PARMIGIANI FLEURIER “La Rose Carrée”

“神の手”が蘇らせた息を呑むユニークピース

January 2023

外装は両面とも幾層にも塗り重ねられたブルーのグランフーエナメル仕上げ。スイス唯一のチェーンメーカー、ローラン・ジョリエによるスクエアリンクのチェーンが付属。「ラ・ローズ・カレ」手巻き、18KWGケース、64mm。250万スイスフラン(税抜価格)

 

 

 

 このポケットウォッチを目の当たりにすれば、誰もが畏敬の念を抱かずにはいられないだろう。パルミジャーニ・フルリエが総力を結集して新たな息吹を吹き込んだ、ダブルハンターケースのポケットウォッチ「ラ・ローズ・カレ」である。

 

 グランソヌリとミニッツリピーターという複雑機構がふたつも搭載されているが、これは最新のムーブメントではない。今から1世紀以上も昔、卓越した技術を持つ時計師ルイ=エリゼ・ピゲによって製作されたキャリバーを修復したものである。所有していたのは、数々のアンティーク時計やオートマタの修復を手がけたことから「神の手を持つ」と称賛される創業者ミシェル・パルミジャーニ氏。1990年代後半に手に入れて以来、彼の机の引き出しの中で眠っていたらしい。ミュージアムピース級のこの代物は完全な状態にまで修復され、最高級の装飾を施した直径64mmのホワイトゴールドケースに収められたのだ。テーマモチーフは、薔薇の花びらが枯れ始めるときに見せる直線的なフォルムに着想を得た“四角の薔薇”。黄金比に則って導き出した幾何学模様のデザインが、随所に施されている。

 

 パルミジャーニ・フルリエは現在、世界有数のマニュファクチュールブランドであり、さまざまな部門にスペシャリストを抱えている。「ラ・ローズ・カレ」プロジェクトはかつての職人技術と深く関わるため、スペシャリストたちは最高の職人たちにつけられた名「黄金の手(les mains d’or)」と呼ばれるようになった。往年の天才時計師と現在の名匠たちの“手”が生んだ、世界でひとつの至宝である。

 

 

超複雑機構を得意とする天才時計師ルイ=エリゼ・ピゲが、19世紀末に製作したキャリバー5802(修復前)。グランソヌリ(毎正時と15分毎にチャイムを鳴らす)機構と、ミニッツリピーター(作動させるとそのときの時刻を音で知らせる)機構を搭載している。

 

 

ダブルハンターケースの片側を開くと、ブラックオニキスで作られたダイヤルが現れる。パルミジャーニ・フルリエらしい、ミニマルでエレガントな佇まいである。

 

 

もう片側からは完璧に修復されたムーブメントを鑑賞できる。地板とブリッジにはローズ・カレ模様が施されている。どちらのカバーの内側も鏡面仕上げ。

 

 

エッジ部分にもローズ・カレの繊細なエングレービングが施されている。

 

 

ムーブメントと対向の鏡面に施された刻印。

 

 

 

THE RAKE JAPAN EDITION issue50