August 2018

ZOUGANISTA – フィレンツェで唯一の木象嵌細工職人

伝統を未来に繋ぐ日本人

text & photography yuko fujita

木を貼り合わせる細かな作業はナイフの先で。

「嵌める突き板の薄さは0.7~0.8mm。板目や柾目、それに加えてコブがあり、コブには特殊な光沢のある木目が生まれるのですが、それら天然の木目をどのポジションに置いていくか、絵としてどう成り立たせるか、これが実はとても難しい。いつもずっとそのことを考えています」

 絵を思い描いて木を選ぶことのほうが多いが、木目を見つけてからインスピレーションを得ることもあるし、木の組み合わせだけを何カ月も考えて材料を探しまわることもあるという。

「もともと何も作れないところから始まって、それがだんだんといろいろなものが作れるようになってきて。そうすると、もっと難しい注文が入ってくるんです。象嵌の作業自体は時間をかければできるのですが、注文するときはお客様も漠然としたイメージしかなく、その状態から作っていくのでお任せになることが多いんです。お客様の好みやイメージをどう汲んで形にしていくのか、そこが難しくもあり、楽しいところでもあります。そしてそれが徐々にできるようになってきているな、という実感はありますね」

 最近、象嵌を含めての家具製作の仕事も入ってくるようになった。今、木象嵌を生業としているのは彼だけで、職人としてこの仕事を極めていけば、さらに大きな仕事が入ってくるかもしれない。この仕事で成功を収め、木象嵌細工職人になりたいという若い職人を生むことが、自分の使命だとも語る。そうすることで、次世代にフィレンツェ伝統の象嵌技術を繋いでいくことができるからだ。

「嬉しいことに、世界の洒落者たちが自分の仕事に注目し始めてくれています。フィレンツェという街にいるからこそできることもある。もっともっと木象嵌の仕事の可能性を広げていきたいですね」

左上から時計回りに、チューリップウッド×メープルの名刺入れ450€~、望月氏のインスタグラムアカウントへと飛ぶ、マホガニー×バーチのQRコード350€~、オーク×真鍮の小銭入れ300€~、オリーブ×マホガニーでレザーとのコンビのメガネケース350€~。

ジョージ・ワン氏に納品前のスケートボード600€~。

ZOUGANISTA
ゾウガニスタ
Via dei Cardatori,20/r Firenze
mail@zouganista.com
zouganista.com
アルノ川を越えた、様々な職人が工房を構えているサン フレディアーノ地区にある。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 23
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