HERMÈS BESPOKE OBJECT
ちょっと特別なエルメス Vol.1
夢を釣るためのフライフィッシングセット
July 2022
「大人になった少年のおもちゃ箱」で生まれる、夢のアイテムをお目にかけよう。
アトリエではサーモン用3点、マス用10点、合計13個のフライが製作された。フライを収めたメープル材のボックス(次の写真左下)はカマイユ配色のレザーのマルケトリー(寄木細工のレザー版)で仕上げられている。ボックス ¥946,000 Hermès(エルメスジャポン Tel.03-3569-3300)
1837年創業のエルメスは、もともとビスポーク専門の馬具工房として始まった。顧客からの注文を受け、ひとりひとりに合った馬具を製造していたのだ。バッグなどの既製品がコレクションに加えられたのは、ずっと後になってから。だからビスポークは、エルメスの本流といっていい。
同社がオーダーの部門“オリゾン”を擁するのも、このような経緯があるからだ。パリの北、郊外のパンタンに位置し、約40名のスタッフが常駐している。ここではあらゆる夢の実現が可能だ。財布や鞄などの革製品からクルマ、船、飛行機の内装までも請け負う。部門のデザイン&エンジニアリングディレクター、アクセル・ドゥ・ボーフォール氏の言葉を借りれば、「大人になった少年のおもちゃ箱」なのだ。
今回ご紹介するのは、そんなオリゾンで生み出されたフライフィッシングセットである。コンセプトは“天然素材をありのまま大切にした用の美”で、日本からのアイディアで誕生した。
竿は釣り好きのフランス人の職人が考案したリネンファイバー製。持ち手にはレザーが巻かれ、竿先には《クルー・ド・セル》の刻印が打たれている。柳製のバスケットは柳細工職人の手で編まれており、ひとつ編み上げるのに約20時間を要するという。鮮やかな色の羽と小さな《クルー・ド・セル》を組み合わせたグリグリ(お守り)をバスケットのパーツに付ければ、まるでフライそのもののようだ。これを実際の釣りに使うのか、それとも観賞用として楽しむのか、それは顧客の自由だが、たとえ後者だとしても、夢という舞台において、大きな釣果をあげられるだろう。
左:リネンファイバー製の釣り竿。持ち手にはレザーが巻かれ、竿先にエルメスのシンボル《クルー・ド・セル》が刻印されている。3分割して収納可能。¥1,177,000 右上:柳製バスケット。職人がひとつひとつ手で編み上げる。写真のプルシアンブルーの他、さまざまなカラーでオーダーすることができる。¥1,485,000 中3つ:雄仔牛のフランス製レザー“ヴォー・スイフト”で作られたチャーム。各色オーダー可能。各¥69,300 右下4つ:フライ各種。参考商品。all by Hermès(エルメスジャポン Tel.03-3569-3300)
本記事は2022年3月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。
THE RAKE JAPAN EDITION issue 45