Jacques Marie Mage Designer
Jerome Jacques Marie Mage Interview

世界で人気を博すアイウェア
「ジャック・マリー・マージュ」の美学

Wednesday, December 11th, 2019

 

Jerome Jacques Marie Mage/ジェローム・ジャック・マリー・マージュ

約20年にわたるアクションスポーツや時計、高級ジュエリーなどのラグジュアリープロダクトのディレクションを経て、2015年にアイウェアブランド「ジャック・マリー・マージュ」を始動。日本の高い技術力を採用し、アヴァンギャルドかつラグジュアリーなデザインで一躍人気に火がつく。

 

 

 すべてがハンドメイドによる限定生産で、ラグジュアリーな素材使いとモダンなデザインが人気のアイウェアブランド「JACQUES MARIE MAGE(ジャック・マリー・マージュ、以下『JMM』)」。今年もデザイナーのジェローム氏が来日し、大阪のアイウェアショップ“OBJ osaka(オブジェ・オーサカ)”にやってきた。

 

——昨年に続いて来日された目的と、日本で楽しみにしていること、日本の印象について教えてください。

 

 年に3〜4回は日本に来ています。旧交を温めるために友人を訪問することはもちろん、JMMのサングラスを創り出すアトリエを見学してまわっています。自身の日本に関する知識を深めることをいつも楽しみにしているんです。

 

 私は日本へのとても深い愛と繋がりを感じています。うまく説明することができないのですが、根底的なところで繋がっている気がしていて。日本文化や伝統と現代のセンスを融合させるアイデアに共感を覚えるんです。

 

 日本のカルチャー、食べ物、ファッション、雑誌、鉄道、自然、それに日本で感じる空の色、すべてをいつも楽しみにしています。以前も話したかもしれないけど…実は何よりも、日本の野球が大好きなんです!昨日も阪神VS広島戦を観戦しに行きました。

 

 

彼が着用していたのはエディ・スリマンが手がける新生CELINEのストライプスーツ。いつもウエスタンタイを合わせるのは彼ならではのこだわり。着用しているサングラスは、先日ロバート・ダウニー Jr.氏が着用していて話題になった「ASCALI」col.Clear ¥69,000 Jacques Marie Mage

 

 

——2015のブランドスタート以来、JMMは日本でも人気を博していますが、成功の要因はなんだとお考えですか?

 

 人気がある秘訣を完璧に説明できるかどうか…それほど確信はないのですが。機能的なディテールと美的なディテール、双方にこの上ない注意を払っています。独自の彫刻を施したり、貴重な天然由来の素材を使用したりもしています。違いのわかる顧客の方々に、高度にパーソナライズされた印象を提供するためです。

 

 また、JMMのアイウェアは個々のフレームが各々に物語を持っています。時に眼鏡ひとつが素晴らしい「会話のピース」として大きな役割を果たすのです。フレームのインスピレーションは、ブルータリスト建築からフレンチニューウェーブ、ナポレオンのレガリアから伝統的なアメリカーナまで、さまざまな事柄に至ります。これらの二元性が、私たちのルーツと文化的なバックグラウンドを有意義に捉えてくれます。この時代においても例外なく完璧なものを創り出すために。

 

 精巧に手作りされたアイウェアの数々は、印象的で物理的にも面白い特徴を持っています。洗練されているのに力強くて遊び心がある、良い意味で「時代錯誤」的な感覚を楽しんでいただければ幸いです。

 

 

1950年代のスペクタクルからインスピレーションを得た大胆かつ滑らかなスクエアフレーム。F1唯一のイタリア人チャンピオン、「フライング・ミラン」と呼ばれたミラノ出身のレーサー、アルベルト・アスカリに敬意を表して。「ASCALI」col.Vintage Tort ¥69,000 Jacques Marie Mage

 

 

 私たちは真に収集に値する“作品”を創っています。人々は作品だけでなく、そこにまつわる物語ともずっと繋がっていく。だからこそ、私たちの作ったフレームと、時に感情的な繋がりもできるのです。ですからJMMをお買い上げいただいた皆様には、単に製品だけではなく、そのプロダクトの持つ神秘性、そしてその背後にある物語も含めてご購入いただいていると言えます。真のラグジュアリーを感じたいなら、私たちの創ったフレームをただ単純に触ってみてください。すぐにおわかりいただけるはずです。それは非常に感覚的な体験です。

 

 また、私たちは自分達の声と資金で世界に貢献したいと考えています。実は、我々の好奇心を魅了する場所や動物たちへの保護活動を行っているんです。イエローストーン公園財団やLWW(狼の保護活動を行う団体)、アメリカの国立公園と野生生物を守るために常に売上額の1%を寄付しています。眼鏡を入れるボックスの中にそういったカードが入っているのでご存知の方もいらっしゃるかもしれません。共感していただければ嬉しいです。

 

 

自らの意思でノーベル賞を辞退した最初の人物で、哲学者であり小説家、フランスのジャンポール・サルトル。彼の掛けていたフレームをモチーフにした印象的なモデル。アセテートブローとチタニウムが綯交る「SARTRE」col.Noir ¥84,000 Jacques Marie Mage

 

 

——新作のテーマについて教えてください。

 

 この冬、私たちは引き続きさまざまな時代や国、文化を越えたところからインスピレーションを受けています。これはもう、私たちの伝統というか、大袈裟にいうと芸術的流儀です。2019年秋のサーカコレクションは、まさに前述した歴史的なストーリーと装飾的な側面とが一体となったものです。これらは、単に歴史上の象徴的な瞬間を垣間見るだけではなく、私たちが現在どのようにして世界を体験しているのか、その体験方法をクラフツマンシップによって形作った、非常に象徴的なコレクションです。

 

 今シーズンの念頭にあったのは、「最適な形で外形をデザインすること」。これを求めた結果、いわゆる「流線形」が持っている、洗練された独創性に魅了されました。

 

 アールデコ、戦後の消費者革命、第二次世界大戦で使用されたミサイル、ジェット機の空気力学に基づく形状に至るまで、いろいろな出来事、文化、教訓を理解しようと1930年代から1950年代までのデザインを吟味しました。過去に存在した巨匠たちが残した作品から、近代化の歩みを感じることができます。

 

 

大阪・南堀江の街を歩くジェローム氏(写真上)が着用するサングラスはブランド初となる縁無し「YUMA」(写真下)。今季JMMはシェイプとコンセプトを変えた二型のリムレスを発表したが、「YUMA」はユニークなレンズシェイプが特徴だ。col.Steel ¥130,000 Jacques Marie Mage

 

 

 例えば、レイモンド・ローウィ。彼は工業デザインの巨人です。実は彼の作品が私達のブランドのコーポレートアイデンティティを包括したのです。彼の具体的な作品ですか?挙げればきりがないです。ラッキーストライク、ペンシルバニア鉄道、スチュードベーカーにリンカーンのコンチネンタル——。

 

 彼が創作したものには美学が息づいています。また、シンプルな魅力と効率性も美と同じように取り扱われています。実はローウィは生来の自信家で楽観主義だったという話があります。でもそこから前進するモーション、モチベーションを生み出し、まばゆい光を放ちながら20世紀半ばのアメリカの理想主義を具現化してしまったのです。

 

 圧倒的にテンポが速くて明るい、将来性に満ちた未来。そんな未来をじっと見つめるために、必要なアイウェア。サーカコレクションは進歩の為の活気あるビジョンを大切にしています。ローウィのように、それは素朴でいて、力に満ちているのです。

 

 

「LOEWY」について熱く語るジェローム氏。同モデルcol.Vintage Tort ¥69,000 Jacques Marie Mage

 

 

——今季のオススメのモデルとその理由を教えてください。

 

 ではふたつ、お気に入りのモデルをご紹介したいと思います。ひとつめは「AKIRA」。日本では知らない方はいないはず。映画監督の巨匠・黒澤明氏にインスパイアされました。このモデルはレンズがユニークな楕円形で、私たちはこれまでこういったタイプのレンズ構造を詳しく検証したことがあまりありませんでした。非常にバランスが良いモデルで、JMMのコアプリンシパルを強く表しています。

 

 

黒澤明監督に敬愛の念を込めて製作された「AKIRA」。左上から時計回りに、col.Tokyo Tort ¥63,000 /col.Moss ¥63,000 /col.Clear ¥69,000 all by Jacques Marie Mage

 

 

 ふたつ目は「Loewy」!これぞ真のプロダクト、真の製造と呼べる力作です。(日本の)ファクトリーで、二段階に分けた特殊なマシーンカットを施した上、職人による入念な手磨き、さらなるカッティングによって非常にシャープなアングルを持ちつつもボリューミーな素晴らしい逸品に仕上がりました。この40年代を感じさせるレンズシェイプ、大胆なボリュームが本当に大好きなんです。

 

 

レイモンド・ローウィへのオマージュモデル、「LOEWY」col.Lava ¥84,000 Jacques Marie Mage

 

 

——ブランド創設5周年を前にして、今後の展望を教えてください。

 

 5周年を記念して、コレクティブかつユニークな限定サングラスをリリースします。コンセプトは日本の匠の技の伝統を祝うこと。デザインもこの特別なコンセプトを反映しています。ですが、このインタビューが公開される頃にはもう手に入らないかもしれません。世界50本限定という少量数なのです。春にはさらにユニークなデザインコンセプトを発表するつもりです。それは、私たち独自のフランス・カナダ系アメリカ人の伝統を祝うものです。

 

——あなたにとっての「ラグジュアリー」とは?

 

 私自身にとって、ラグジュアリーは次の3つといえるでしょう。第一に、最も重要なことはクラフツマンシップ、つまり素晴らしいものを創り出したいという純粋な願望なのですが、ここには世代を渡り、この伝統を、この技術を、伝承していこうという想いもあります。だからこそ次の世代がそれを体験できるのです。

 

 ふたつ目は、歴史的インスピレーション。伝統と革新の間にはいつも緊張があります。古えの難しく、されど豊かな考えを現代的なコンセプトに変換していき、私たちが知っている歴史とイノベーションを新しい世代へ紐付けるのです。

 

 3つ目は、非常に優れていて、なおかつ稀少であること。私たちは、収集するに値する、ラグジュアリーな体験を生み出すモノを作っています。少量数にはなりますが、これからも選りすぐりのプロダクトを皆さんにお届けします。インタビューありがとう。これからもJMMをよろしく!

 

 

なぜ足元はいつもVANSのスニーカーなのか尋ねると、ジェローム氏は「どこにいてもカリフォルニアを感じられるから」と答えた。上記2点の写真で着用のサングラスは、「LOEWY」col.Vintage Tort ¥69,000 Jacques Marie Mage

 

 

OBJ osaka(オブジェ・オーサカ)

大阪府大阪市西区北堀江1丁目9-14

TEL.06-6533-0066

www.obj.co.jp

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