HOTELS DELUXE Vol.23
ホテル連載 第23回:ホテルが手がけるクルーズ
April 2023
ラグジュアリーホテルがしかける次の一手はクルーズ事業だ。ザ・リッツ・カールトンが昨年業界初となる豪華客船を誕生させたのを皮切りに、名だたるホテルグループも新客船の就航を予定している。これまでのクルーズ業界の概念を覆す、新たな仕様や質の高いサービスに注目だ!
text yukina tokida
<ザ・リッツ・カールトン>
ラグジュアリーホテルブランドとして世界初となる豪華客船が誕生!手厚いサービスに加え海上ならではの食事やアクティビティも満載だ。
ホテルブランドが手がける世界初のクルーズ「ザ・リッツ・カールトン・ヨット・コレクション」の記念すべき一隻目「エヴリマ」。ネイビーと白でまとめられた外観が実にエレガントだ。船首部分にはジムやスパ、最上デッキにはテラスやシガーバーが備わっている。
2022年より就航を開始したザ・リッツ・カールトンの「Evrima(エヴリマ)」は、全149室がプライベートテラス付きのオーシャンビュー。全長190mと比較的小ぶりな船体でありながら、ホテルさながらの広々とした空間で、海上にいることを忘れさせてくれる。船内には、ドイツのザ・リッツ・カールトン ヴォルフスブルクのミシュラン三ツ星レストラン「アクア」監修のダイニングや、プールサイドで楽しめるグリルダイニング、寿司カウンターを擁するアジアンフュージョンレストランやシガーバーなど、5つのダイニングと6つのラウンジが揃っている。
ザ・リッツ・カールトンが誇る質の高いサービスも健在で、その証に、乗客1.2人に対してスタッフ1名がつくという驚異的なスタッフ数を確保。他のクルーズ船と比べてもその差は歴然だ。現在はカリブ海や地中海、バルト海などを巡る5〜13泊のコースが用意されており、2024年の予約もすでに開始している。2025年には、新造客船も仲間入りする予定だ。
船尾のデッキ部分からは直接海へアクセス可能。パドルボードやウィンドサーフィン、カヤックなどのモーターを使わないウォータースポーツ(無料)もここから参加できる。
リッツ・カールトンの名に恥じない上質な空間が広がる「グランド・スイート」(55㎡)のベッドルーム(上)とリビングルーム(下右)、ふたつの洗面台を備えたバスルーム(下左)。最上ランクの客室「オーナースイート」(101㎡)には、55㎡もの広さのプール付きプライベートテラスを擁する。クルーズ船としては珍しいロフトタイプやコネクティングタイプの客室も揃っている。地中海コース(7日間)1名¥1,200,000〜(参考価格)お問い合わせ先 TEL. 0120-142-536
<フォーシーズンズ>
プライベートジェット事業を始動させたフォーシーズンズがクルーズ事業にも参画!4フロアからなる最上級スイートを擁する一隻とは。
カヌー型の丸みを帯びた船尾のデザインが美しい。船内には11のダイニングとバーが備えられる予定。
現在明かされている情報は少ないが、就航は2025年後半、予約開始は今年を予定している「フォーシーズンズ・ヨット」。全95の客室はすべてがスイートルームで、広さは平均54㎡、1室あたり420万米ドル(およそ5億円!)をかけてつくられる。全乗客が利用できるふたつのマリーナ(いわゆるプール)のうち、ひとつは船の中央部に、しかも27mの船幅いっぱいに備えられるという。
最も驚くべきは、最上デッキに位置する「ファネルスイート」。なんと全面ガラス張りの、4フロアからなるスイートルームだ。総面積およそ892㎡の空間には、プライベートプールや専用のスパエリアも設けられる。業界初の試みが随所にちりばめられているのだ。今後解禁される詳細からも目が離せない!
最上デッキに位置するのが4フロアからなる最上クラスの「ファネルスイート」。階下の他のスイートとも繋げられるという。
この「フォーシーズンズ・ヨット」第一号は、世界有数の造船会社フィンカンティエリ社によって、現在イタリアのトリエステで造られている。外装とスイートルームの設計はスウェーデンのティルバーグ・デザイン、船内の主要部分はロンドンのマーティン・ブルドニスキー・デザインスタジオといった、これまでも数々の高級ホテルを手がけてきた会社が担当する。
あの“オリエント・エクスプレス”からも豪華客船が登場!
世界中の人々が待ちわびていたオリエント急行の復活だけでなく、2024年にはローマとヴェネツィアでのホテル開業を予定している「オリエント・エクスプレス」が、夢のような豪華客船をも誕生させる。船の名は「オリエント・エクスプレス・シレンシア」。全長220mの船体には、530㎡のプライベートテラスを擁する1,415㎡もの広さのプレジデンシャル・スイートをはじめ、平均70㎡の54室のスイート、ふたつのプールやレストラン、バーが作られる。何よりもアイコニックなのは、高さ100m以上になるという3本の帆だろう。最新技術の「ソリッドセイル」を用いることにより、風力発電と液化天然ガスを組み合わせた環境に優しいエンジンを完成させるという。就航は2026年を予定している。