BENTLEY NEW BENTAYGA EWB

快適さを追求した至高のSUV

January 2023

ベントレーが誇る旗艦SUV「ベンテイガ」に、ロングホイールベース版が加わった。ラグジュアリーはもちろん、ドライバビリティとユーザビリティを兼ね備えた新世代SUVの実力を、自動車評論家・川端由美が試す。

 

 

 

text YUMI KAWABATA

 

 

 

BENTLEY BENTAYGA EWB

ベントレーの最上級SUVとなる「ベンテイガEWB」の外観では、縦桟のグリルと大型楕円の2灯を備えるフロントビューに加えて、ぐっと踏み込んだサイドビューが組み合わされて、力強い存在感を示している。全長×全幅×全高:5,305×1,998×1,739mm/車両重量:2,514kg 最小回転半径:5.9m/エンジン:3,996ccV型8気筒ツインターボ/出力:550ps/6,000rpm/最大トルク:770Nm/2,000-4,500rpm

 

 

 

 カナダの西海岸に位置するバンクーバーに降り立つと、街のそこここに半旗が掲げられていた。コモンウェルスの一員ゆえに、長年、在位した女王への弔慰を示す空気の重さを感じる。同時に、胸いっぱいに澄んだ空気を吸い込む。カナダ第三の都市である一方で、ロッキー山脈を背景にした自然豊かな地域でもあるからだ。氷河を頂く山々からジョージア海峡に注ぐ河口に広がる豊かな地には、有史以前から人類が住んでおり、豊かな水源を背景に林業が盛んで、地域で消費するエネルギーの75%が再生可能である。

 

 英国王室の公用車としてロイヤルワラントを持つベントレーが、最新SUVモデルのロングホイールベース版「ベンテイガ EWB」の試乗ステージにこの地を選んだ理由は、このクルマのコンセプトであるウェルビーイングとラグジュアリーの融合が、自然と都会が近接した豊かなライフスタイルがあるこの地とマッチしたからだ。

 

 歴史ある港湾地区を一望するホテルのエントランスで対面した「ベンテイガ EWB」は、同社の旗艦である「ミュルザンヌ」の後継とも目される最上級モデルだ。最高出力550ps / 最大トルク770Nmもの大出力を発揮する4リッターV8ユニットが搭載されており、今後、電動化に大きく舵を切るベントレーにとって、コンベンショナルなエンジン車のエピローグともいえるモデルだ。

 

 エクステリアは、力強いデザインのグリルと22インチの大径ホイールが相まって、強烈な存在感を放つ。一方で、180mmもホイールベースが延長されたにもかかわらず、リアドアとクォーターパネルのデザインの処理がうまく、総じてエレガントにまとめられている。重厚なドアを開けて、ドライバーズシートに乗り込む。トリムやシート地といった肌に触れる部分の革が上質で、しっとりと身体に馴染む。フロントフェイシアからセンターコンソールまで革やウッドがふんだんに奢られているが、望めばモダーンな内装を選ぶこともできる。2機種用意される中でも、「アズールレンジ」はウェルビーイングに特化した仕様となり、乗り味もより快適に設定されている。180mmも延長されたことで、後席の居住性は格段に向上している。4座または5座の仕様が設定されているが、「4シート・スペシフィケーション」を選択すると、前席だけでなく後席にもセンターコンソールが装備される。

 

 丁寧なステッチが施されたステアリング·ホイールを握り、シフトヘッドをDレンジに入れて走り出す。スタート·ストップの多い町中では、大容量エンジンならではの余裕あるトルクで大柄なボディを優雅に加速する。郊外に向けて舵を切ると、にわかに野性味あふれる走りっぷりが顔を出す。過日、英国のジェントルマン・ドライバーたちに愛されて、レースシーンを席巻した横顔が見え隠れする。その出自を知っていれば、ドライビング・ダイナミクスになんの不服もないのは、当然といえば当然だ。

 

 冬季オリンピックの開催地でもあったウィスラーまで足を延ばして、オフロードでの走行を試す好機を得た。センターコンソール上にあるダイヤルで走行モードを選べば、悪路でもなんなくこなせる。走行モードは、「コンフォート」「B」「スポーツ」に加えて、自由に設定できる「カスタム」が加わる。一般道では、自動で設定がなされるBモードを、高速走行ではスポーツ・モードを、それぞれ選んで走った。さらに、オフロード走行用にオプション設定される「オールテレイン」には4種のオフロード・モードが備わる。

 

 都会を離れて、ひとしきり郊外までドライブしてみたことで、このクルマの魅力をより深く理解できた。ラグジュアリーとドライバビリティは当然のごとく老舗の味わいだが、加えて、近代的なユーザビリティも備わっている。英国を代表する老舗ラグジュアリー・ブランドであるベントレーではあるが、革新的なテクノロジーを取り込みつつ、今の時代に沿った人間の幸せに寄り添うクルマづくりが進められているのだ。

 

 

前席には、20段階調節やマッサージの機能、冷暖房などを備える「フロントシート コンフォート スペシフィケーション」がオプション設定される。

 

 

標準の16色に加えて、44種の特別色から選ぶことができる。

 

 

後席にオプション設定される「エアラインシート スペシフィケーション」を選べば、助手席側のリアシートが大きくリクライニングする上に、フットレストも備わる。シート内のセンサーが温度と湿度を測定して、シート表面の温度を自動で快適に調整する「オートクライメートシステム」やシートクッションを微調整して血流を促す「姿勢調整システム」を搭載する。

 

 

THE RAKE JAPAN EDITION issue49