EVER THE TWAIN

世界のファッショニスタに学べ
アンディ・ポーパート&ミシェル・フリー

Wednesday, May 5th, 2021

このふたりのことはインスタグラムのstyleafter50というハンドルネームでご存じの読者もいるかもしれない。

Z世代には見るものすべてがインスピレーションになるだろう。

世界が欲したのは、シニア世代のインフルエンサーだったのだ。

 

text nick scott

translation wosanai

 

 

Andy Poupart & Michèle Free

アンディ・ポーパート&ミシェル・フリー夫妻

カリフォルニア州サンノゼ在住。ソフトウェアエンジニアのマネージャーであるアンディとイベントマネージャーの肩書きを持つミシェル。インスタグラム(@styleafter50)では、多彩なイヴニングスタイルも公開されており、どれも参考になるものばかり。

 

 

 

「アカデミー賞は、常に注視してきました。しかし私にとって一番重要なのは、賞よりもレッドカーペットです」と語るアンディ・ポーパートは、ソフトウェアエンジニアのマネージャーである。

 

 シリコンバレーのソフトウェア業界で正装といえば、トラックパンツかジーンズなのだが、彼はそういった文化にはあまり馴染めなかったようだ。思いがけない転機が訪れたのは、首からテープメジャーを垂れ下げた人との会話ではなく、消毒液の香りがする部屋で聴診器を首から下げた人との会話だった。ポーパートはこう続けた。

 

 

 

左:「これは母が以前よく着けていたものを、友人であるダラスに住んでいるジュエラーにコピーしてもらいました。3つ作って、ひとつが私、他は姉妹が持っています。換えの利かないセンチメンタルな価値があるものなんです。洋服にピンを通すのが苦手なので、特別にバヨネット式で取り付けられるようにしてもらいました」/右:「このジャケットはエドワードにお願いした2着目のものです。エドワード セクストンとThe Rakeがコラボレーションしたジャケットをビスポークしました。基本的に私が所有しているものはソフトでドレープがきいているものが多いです。かつてワードローブを一新したときにすべてエドワードに任せようと決めました。カッティングが特に気に入っています。すべてが特別な経験でした。初めて彼に会ったとき、彼はセイジグリーンのリネンのスーツを着ていました。私も彼ぐらいに歳を重ねたとき、スタイルを持ち、そしてカリスマ的なオーラを纏いたいと思いました」

 

 

 

「8年くらい前に定期健康診断で、血糖値の数値が非常に悪いと知りました。ドクターからもこの数値が続くと非常にまずいよ、と言われ一発奮起してダイエットに励みました。その結果ものすごく痩せたのです。着る服が全くなくなってしまい、ワードローブを一新することになりました。そのとき、サヴィル・ロウでスーツも新調しました。それがよかったのか悪かったのか、一度素晴らしいビスポークの経験をしてしまうと、もう元には戻れない。次はシャツが必要だ、ポケットスクエアはどれだ、ネクタイはどうだ、という感じでドップリです。まるでウサギを追いかけて穴にダイブした少女のような気分です」

 

 愛娘に促されるがままに始めたインスタグラム、そしてそこに投稿される写真で世界中のファンを獲得したこのカリフォルニアに住むイギリス紳士のワードローブは、今では皆が羨むほどの充実ぶりだ(@styleafter50をチェック)。

 

 

左:「このブレスレットはドイツのジュエラーであるウェレンドルフのもの。数年前にイベントで知り合ったこのブランドのCEOが、プロトタイプのものを着用していました。私たちはそれをすごく気に入ってしまい、プロダクションピースが完成したときに早速購入させてもらいました。実際はミシェルが私の60歳の誕生日を祝うプレゼントとしてくれたものです。彼女も似たデザインのものをふたつ所有しています。私たちの人生におけるマイルストーンを記念したものなんです」そしてなんといっても、ブレスレット同様に特徴的な上着のカフにも注目したい。/右:メゾン ミシェルの名を聞いたことがないという方のためにお伝えしておこう。1936年からパリに続くミリナリーだ。彼らの作るハットは美しく仕上げられ、洗練されている中にすこしのひねりがきいているものが多い。写真のものは2020年1月にピッティ ウォモに行く途中でロンドンに寄った際、バーリントン・アーケードにあるアウトレットで手に入れたもの。

 

 

 

 今回の撮影で彼が着てきたのは、端正に仕立てられたジャケットとウィップコードを使ったハリウッド・トップ・トラウザーズ。もう読者の方々には語るまでもないかもしれないが、両方ともエドワード セクストンで仕立てられたものだ。そして彼と同様にスタイリッシュなパートナーは、イベントマネージャーの肩書きを持つ彼の伴侶、ミシェル・フリー。彼女の着ているグレイのフランネルのスーツはキャロライン アンドリューで仕立てたものである。

 

「今回のミシェルの装いはいつもインスタグラムに投稿されているものとはちがうかもしれません。よくカクテルドレスを着ていますから。しかしこういったスタイルも彼女は上手に着こなします。そこまでコンサバティブになりすぎなくていいビジネスっぽい昼の装いも、日が落ちてからの煌びやかな装いも同様にお手の物なのですから脱帽です」

 

 それでは彼らのサルトリアルスタイルをご覧いただこう。

 

 

特徴的なエドワード セクストンのガントレットカフの下にみえるジャガー・ルクルトのレベルソを、目の肥えた読者なら見逃しはしないだろう。荘厳ではなかろうか? このカフは、ショールカラーのディナージャケットを仕立てる際には考慮してみたいアイディアだ。

 

 

左:ジャガー・ルクルトについてふたつばかしここに書き残しておこうと思う。ひとつは、1930年代にイギリス陸軍の軍人たちがポロ競技で使用できるようなタフなものを求めたときに考案されたものであり、且つ精巧でおそろしくエレガントであること。ふたつめは、紛れもないユニセックスであることだ。「お互いのメッセージが彫られたレベルソを双方愛用しております」とポーパート。/右:1930年代から女性がボウタイをエレガントに着用できるようになったことを我々はマレーネ・ディートリヒとキャサリン・ヘプバーンにお礼を言わなくてはならないかもしれない。ピンクがかったパープルのペイズリー柄蝶ネクタイはブルックスブラザーズで買ったもの。グレイフランネルによく似合っている。

 

左:ターンナップスから覗くブーツは、スチュワート ワイツマン。イヴニングの雰囲気が漂う女性的なエレガンスが彼女を引き立てる。「このブーツは歩きやすくて重宝しています。これを履いて参加した2019年の冬のフィレンツェも快適でした」/右:「エドワード セクストンも好きで、よく着ます」と言うミシェルが今回着用しているのはキャロライン アンドリュー。手触りも格別なフランネルはホーランド&シェリーのもの。1836年からロンドンで続く老舗である。

 

 

 

THE RAKE JAPAN EDITION issue38