Encounter of Thai and Japanese Cuisine: A Delightful Fusion
日本料理にタイのエッセンスを融合。稀代の美食家がてがける「美会(ビア)」とは
June 2023
2020年に鮮烈のデビューを果たしたフュージョンガストロノミー「美会(ビア)」。日本料理とタイ料理という、相反するように思えるふたつを組み合わせたイノベーティブな料理は美食家たちを魅了してやまない。昨年さらなる進化を目指し六本木に移転した同店の魅力を、グルメジャーナリストの東龍がレポートする。
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写真のカウンター席の他、8名まで座れる個室もある。カウンター正面のデザインはタイの寺院がモチーフとなっている。©️美会
美食の世界でカウンターガストロノミーが存在感を高めている。フレンチやイタリアンはもちろんのこと、スペイン料理や日本料理でもカウンタースタイルの良店が次々と誕生しているが、食通から今最も熱い視線を注がれているのが六本木の「美会(ビア)」だ。
稀代の美食家であるタイ人のビア氏が、自身の理想を形にすべくオープンしたイノベーティブレストラン。日本国内の食材にこだわっており、自ら一流店に訪れることによって築き上げた人脈を通して、上質な食材を仕入れている。2020年銀座に開業して好評を博し、さらなる進化を目指して2022年3月28日に六本木へと移転した。
料理長を務めるのは、日本料理の名店で研鑽を積みながら、タイ料理も知悉する草場弘之氏。ビア氏による監修のもと、スパイスやハーブをふんだんに使い、酸味や甘味を重ねるタイ料理と、旬や鮮度を大切にし、引き算で食材の魅力を引き出す日本料理を見事に掛け合わせ、タイ料理×日本料理という新しい世界を開いた。
同店唯一のメニューである26,500円のおまかせコースは、日本とタイのエッセンスが凝縮された珠玉の約10品で構成されている。
シグネチャーディッシュは、世界3大スープのひとつであり、日本でもポピュラーな「トムヤムクン」。日本料理の出汁がベースになっているので、ピリ辛さの中にも、慎ましやかな滋味が感じとれる。タイでポピュラーなオニテナガエビは、日本で温泉水によって養殖されたという希少なもの。コブミカンの葉、タイ生姜、レモングラスが適度に利いており、鮮烈な香りが鼻腔に広がる。
季節によって食材が変わり、取材時の「トムヤムクン」はキンキ、蛤、オニテナガエビ、大黒シメジといった旬材が見事に調和していた。©️美会
ほかの定番メニューも個性的だ。「河豚 朝天辣椒 八角 山椒」には2種類の唐辛子と八角や山椒が用いられていて、心地よい刺激。スパイシーな香りが食欲をそそるだろう。河豚は骨付きなので、その周りの肉は非常にジューシーで妙妙たる味わい。手に持って豪快に堪能するのがオススメだ。
「河豚 朝天辣椒 八角 山椒」は、フライドチキンのごとく、スパイシーな味付けでカリッと揚げられた河豚をいただく一品。©️美会
「フカヒレ タイ薬膳」は、天日干しのフカヒレを3日間かけて戻し、熊本県の天草大王とスッポンをベースにした餡を取り合わせている。タイ中華をモダンな美食に昇華させた一品であるといえよう。別添えされるニンニクや唐辛子を加えたオリジナルの「タイ風黒酢」は、非常にコクがある。途中で加えれば、味わいの変化も楽しめるはずだ。
「フカヒレ タイ薬膳」。©️美会
“〆の食事”には「カレー2種(世界一美味いカレー/グリーンカレー)」を提供。辛味とコクのあるマッサマンカレーとクリーミーでなめらかなグリーンカレーは癖になるコントラストだ。マッサマンカレーには神戸ビーフのタンと茄子が、グリーンカレーには九州の猪肉と筍が用いられている。パンダンリーフをのせて土鍋で炊いたジャスミン米は、馥郁たる幽香。
「カレー2種(世界一美味いカレー/グリーンカレー)」。©️東龍
14,000円のアルコールペアリングもオーダーしておきたい。フランス人ソムリエのピエール-アレクサンドラ・ポン氏によるフランス各地のワインが白眉。シャンパーニュから白ワインや赤ワイン、オレンジワインまでそのラインナップは幅広く、日本ではまだ有名でない貴重なワインも数多く楽しめる。日本料理の繊細な味わいに寄り添いながらも、タイ料理のスパイシーな味わいと調和するマリアージュばかりだ。
他では体験できない日本料理とタイ料理の融合を、是非とも「美会」で体験していただきたい。
美会(ビア)
住所:東京都港区六本木7-3-21 来山ビル2F
営業時間:17:30~23:00
定休日:日曜日・祝日
TEL.03-6804-2489