一生愛せる、ニッポンの職人が作る服 Vol.05

ペコラ 銀座の
“カシミア ハンティング ジャケット”

July 2020

今や、世界一美しい手仕事とも称されている日本の職人たちであるが、
彼らの作品の中でも、まさに“一生もの”といわれているマスターピースを紹介する。


ミラノスタイルの服だけが佐藤英明氏の真骨頂ではない。
カシミア ハンティングジャケットのデザイン、甘く優しい雰囲気の仕立てで大変素晴らしい。
text yuko fujita
photography jun udagawa
styling akihiro shikata

台湾のセレクトショップ「オークルーム」のオーナー、ロビン・チャン氏のリクエストをもとに佐藤氏がアレンジして誕生したハンティングジャケット。ハンティングジャケットのオーダーは¥295,000~。写真のジョンストンズのカシミアで仕立てた場合は¥360,000。Pecora Ginza

テーラード仕立てならではの美しさが満載 デザインすることは嫌いでないと話す佐藤英明氏に何か新しいリクエストをすると、イメージをいい感じに汲んだ服を仕立ててくれる。

 そういった服の中ではミラノの昔のサルトが仕立てたような肩幅広め、ローゴージのスーツが面白かったし、今回紹介するカシミアのハンティングジャケットもまた、デザイン完成度が高くて大変印象深い。

 生地はドニゴールツイードのようで実はジョンストンズのカシミア100%。手できれいにいせ込まれた美しい袖付けに柔らかさがにじみ出ている。4つのポケットもいせ込みながら縫われており、膨らみを持たせているのもサルトリア仕立てならでは。氏の趣味がハンティングということもあるかもしれないが、これは珠玉の作品である。

きれいにいせ込まれた袖付けは、カシミアの柔らかさも手伝って、とてもエレガントなシワが生まれている。瞬時に上質な服であることが伝わる1着だ。

いせ込んで縫ってふくらみを持たせたプリーテッドポケット。既製品にはない、テーラーならではの手法で、このジャケットのキモでもある。

ドローコードでウエストを絞ることができる。

ドニゴールツイードのように見えるが、実はジョンストンズのカシミア。ブラウンをはじめとするこれの色違いを6種類ラインナップしている。

Hideaki Sato / 佐藤英明1967年生まれ。家業だったテーラーを日本で学んだのち、88年からパリで修業。90年からミラノのマリオ・ペコラ氏のもとで学び、95年に帰国。2000年にペコラ 銀座をオープン。

ペコラ 銀座
東京都中央区銀座4-3-2 清水ビル3F
TEL.03-3535-6465
www.pecoraginza.com

本記事は2018年5月24日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 22

Contents

<本連載の過去記事は以下より>

サルトリア チッチオの “マニカ フォルケッタ”

サルトリア シルヴァノ の “カッポット ミリターレ”

レスレストンの “ビスポーク シャツ”

サルトリア カブート の “ツイード ジャケット”