BARBANERA: INFLUENCES ON THEIR SLEEVE

「私が影響されたもの」
バルバネーラ セルジオ・グアルディ インタビュー

October 2020

イタリアのブランド、バルバネーラを率いるセルジオ・グアルディは語る。自分たちのデザインは、“スパゲッティ・ウエスタン”と呼ばれたイタリア生まれの西部劇映画に、大きく影響を受けたと……。

 

 

by christian barker 

 

 

 

 

 シチリア人の兄弟であるセルジオとセバスチャン・グアルディが、8年前にメンズウェア・ブランドを立ち上げた時、彼らは“真実と文化”を体現するという使命感を持っていた。

 

 彼らの信じるカルチャーをミックスし、それを具現化させるレーベルを設立したかったのだ。

 

 ロックミュージック、ダンディズム、クラシック・イタリアン・テーラーリング、アメリカのオールド・ウエスタン、ビートニクなどを、オーセンティック・ファッションとしてまとめるのだ。

 

「私たちは自分たちの価値観に忠実でありたいと考えていて、常に自分たちが本当によく知っているものを作ろうとしています」とセルジオは語る。

 

「バルバネーラでは、作るものすべての背後にストーリーがあります。私たちがアイテムに付けたニックネームは、お客様が服の背後にあるコンセプトや、その服が何を表しているのかを理解するのに役立つでしょう」

 

 セルジオは、バルバネーラの大きな特徴である映画からの影響について語っている。デザインは映画にインスパイアされ、アイテムにはそれぞれ名前がつけられている。

 

 

 

 

スパゲッティ・ウエスタン

 

「確かに、ウエスタンは私たちが最も影響されたもののひとつです。しかし、私たちはウエスタン・ブランドとは思われたくない。それは本当のわれわれの姿ではないからです。私たちは、アメリカーナ、ワークウェア、ウエスタンのレプリカ・ブランドにはありません。オリジナルやヴィンテージ、オールドスクールの本物のブランドを買うことができるのに、なぜレプリカを買わなければならないのでしょうか?

 

 “真実と文化”をモットーにしているバルバネーラでは、自分たちが愛している服を単純にコピーすることはしません。もししたとしても、それは本物には成り得ないでしょう。私はアメリカ人ではないし、アメリカは私の生まれた土地ではなく、その文化を生得しているわけでもないですから。それは私が学び、吸収したものです。われわれはウエスタン・スタイルの影響を受けているかもしれませんが、異なる素材を使ったり、フィット感やディテールを変えたりして、すべて自分たちのものにするようにしています」

 

 

「それはイタリア流のウエスタンへのアプローチ……1960年代から70年代の、いわゆる“スパゲッティ・ウエスタン”映画のようなものだと思っています。それらは西部劇でしたが、古典的なアメリカの西部劇のコピーではありませんでした。もっとラフで、もっと暴力的で、もっと道徳的に曖昧な映画でした。アメリカの西部劇では、主人公と悪役がいて、善人と悪人がいて、キレイな髪型でいいジーンズを履いた、ニートな男たちが登場します。スパゲッティ・ウエスタンでは、ヒーローとアンチヒーローの間に、このような明確な区別はありません。主人公は悪役と同じくらいの悪者であることもあります。善と悪の間は、明確には分けられていません。また、衣装も違います。スパゲッティ・ウエスタンでは、みんな脂ぎっていて汚い。しかしその方が、史実としては正確なのです」

 

 

「それが映画におけるイタリア流のやり方でした。私がウエスタンからインスパイアされたものをデザインする時も同じ考え方です。例えば、“エンニオ”と名付けた服は、ウエスタン・ジャケットやトラッカー・ジャケットのようなもので、メキシコでは“バケロ・ジャケット”と呼ばれているものです。とてもスリムで丈が短く、ボクシーなシルエットなので、動きやすいのが特徴です。でも、スエードはアメリカの会社がやっていたような硬いもは使っていません。そこが違いなのです。作曲家のエンニオ・モリコーネにちなんでネーミングしたのは、彼と彼の協力者である監督セルジオ・レオーネは、スパゲッティ・ウエスタンにおいて、最も重要な人物だからです。また、“トリニティ”と名付けたモデルは、ジャンゴ映画シリーズのスターであるテレンス・ヒルが、いくつかの映画で演じたキャラクターであるトリニティから。“バド”と名付けたのは、彼がよく共演しているバド・スペンサーにちなんでのことです」

 

 

 

クリント・イーストウッド

 

「私にとって、クリント・イーストウッドにちなんだブーツの名前をつけるのは自然なことでした。なぜなら、彼はスパゲッティ・ウエスタンというジャンルの中心人物の一人だからです。彼は俳優だけでなく、監督としてもお気に入りなので、モデルにクリントの名前を付けないわけにはいきませんでした。彼は私の文化的成長にとって重要な人物でした。幼い頃、家族と一緒に、父と母と弟とで、夜、ソファでクリント・イーストウッドの名作映画を観ていたのを覚えています。私たちにとって、それは一種の儀式でした。父はグラスに入ったウイスキーを飲んでいました。父はときどきグラスの中に親指を突っ込んで、私たちになめさせてくれるのです。母が父に“何をしているの!”と怒鳴っていたのをよく覚えています」

 

 

「クリントの名を冠したブーツを作りましたが、実際はウエスタンブーツではなく、ワークブーツなんです。しかしワークブーツでありながら、形はがっちりしておらず、クラシックなワークブーツよりも足首までしっかりにフィットしています。レッドウイングのブーツをコピーして作っても無駄だし、レッドウイングはすでに存在しているのだから、同じ靴を作る必要はないでしょう。確かにクラシックなアメリカのワークブーツの影響を受けていますが、私は違うものを作りたかったのです。このブーツを履いてハイキングに行ったり、川に入ったり、実際に戦争をしに行ったりすることもできます。とてもストロングでタフですから。しかしデザインはちょっと変わっている……これがバルバネーラの精神なんです」

 

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