9 COLLAR STYLES AND HOW TO WEAR THEM

9つの襟型とその着こなし方

January 2022

あなたが何者かを物語るのは“顔”だ。ということは、顔を縁取るシャツのカラー(襟型)は、紳士の着こなしにおいて最も重要なものといえるかもしれない。

シャツ・カラーに欠かせない9つのスタイルとその着こなし方について詳しく紹介する。

 

 

by CHRISTIAN BARKER

 

 

 

グレイスーツのインナーにストライプのボタンダウンシャツと赤いネクタイを着用し、サングラスで仕上げたポール・ニューマン。『新・動く標的』(1975年)より。

 

 

 

スプレッド・カラー

 

 襟元に広がりのあるシャツ・カラー。マイルドなセミ・スプレッドから、極端なカッタウェイ・スタイルまである。顔の幅が狭い人に特に似合う。馬面や尖った顎の影響を軽減する効果がある。一般に、スプレッド・カラーにはボリュームのあるウィンザーノットが必要だとされているが、そうともいえない。

 

 例えば、スタイリッシュなスプレッド・カラーの愛好者としてチャールズ皇太子があげられるが、彼がそのファミリーネームを冠した結び方をしているところを見たことがない。またラルフ・ローレンは、この種の襟にはタイトなフォア・イン・ハンドが似合うことをよく証明している。

 

 

2009年、ロイヤルアスコットに出席したチャールズ皇太子は、ライトグレイのモーニングコートとウエストコート、ブルーのターンブル&アッサーのシャツに白いスプレッド・カラー、ライラック色のネクタイを着用し、ネクタイピン、ポケットチーフ、トップハットをアクセサリーとして身に着けている。

 

 

 

ポインテッド・カラー

 

 スプレッド・カラーが面長な男性に似合うように、その対極にあるポインテッド・カラーは、卵型や丸型の顔立ちの男性に効果的だ。下向きのラインが錯覚を起こし、たるみや二重あごを目立たなくする効果がある。

 

マーティン・スコセッシ監督のギャング映画『グッドフェローズ』(1990年)に登場するポーリー・シセロは、ポインテッド・カラーが着やせ効果に優れていることを示す好例である。

 

 

 

ボタンダウン・カラー

 

 ボタンダウン・カラーは、過去100年以上にわたってアメリカの“アイビースタイル”の人たちに愛用されてきた。また、“ザ・レイク・オブ・リヴィエラ”と呼ばれたジャンニ・アニェッリが愛用したことから、レイキッシュな男たちの間でも絶大な人気を誇っている。

 

 ポロシャツといえば、一般的にコットンニットの襟付き半袖シャツを指すが、実はボタンダウンはポロシャツの原型である。20世紀初頭、ブルックス ブラザーズのジョン・E・ブルックスが、英国旅行中に英国のポロ選手が着ていた同様の留め襟の服を見て、米国で普及させた。

 

 ボタンダウンは、伝統的なレップタイやクレストタイ、あるいはシルクニットのネクタイと相性がいい。アニェッリがしていたようにボタンを外すと、リラックスかつクールな雰囲気を出せる。

 

 

 

 

 

キャンプ・カラー(オープン・カラー)

 

 近年、デザイナーに絶大な人気を誇るのが、ハワイアン・シャツやボウリング・シャツで知られるキャンプ・カラーだ。その名の由来は、ジョン・ウォーターズ監督の映画のような得体のしれない“キャンプっぽさ”ではなく、アウトドア・ウェアであることによる。

 

 夏のピッティでは、ブレザーにドレスシャツを着てネクタイを締め、汗だくになることに嫌気がさした男たちに人気であった。キャンプ・カラーのシャツをジャケットに合わせるなら、襟をジャケットのラペルの上にかぶせ、1940年代のリゾートシックな雰囲気を演出してみよう。

 

 

アーネスト・ヘミングウェイとゲイリー・クーパーは、1956年、キューバのハバナで、同じ白いキャンプカラーシャツを着ている。

 

 

 

ピン・カラー

 

 カラーピンは最近ではあまり見かけなくなったが、昔はそうではなかった。ニューヨークの著名な服飾評論家、アラン・フラッサーによると、おそらく紳士服史上最高の時代だった1930年代には、およそ50%の男性がカラーピンを着用していたそうだ。

 

 襟の高さを上げ、タイを持ち上げてボリューム感を出すピンド・カラーは、フレッド・アステアやゲイリー・クーパーなど、我々がお手本にしたいアイコンが好んで着用していた。広がりのない、小さくてタイトなノットが好まれるスタイルだ。

 

 

TVドラマ『マッドメン』でジョン・スラッテリー演じるロジャー・スターリングは、伝統的な白のクラブ・カラーのビジネスシャツにカラーピンをつけ、細いシルクのネクタイを高々と掲げている。

 

 

 

タブ・カラー

 

 基本的にポインテッド・カラーのシャツに、カラーバー(ネクタイの下でボタン留めする2枚の布からなる)を内蔵したもの。ネクタイの結び目を強調しながら、ふたつの襟元を引き締めるが、カラーピンに比べると派手さは控えめだ。

 

 タイピンやタブ、ボタンダウンなどで、長く尖った襟を押さえることで、尖った顔立ちやゴツゴツしたフェイスラインを和らげることができる。また、ネクタイを一日中、完璧な位置に保つことができる。英国のテーラー/デザイナー、エドワード・セクストンは、タブやピンの使い方に長けている。

 

 

映画『パルプ・フィクション』(1994年)で暗殺者ジュールス・ウィンフィールドを演じたサミュエル・L・ジャクソンは、白いタブ・カラー・シャツに、しっかりとした結び目のネクタイを着用した。

 

 

 

ウィング・カラー

 

 最もフォーマルな襟のスタイルが、このウィング・カラー(これに次ぐのが役員室向けのスプレッド)だ。昔はディナースーツにしか合わせられなかったが、最近ではデニムなどのリラックスした素材のものもあり、カジュアルなシーンでも使われるようになってきた。

 フォーマルウェアに合わせる場合は、ボウタイの蝶結びの端が襟からはみ出さないようにするのが伝統的だと言われている。

 

 

アラン・ドロンとジャン=ポール・ベルモンドは、ブラックタイのイブニングウェアにウィング・カラーのスタッズシャツを着ている。映画『ボルサリーノ』(1970年)より。

 

 

 

カラーレス

 

 デタッチャブル・カラーの時代を彷彿とさせるノーカラーシャツ(台襟のみ)は、最もカジュアルな選択肢だ。かつては、仕事着を脱ぎ捨て、家族と一緒にいたり、畑を耕した後などにくつろいでいる様子を表した。ボタンを外して胸毛を少し見せると、マスキュリンでセクシーなスタイルになる。

 

 ジャケットと合わせる場合は、シャツのボタンを一番上まで留めることをおすすめする。さもないと襟がラペルより下に沈んでしまうおそれがあるのだ。

 

 

ケーリー・グラントは、『孤独な心』(1944年)で葉巻を吸いながら、グランダッドまたはマンダリン・カラーとも呼ばれるカラーレス・シャツを着用している。

 

 

 

クラブ・カラー

 

先端が小さくカーブしており、ここ10年で復活を遂げたが、まだ希少な存在。そのため、他と差をつけたい男性にはぴったりな選択肢である。ローリング・トゥエンティーズのデカダンス、華麗なるギャツビー的な華やかさがあり、上級ダンディーのためのアイテムである。

メンズ・ファッションに精通した服飾評論家G・ブルース・ボイヤーは、「顎を剃り、糊付けした丸襟で、大きなドットのネクタイを締め、クリーム色のスーツとフェドラ帽をかぶっているトム・ウルフを考えればいい」と語っている。

 

 

ロバート・レッドフォードのコントラストが効いたクラブ・カラーが、の淡いピンクのスリーピーススーツを引き立てている。『華麗なるギャツビー』(1974年)より。