OBJ Osaka
Takashi Ryushima Interview
柳島崇志氏が語る
OBJの現在
August 2021
クリア系生地の台頭が目立つ今、オススメのカラーリング。ベージュや生成色はよく見かけるが、こちらはありそうで無かったクリアカーキ。もともと馴染みの良いカラー系統なのでフォーマルスタイルにもカジュアルにも幅広く活躍する。ミリタリーテイストのアイテムとも相性が良い。外枠のカッティングがオクタゴンのようだが、レンズはウェリントン。こういった差分が面白い印象作りに一役買ってくれる。「TUCKER (Asian Fit)」¥ 41,800 Barton Perreira
スタッフの女性はパティ氏ととても仲が良いそうで、私がメガネを購入したお礼に彼女を呼んでくると言い出したのです。私は冗談だろうと思いましたが数分後にはパティ氏がショップに現れました。そして彼女は初めて会った私をすぐ近くの自宅に招き入れてくれて、そこで色々な話をしてくれました。とても気さくな彼女のおかげで、もともと好きなブランドだったのですがさらにファンになりました。「隣にはロバート・ダウニー・Jrが住んでるのよ」と彼女が言い出したので、もしや彼も呼んでくれるかなと思ったのですが、浅はかでしたね。さすがに来ませんでした(笑)。
しばし談笑した後、彼女はアボットキニーの街を案内してくれました。店内のフロアが浜辺のように砂地になっている素敵なアクセサリーショップや、70’sのヒッピーのように自由な雰囲気が溢れる心地よいカフェなど、色々と案内していただきました。最後に、確か地下の駐車場のような大きなガレージに連れていかれたので、ドライブにでも行くのかと思いましたが、予想は見事に外れました。
ガレージの隅、車2台分ほどのスペースに、バリケードのように金網が貼られています。薄暗い中、ぼんやりとその一角だけが輝いており、中でふたりの男性がハットを作っていました。パティ氏は彼らとハグをして何かを話した後、私にハットの製作風景を見せてくれると言いました。そして、おそらく製作途中であろうひとつのハットを取り出すと、テーブルの上で突如として火を放ちました。なんとも驚きましたが、その炎はガレージの中で一際輝いて、とても綺麗だったのを覚えています。
炎はすぐに消え、彼らはハットにバンドを巻き、そこに1本のマッチ棒を差し込んで「これで完成だ」と言ったのです。安直な表現かもしれませんが、めちゃくちゃ格好良かったんです。思った以上に高額だったそのハットは、私には買えませんでしたが、良い思い出です。パティ氏には本当に感謝しています。
この話には続きがあって、オブジェでも取り扱っている2015年にスタートしたLAのアイウェアブランド、ジャック・マリー・マージュ(以下JMM)が、その工房にいたクラフトマンとコラボレーションするというのです。JMMのデザイナー、ジェローム氏に詳細を聞いてみると、ハットメーカーのニック・フーケ氏とのジョイントだそうです。ニック氏はあの時に火をつけていた男性です。10年の間隔を空けて、こんな事につながるとは思ってもいませんでした。そしてこれはつい最近知ったのですが、あの時もうひとりいらっしゃったハットメーカーのグレゴリー・ウエストブルック氏は、2016年に他界されていました。大変残念です。この場を借りてご冥福をお祈りします。
ニック氏は今やアボットキニーに立派なお店を構え、さまざまなセレブリティを顧客に抱える存在です。彼のセンスとJMMの世界観の融合は、間違い無く素晴らしいものになると言いきれます。元々限定生産にこだわるJMMのプロダクトですが、今回のコラボレーションはさらに数が少なくて日本には数セットしか入荷していません。貴重な彼らのサングラス、興味のある方にぜひ手に入れていただきたいですね。
カリフォルニア拠点のハットメーカーとのコラボレーション。大振りなティアドロップはハットとの取り合わせを考えたシェイプ。ブリッジに入ったストライプとキーホールがレトロな印象。左のカラーは「LAVA」で、赤みを含んだ茶デミ柄のフレームに、三層に分かれた鮮やかなレンズカラー。ベニスビーチのサンセットを連想させるとても美しい仕上がりだ。 右の深い青色を基調としたカラーは「SOLID GREEN」で、夜明け前をイメージ。レンズ下部に砂浜をイメージさせるベージュが見える。ともに100本限定生産。「P.C.H」各¥90,200 Jacques Marie Mage × Nick Fouquet