September 2016

STREET SMART

英国のサブカルチャーA to Z

text charlie thomas
issue10_P80_3

トッテナムのメッカ・ダンス・ホールのテディボーイズ、1954年

そしてモッズが生まれた カルト的な人気を得ている本『ザ・ウェイ・ウィ・ウォア』の著者ロバート・エルムスは、こう述べている。

「テッズは彼らの上にいる者たちから服を盗んだが、それを自分たちのいる荒れ果てた裏通りで着るだけで満足していた。それに対してモッズは、世界中に足を延ばした。服を求めてイタリアやフランスに、レコードを求めてアメリカに、アティテュードを求めてカリブ海の人々に関心を向けた。ナポリ人のようにスクーターに乗り、ジャズクラブで見た黒人のGIのように腰から上で踊り、同じ集合住宅に住んでいた西インド諸島の移民たちのように、体を揺らしながら歩いたのだ」

 モッズはおそらく最初の、完全にオリジナルなサブカルチャーだったといわれている。彼らは地球のあちこちからさまざまな要素を借りてきて、それらを組み合わせて、極めて野心的かつクールなスタイルを作り出した。

 70年代後半のモッズ・リバイバルの先鋒となった“モッドファーザー”ことポール・ウェラーは、このムーヴメントを「英国的創意工夫の極み」と説明する。

 モッズがどのように誕生したのかは知られておらず、創始者といえるような人間も存在していない。しかし最初のモッズは、58年から60年の間に、ロンドンのソーホーに登場したと信じられている。ソーホーは、そうしたカルトがはじまるのにはうってつけの土地だ。

 作家リチャード・ライトによれば、「この活気に満ちていかがわしい、寛大で造的な場所は、ヨーロッパやアフリカ、カリブ海からの移民たちを受け入れていた。イタリア系移民たちはソーホーにレストランとコーヒー・バーを開き、そこはパブへ入ることができないティーンエイジャーたちのたまり場になった」

THE RAKE JAPAN EDITION issue 10
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