How to Style a Suit This Autumn
この秋参考にしたい、スーツのスタイリング方法
October 2024
一部の意見に反して、スーツは死んではいない。新しいシーズンに向けて再び注目を集めており、スーツのスタイリングを楽しむ絶好の機会が訪れている。レイヤーやテクスチャー、さまざまなアクセサリーを使って伝統的なスーツをさらに引き立てることができる。この秋にスーツを際立たせるためのスタイリングのアイデアをお届けしよう。
text freddie anderson
ここしばらく、伝統的な装いは危機に晒されてきた。トラディショナルなスーツに未来はないと言われたこともあった。ドレスコードがよりカジュアルになり、パーティやレセプションといったフォーマルな場面でもスーツやネクタイを身につける人は減少していた。しかし、時代の流れは変わりつつある。スーツをよりリラックスしたスタイリングで着こなす術が注目され始めている。
伝統的なスーツとさまざまなカジュアルアイテムをミックスするのに最適な季節があるとすれば、それは秋である。カレンダーには多彩なイベントが並び、さまざまなスーツスタイルを自由に組み合わせる機会が多く存在するからだ。
左:約3年ぶりにイングランドに帰国したウィンザー公爵夫妻。エドワード・ダドリー・メトカーフ少佐のサセックス州アッシュダウン・フォレストにあるカントリーハウス、コールマンズ・ハッチにて(1939年9月13日)。右:ピアノの弾き語りを披露するナット・キング・コール。ロサンゼルスにて(1951年12月13日)。
英国の俳優オリバー・リードと、アメリカ人実業家ブルート・プロダクションのジョージ・バリー(1978年)。
フィアットの元会長で「THE RAKE」と呼ばれた洒落者、ジャンニ・アニェッリ。ニューヨークにて(1975年5月5日)。
デニムはいつの時代も自己表現の重要な手段であり続けてきた。デニムが合わない色、柄、素材はほとんどない。ラルフ・ローレンが示しているように、テーラードとの相性も抜群である。昨今のピッティ・ウオモでは、スーツにデニムシャツを合わせているスタイルが多く見られる。デニムシャツを使うことで、スーツによりリラックスした表情を加えることができる。これにシルクのニットタイを合わせると完璧だ。
「スプレッツァトゥーラ(気負わないスタイル)」の典型として知られる故ジャンニ・アニェッリは、グレーフランネルのスーツにデニムシャツを合わせたスタイルで有名だった。ヨーロッパで重要なビジネスミーティングに出席するなら、アニェッリのスタイルを模倣することで、交渉の成功率を高めることができるだろう。
よりラギッドなルックを求めるなら、スーツの下にデニムのウエスタンシャツを着てみてはどうだろう。イタリアのブランド、バルバネーラのセルジオとセバスティアーノ兄弟は、スーツにデニムシャツ、ネクタイ、カウボーイブーツを合わせて、魅力的なスタイルを作り上げている。
デヴィッド・ローレンとTHE RAKEファウンダーのウェイ・コー。
適切なアイテムと組み合わせれば、よく仕立てられたピンストライプのスリーピーススーツに匹敵するものはない。ピンストライプのスーツには「バンカー」のイメージがあるが、イーストエンドのギャングやスポーツ選手(ジェシー・オーエンス=アメリカの男子陸上競技選手、1936年ベルリンオリンピック金メダリスト)、アメリカ西部開拓時代にも愛用されてきた。だから、躊躇せずに着こなしてほしい。
職場では、スーツの成熟した印象を壊さないためにも、ブラウンの靴ではなく、英国ノーサンプトン産のブラックオックスフォード、ブローグ、マスキュリンなローファーを選ぶべきだ。エドワード・グリーンのピカデリーローファーは、ロンドンのリンカーン法学院の弁護士やメイフェアのヘッジファンドマネージャー、ロイズ・オブ・ロンドンのアンダーライターに愛用されている。
ピンストライプスーツに白シャツは定番の組み合わせだが、ピンカラーやタブカラーシャツを選び、ペイズリー柄などのシルクタイで遊び心を加えてほしい。クラシックなピンストライプスーツのトラウザーズにはベルトループがないことが多いので、ブレイシズを合わせる楽しみがある。
ピンストライプスーツにスリムなタートルネックセーターを合わせると、そのフォーマルさを上手く和らげることができる。ロックンローラーに愛されたロンドンの伝説的なテーラーである故エドワード・セクストンは、ダブルブレストのスーツの下にタートルネックをよく合わせていた。
秋になると、故トム・ウルフ(アメリカの小説家・ノンフィクション作家・ジャーナリスト。白いスーツを愛用していた)でない限り、スーツはチャコール、ネイビー、ブラックといった濃いトーンに移行する。しかし、すべてを地味にする必要はない。秋こそ、暗めのスーツに華やかなシャツを合わせる絶好の機会だ。
赤は合わせるのが難しい色ではあるが、色のバランスを慎重に考えることで劇的な効果を生むことができる。信頼できるシャツメーカーから選ぶのがおすすめだ。イタリアのシャツ作りの名門コルドネ1956は、その点で失敗しない。彼らの赤いフランネルのSpinaシャツは、クラシックでありながら楽しい色のコントラストをスーツに加えることができ、ネクタイの有無に関わらず着用できる。
スーツをアクセサリーで引き立てる力は決して小さくない。シルクのポケットチーフをきれいに折りたたむと洗練された印象を与えるし、シルクのスカーフも同様だ。しかし、別のアプローチとしてスニーカーを合わせるのも一つの手である。スニーカーは私たちの生活に欠かせないものとなっているが、テーラリングとの組み合わせは、ファッション愛好家にとって頭を悩ませるテーマだった。かつては禁じられたこの組み合わせが、今では一般的なスタイルとなっている。ただし、全体として調和が取れていないことが多い。あまりに細身のスーツパンツに、白くて厚底のスニーカーを裸足で履いているスタイルはよく見かけるが、それは見苦しく、決してうまくいかない。厚底やプラットフォームのスニーカーは避けるべきである。秋に合う唯一のスニーカーはレトロなスタイルのテニスシューズだ。さもなければ、ベルジャンスタイルのスリッパも選択肢として考えることができるだろう。