FERRARI PORTOFINO M

日々、別世界へ:フェラーリ ポルトフィーノM

September 2021

リゾートへの思いが募るばかりな昨今こそ、そのステアリングを握るだけで地中海のリヴィエラへと連れていってくれるクルマに身を預けたい。

 

 

text tatsuya kushima

 

 

Ferrari Portofino M(フェラーリ ポルトフィーノM)

フェラーリGTカーの伝統を継承するモデル。2+シートでリアに子供を乗せ家族での旅を可能にする。屋根の開閉はスイッチひとつでOK。オープンエアを楽しめる。エンジン:3.9リッターV8ターボ/最高出力:620cv/7,500rpm/最大トルク:760Nm/5,750rpm/全長×全幅×全高:4,594×1,938×1,318mm/乾燥重量:1545kg/ギアボックス: 8速デュアルクラッチ/0-100km/h加速:3.45秒/最高速度:320km/h ¥27,370,000 〜Ferrari

 

 

 

 海外渡航を控えなくてはならない昨今、リゾートへの想いは募るばかり。ケータイに保存している2019年までの写真を見直して懐かしむことも多々あるのではないだろうか。これまで当たり前だと思っていたことができなくなって久しい。

 

 そんなおり、フェラーリから新型車がリリースされ、そのステアリングを握る機会を得た。写真のポルトフィーノM。今年1月にジャパンプレミアされたモデルである。

 

 なぜ冒頭でリゾートの話をしたかというと、このクルマのベースとなったポルトフィーノはその名の通り、イタリア北西部の港町ポルトフィーノで発表されたからだ。時は2017年9月。その週末にはマラネッロでフェラーリ70周年のイベントが大掛かりに行われたのを記憶している。

 

 ポルトフィーノへは何度か足を運んだことがある。ジェノヴァからクルマでそれほどかからない場所にある。象徴的なのは小さな入江で、そこに帆をたたんだヨットが停泊され、その周りをカラフルな建物が並ぶ。情景はまさに絵葉書の中の世界。モデル名に数字を羅列することの多いフェラーリだが、このクルマはその意味からも情緒的で、特別な存在である気がしてならない。

 

 

屋根は可動式のハードトップ。クーペとしても、スパイダーとしても楽しめる。

 

 

 

 それはともかく、今回乗り込んだのはそのハイパフォーマンス版として現れた新星。名前の最後に“M”の文字が入っていることを見逃してはならない。“M”はイタリア語の“Modificata”のこと。英語の“モディファイ”を意味する。彼らはこれまでも幾度となくこの文字を使ってきた。

 

 ポルトフィーノMは進化形であり、ポルトフィーノとは違う。走らせてすぐそう感じた。理由は20馬力アップされたエンジンだけでなく、ドライバーに対するすべての所作だ。乗り心地、加速、低速での動き、操作系に対する挙動などナチュラルに仕立てられ、ドライバーを気持ち良くしてくれる。街中でこれだけ滑らかなフェラーリはかつてない。

 

 この走りをハード面から分析すると新開発の8速ギアボックスが貢献していると思われる。単にオーバードライブが一段増えたのではなく、全体を見直しているからだ。彼らはこのクルマを新たに作り変える感覚で手を入れている。要するに、ポルトフィーノMはまったくのニューモデル。フェラーリと生産ラインに何万台も流す自動車メーカーとはそこが大きな違いだろう。

 

 そんなポルトフィーノMの屋根を開け海岸線を走れば気分は地中海ドライブ。似合うのはジェノヴァからカンヌあたりのリヴィエラ(海岸)。妄想はどんどん膨らむ一方である。

 

 

 

ドライバーのアドレナリンを一気に上げるコクピット。ステアリング上には新たに5モードに切り替えられるマネッティーノが設置された。

 

620馬力にパワーアップされたエンジンは、パワフルな走りはもちろん、ヨーロッパの排ガスに対する厳しいレギュレーションをもクリアする優れものだ。

 

 

THE RAKE JAPAN EDITION issue41掲載記事