LA DOLCE VELOCITÀ—FERRARI AMALFI

甘美なるスピード — フェラーリ アマルフィ

November 2025

至宝といわれるV8エンジンを搭載した最新の跳ね馬は、欧州有数の美しさを誇る海岸の名前を冠されていた……。モータージャーナリスト九島辰也がリポートする。

 

 

text tatsuya kushima

 

 

FERRARI AMALFI (フェラーリ アマルフィ)

“la nuova Dolce Vita”というコンセプトで、「甘い生活」を新解釈して誕生したローマ。そしてそれをさらに進化させたのがこのアマルフィとなる。フロントエンジンと+2シートのパッケージングだ。全長×全幅×全高:4,660×1,974×1,301mm エンジン:3.9L V8 ツインターボ 最高出力:640ps/7,500rpm 最大トルク:760Nm/3,000-5,750rpm 0–100km/h加速:3.3秒 ¥34,180,000~ Ferrari

 

 

 

 フェラーリからアマルフィというネーミングのモデルが発表された。ヨーロッパでも有数の美しいエリアとされるアマルフィ海岸をイメージしたものだ。その一部は世界遺産にもなっているから、知っている方は多いだろう。読者の中にもすでに何度も足を運んでいるイタリア好きは多くいらっしゃるに違いない。ナポリからさらに南に下ったサレルノという町の近くにある。

 

 日本での発表は7月30日。東京・浜離宮恩賜庭園を望むウォーターズ竹芝で行われた。マラネッロ本社からプロダクトマーケティングの責任者エマヌエレ・カランド氏を迎えてのお披露目となった。

 

 ただ、個人的にはそれよりおよそ1カ月半早くマラネッロの本社の一角にあるスタイリングセンターで実車を目にしている。限られたメディア関係者だけを世界中から集めた発表会だ。マーケティングと販売を担当するエンリコ・ガリエラ氏、技術部門のジャンマリア・フルジェンツィ氏、デザイン部門の最高責任者フラヴィオ・マンゾーニ氏の3名によるプレゼンテーションとQ&Aだ。目を引いたのはマンゾーニ氏。いつもおしゃれな彼には自然と目が止まる。この日もグレーのスーツが絶妙であった。

 

 

イタリアで行われた発表会にて

F169MMのコードネームでローマの後継として開発されたアマルフィ。ネット上では随分前からこの名前が噂されていただけに、マラネッロでのアンベールの際には、「みなさんもう知っていらっしゃるでしょう」と少し微笑みながらアナウンスされた。とはいえ、この美しいボディとネーミングに世界中のメディアはうっとりした。

 

 

 

 それはともかく、アマルフィはローマの後継としてリリースされた。ローマの完成されたフォルムはそのままに、さらに進化させたといったイメージだ。とはいえ、フロントと左右のガラス以外はすべて新開発。オリジナリティが高いのはいわずもがなだ。フロントグリルやバンパー類が個性を放つ。また、可変式リアスポイラーも元のデザインを壊さずエアロダイナミクスを向上させるよう配慮された。フラヴィオ・マンゾーニ氏はこんなことを言っていた。

 

「不要なデザインを排除し、最小限のラインを残した。なぜならアマルフィを可能な限りピュアでシンプルなものに仕立てたかったからだ……」と。

 

 

デュアルコックピット型ダッシュボードには最新のインターフェイスが装備される。ドライバーの前には15.6インチ、センターには10.25インチ、助手席には8.8インチのモニターを用意。ステアリング上にはプッシュ式のスタータースイッチが復活した。オプションシートにはマッサージ機能が付く。

 

 

 

 パワーソースは3.9リッター V8ツインターボで、最高出力はローマ+20馬力の640馬力を発揮する。純粋な内燃機関は駆動用バッテリーやモーターは搭載しない。エンリコ・ガリエラ氏曰く、「それぞれのカテゴリーに最適なものを提供する」のだそうだ。要するにフェラーリにとって電動化は、SF90をご覧いただければわかるように、サーキット走行を考えた上での高出力を捻出するアイテムとなる。

 

 アマルフィに積まれるのは、F154と呼ばれる型式のエンジンの最新版で、シリンダーの軽量化からターボの回転速度の制御まで細かく見直されている。0-100km/h加速3.3秒はかなり速い。+2のパッケージングでもそこは抜かりなし。

 

 それでも日常使いに支障ないのはローマからの流れ。高いパフォーマンスを持っていても普段乗りできるのがこのクルマの美点。ローマが新規ユーザーを獲得したように、アマルフィもまた多くのファンを迎え入れるに違いない。

 

 

シンプルな造形ながらボディサイドの膨らみなどダイナミックなフォルムを描くエクステリアデザイン。グリルのないフロントと目立たないヘッドライトが個性を発揮する。ローンチカラーは“ヴェルデ・コスティエラ”。アマルフィ海岸周辺の海からインスピレーションされた青みがかったグリーンだ。

 

 

 

「The Rake 日本版」Issue66より抜粋