September 2016

STREET SMART

英国のサブカルチャーA to Z

text charlie thomas
issue10_P82_1

スキンヘッズ集団、ピカデリー・サーカスにて。1969年。

 ヨーロッパ流のシックは、フランスのヌーヴェルヴァーグ映画がお手本となた。ジャン?ポール・ベルモンドやアラン・ドロンといったスターたちは、すっきりと仕立てられたスーツを不良っぽく着崩して、女の子を腕にぶらぶらさせていた。彼らのスタイルはサヴィル・ロウの堅さからも、エドワード時代からの華美な伝統ともかけ離れていた。

 気軽にしてスタイリッシュ、なげやりにしてエレガント。何気なく口にくわえたタバコなど、すべてにおいて自然で格好よかった。これらは若きモッズにとって憧れの的となり、青年たちは外国の映画を見て、言葉はひとこともわからなくても、一生懸命メモを取ったのだ。ヨーロッパ流のエレガンスが、アメリカのアイビーリーグ・スタイルと組み合わさって生まれたのがモッズなのだ。エルムスは記す。

「日中のモッズたちは、カジュアルだった。柔らかなレザーのスリッポンの靴、細いパンツ、コットンのホワイトのボタンダウン・シャツなどを着ていた。『マルストーンズ』でのジャケットのマイルス・デイヴィスが好例だ。あるいはロールカラーのシャツを着たビリー・エクスタイン、ボックスジャケットのジャン=ポール・ベルモンド、クルーネックセーターのアラン・ドロン、サングラスのマルチェロ・マストロヤンニなどなど……。夜になると、彼らは常にスーツでドレスアップした。なめらかに、ぴったり体に合うようにあつらえたスーツだ。そしてジャズとソウルとR&Bが鳴り響く、ザ・シーンやザ・フラミンゴなどの地下クラブへくり出すのだ」

 50年代のジャズの巨人たちの、ボタンダウン・シャツとペニーローファーが生き残った一方で、ゆったりしたサックスーツは採用されなかった。その代わりにモッズは、短めのジャケットと細いパンツを特徴とする、イタリア風の仕立てを好んだ。60年代前半に紳士服店ジャンプ・ザ・ガンのオーナーだったアダム・ル・ロイは、典型的なモッズ・スーツをこう説明する。

「三つボタンのジャケットに、蓋つきスラント・ポケットとチケット・ポケットがついているのが定番。ジャケットはかっちり組み立てられていて、もし可能なら、胸部に普通よりも重い布を使ったほうがより締まった見た目になる。バックベントはアイビーリーグの影響でシングルが多いけど、僕としては、ツインのほうがいいと思うね。下襟は幅2.5インチまで。一番上のボタン位置はそれなりに高くなる。パンツは正面がフラットで、スラッシュポケットかフロッグマウスポケットがついている。後者のほうがベターだ。ヒップポケットはひとつ。裾幅はおよそ16センチで、とても先細りになっている。もっと太いのはだめ。臀部も股もすべてにおいてスリムカットだけど、きつすぎてはいけないし、正面にシワが寄ってもいけない」

THE RAKE JAPAN EDITION issue 10
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