OBJ Osaka
Takashi Ryushima Interview

柳島崇志氏が語る
OBJの現在

August 2021

 

——オブジェ大阪といえばJMMの取り扱いが豊富で、デザイナーのジェローム氏も毎年来店されていますが、どのようなきっかけで親交を深められたのでしょうか。

 

 JMMについてはインスタグラムで彼らのファーストモデル“ZEPHIRIN”を見て知りました。丁度ファーストコレクションを発表するタイミングの前後だと思います。実物でなく写真なのに、「めっちゃかっこいいやん」と思わず感嘆し唸ってしまった事を覚えています。

 

 彼とはパリで出会いました。確か2015年か2016年のシルモの展示会です。その前年に社長がパリに赴いているのですが、仕入れに行く社長に、「ジャック・マリー・マージュという新ブランドがとても素敵なのでぜひ商談してきてほしい」とお願いしました。僕は彼らの連絡先を探して、社長のスケジュールにジャック・マリー・マージュのアポイントメントを入れてもらったんです。厳しい審美眼を持つ社長もパリで実物を見て、納得だったようです。

 

 彼に初めて会ったのは、その翌年、社長の代わりに私がパリの展示会に行った際です。「あなたのデザインは素晴らしい」だの、「このモデル“ZEPHIRIN”が大好きなんだ」とか、拙い語学力でなんとかその情熱を伝えたのを覚えています。それからというもの、パリでの滞在中には一緒にディナーに行く事が恒例になり、彼が日本に来た際はお店にも立ち寄ってくれたり、たわいもない会話をしたり、メガネの情報交換をしたりしています。前回は息子さんも一緒に来てくれました。

 

 彼は、恥じることのない自分のスタイルを持った、懐の大きな人です。彼のフィルターを通ったデザインが時代をどう写していくのか。これからも楽しみです。

 

 

ジャック・マリー・マージュのデザイナー、ジェローム氏。来日するたびにオブジェ大阪を訪れている。記事はこちら

 

 

 

——JMMのアイウェアの魅力、そして注目の新作モデルを教えてください。

 

 彼のアイウェアの魅力、それはずばり求心力です。不思議と手に取りたくなるんです。

 

 デザイン、そしてそのサンプリングソース、インスピレーション源、モデルにまつわるストーリー、カルチャー、メイドインジャパンのクオリティ、オリジナルの生地、厚み、艶、色使い、カッティング、絶妙な張り合わせ、芯金、彫金、マテリアル、少量限定生産、ボックス、センスの良いコラボレーション……。いくらでも付加価値の付く説明はできるでしょうが、これが中々、そう上手く巧みに融合しているものってないんです。JMMはその融合が成功している、最たるものだと思います。大事にしたくなる眼鏡、とでも言いましょうか。

 

 昨今人気のあるフレンチヴィンテージ、それとアメリカントラッドを掛け合わせたような新しい感覚が宿っています。でもアヴァンギャルドな怪しい匂いも持っていて……。イントロからモダンかと思えばやっぱりフリージャズだったり、ソウルやファンクのような暖かさと楽しさ、かと思えばサイケデリックな側面や、辺境の音楽のようにフレッシュで奇妙な感覚を味合わせてくれたり。ナイスバディなドンシャリとしたドラムのようなボリューム、ポップな要素もあって、メランコリックな雰囲気もある。土臭いのにすごく上品で高級(笑)。…説明がよく分からないですね(笑)。ジェローム氏の言葉を借りるなら、「手に取ればわかる。それは非常に感覚的な体験」です!

 

 注目の新作は、「ラスト フロンティア コレクション」です。これには彼のこだわりがいつもの何倍も詰まっています。THE RAKEを購読されているような方なら必ず興味を持っていただける非常に優秀なプロダクトです。勿論、当店にもございますのでぜひ実物をご覧いただければと思います。

 

 

オーセンティックなウェリントンシェイプに角度と光を計算したカッティングが映える。JMMでよく用いられるアローのモチーフは通常のラインとは一線を画す仕上がり。スターリングシルバーで構成され矢尻には真鍮が用いられている。細かな彫金が合口部からテンプルに美しく配され、眼鏡とは思えない仕上がり。テンプルエンドには純銀のサンダーバードが天然のターコイズを抱える。世界限定200本。日本への入荷はごく僅か。「RAWLINS」col.NOIR ¥220,000 Jacques Marie Mage

 

JMMらしい骨太で男性的なフレームワーク。スクエアを基調としたどこか懐かしいシェイプ。智元に大胆に入ったカットが面白い表情を作り出している。鈍く光るスターリングシルバーはチマヨ柄と呼ばれるネイティブアメリカンを象徴する模様。菱形を幾何学的に組み合わせたような独特なバランスの中心に、キングマン鉱山で獲れた彩色されていない天然色のターコイズ。今の気分にしっくりくる少し淡めのブラウンレンズはミネラルガラスを採用。強度と抜群の透明度を兼ね備えたクリアな視界にも注目してほしい。「DAKOTA」col.DARK HAVANA ¥220,000 Jacques Marie Mage

 

PECOS collectionと名付けられたLAST FRONTIER collectionの中でも更に希少なモデル。世界でも35本しか作られていない。前述のモデルDAKOTAにも同じコレクションが存在し、そちらは黒色のフレームにビーズワークが施されている。プエブロ族のアーティスト、フランシスコ・バイロン氏によって緻密に編み込まれたビーズが光る。ニューメキシコ州サンタフェのベンダーからサイズ15のシャーロットビーズを取り寄せ、天然皮革に縫い合わせた。トゥルーカットとも呼ばれるシャーロットビーズは、通常のシードビーズのような形をしているが、ひとつ、またはふたつの小さなファセットで輝きを放つことができる特別なビーズ。 伝統との巧みな融合を表現したコレクションは素晴らしく新鮮だ。「ARKANSAS」col.RUSSET ¥302,500 Jacques Marie Mage

 

 

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