleurier

 

 

 

 CEOとしてブランドを再構築するためには、もちろんさまざまな細かい点についても理解していなければならない。テレーニ氏は経営者という立場でありながら、時計製造における細かい工程や作業内容、工具や機器など、そうした技術的な側面においても非常に深い知識を持っている。

 

「モノづくりが本当に好きなのです。時計を愛していますからね」

 

 その上で重要視したのは、やはり顧客についてである。

 

「私たちのお客様はエレガントで洗練されていて、でもやはり控えめなスタイルをお好みである、ということを軸に考えました。例えば『トンダ GT』ではブランド名をフルに明記したロゴを採用していましたが、これはやや主張が強すぎる。ですから、『トンダ PF』ではあえてエレガントで控えめなPFロゴのみにしました」

 

 時計業界においては、アイデアはもうすべて出尽くしたとよく言われる。しかしそんな中で、このスピード感を持って新作を発表していくというのは驚異的である。

 

「昨今の時計業界では、父親や祖父の代が愛していたようなものを、少し現代的にアップデートするということが多いですが、私としてはそれではオリジナリティが足りないと思っています。とにかくまだどこもやったことがないことをやる、限界をもっと押し広めていく。そういったことが必要だと思っていますし、それこそがパルミジャーニ・フルリエらしい精神であると考えています」

 

 

フライングトゥールビヨンという超複雑機構を搭載しつつも、ミニマルなダイヤルデザインと、わずか8.6mmの厚さによって美しい品格を表現した1本。ケースとダイヤルすべてにサンドブラスト仕上げのプラチナ950を採用。さらに、同じくプラチナ製マイクロローターを用いた自社製キャリバーPF517を搭載する。「トンダ PF フライングトゥールビヨン」世界限定25本。自動巻き、Ptケース、42mm。¥18,843,000 Parmigiani Fleurier

 

 

 

 いわゆるラグジュアリースポーツウォッチといわれる時計が各社から続々と発表され、その多くが驚異的な人気を博している昨今、パルミジャーニ・フルリエは“トレンド”についてどう捉えるのか、尋ねてみた。

 

「確かに近年はファッションも含めて、カジュアルだけどエレガント、というスタイルが主流になってきていますから、そうした潮流の中ではラグジュアリーでスポーティな時計は人気です。ですがそんな時計の中でも、『トンダ PF』には他社とはまったく異なる独創性が備わっています。非常に控えめでミニマルでエレガントです」

 

 昨今のラグスポ人気は異常ともいえるほどで、市場での価格も高騰しており、やや加熱し過ぎているようにも見える。特定のブランドへの人気が集中し、入手も困難な状態は現在も続いている。そんな中、一部の愛好家たちからは既に飽きがきているとの話もちらほら聞く。

 

「パルミジャーニ・フルリエを愛してくださる愛好家の方々は、他の人が持っていないような時計を好みます。そして高い希少性も含めて価値を見出してくださいます。ですから私たちは独自の方向でクリエイティブを表現していこうと考えています」

 

 彼の才能ともいえる先見の明と、顧客の心を掴む力は早くも発揮され、パルミジャーニ・フルリエはこの1年だけ見てもかつてない急成長を遂げている。今後の動向に大いに注目したい。

 

 

2019年に発表されたよりスポーティな「トンダ GT クロノグラフ」からは、見たこともないような絶妙なニュアンスカラーのバリエーションが発表された。⼀体型クロノグラフを搭載した18Kローズゴールドケースモデル、アニュアルカレンダーを搭載したステンレススチールケースモデルのそれぞれで、「クアンタムグレー」と「グラナタ」を展開し、計4モデルが登場となる。サブダイヤルのカラーに合わせたラバーストラップが付属。「トンダ GT クロノグラフ」自動巻き、42mm。SSモデル:¥2,618,000 RGモデル:¥5,808,000 Parmigiani Fleurier

 

 

 

パルミジャーニ・フルリエ

Email: pfd.japan@parmigiani.com

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