September 2016

STREET SMART

英国のサブカルチャーA to Z

text charlie thomas
issue10_P83_2

ロンドンでタバコを楽しむテディボーイ、1955年。

「ジャマイカでは、若者たちは休む間もなく働いて、少しでも生活をマシにしたいといつも願っていた。そこで手っ取り早くできたのが、見た目を整えて、ちょっとしたハスラーみたいになることだったんだ。シャープ・スーツ、ぴかぴかの靴に、つばの短いトリルビー・ハットで。つまりは自分のステイタスを獲得しようってことだ。60年代のジャマイカン・ルードボーイ文化というのは、富と強さを演じることだった。たとえ現実には、一文無しだったとしてもね。ルードボーイたちは、いつも街で最高のパーティに行くように装うんだ。現実はただ、路上でたむろしているだけなんだけど」

 ステープルの伝記『オリジナル・ルードボーイ』の共著者であるトニー・マクマホンは言う。

「ジャマイカのルードボーイたちは、われわれの視点からすると、人生の選択肢が限られているように見える。しかし彼らは目の覚めるような装いと反骨心を貫き通した。彼らの見た目は、自信に溢れていたのだ」

 モッズやスキンヘッズのようなムーヴメントから、私たちが何を学ぶことができるかといえば、彼らが自分たちのコーディネイトに向ける細部までのこだわり、そして常に最高の自分を見せたいというパッションである。

 ビーチサンダルとオールインワンの世界にあって、THE RAKEはスタイルについて読者にきちんとした着こなしと、ドレスアップを推奨することを誇りに思っている。服飾評論家のニック・コーンは、かつて彼が知っていた若いモッズについて、こう語ったことがある。

「ニューキャッスル・アポン・タイで知り合ったトーマス・ベインズという少年は、そこにシューツリーとパンツのプレスに使えるアイロンがなかった場合、パーティでのセックスを拒否していた」

 これは少々やりすぎかもしれないが、紳士たちが老いも若きも自らの装いにますます誇りを持ち、メンズウェアの復興が続くということなら、大歓迎である。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 10
1 2 3 4 5 6 7 8