FROM THE HEART

ナポリの、そしてイタリアの宝:“ダルクオーレ”のスーツ

June 2019

text ben st.george

ダルクオーレのス・ミズーラを愛用するセレクトショップ、ブライスランズのイーサン・ニュートン氏(上左と下ふたつ)とケンジ・チュン氏(右上)。二人とも世界を代表するファッショニスタであり、ダルクオーレの服の大ファンである。ブライスランズでは、ダルクオーレの服を取り扱っている他、トランクショーなど、数々の催しを企画している。

「ジャケットはできるだけアンコンでソフトな作りとすることが大切だと思っています」と彼は言う。

「それこそがジャケットの着心地をよくする王道だからです。ジャケットを着用した時、まるで何も羽織っていないように感じさせることが理想です。そして同時に、ジャケットが体によくフィットし、美しいシルエットを描いていることも重要です」

秘密はアームホールに ダルクオーレは、どうやってそんな服作りを可能にしているのだろうか? 彼や彼の弟子たちに聞けば、きっと同じ答えが返ってくるだろう。秘密はアームホールにあるのだ、と。アームホールなど、洋服のディテールとしては皆同じだと思われるかもしれない。しかし、ダルクオーレのジャケットを着てみれば、その違いはすぐにわかる。とにかくラクなのだ。ダルクオーレのハウススタイルにおいて、アームホールこそ肝心要の部分なのだ。そしてテーラーの哲学を具現化した部分でもある。

「ジャケットにおいては、アームホールこそ、最も重要な部分です」とルイジは言う。

「より正確にいうなら、アームホールの深さです。大きな袖ぐりを用いて、着用時にアームホールが前を向くように袖を取り付けます。これが動きやすさと快適さに繋がるのです」

 伝統的なナポリの技法、スパッラ・カミーチャ(シャツのような肩)やロリーノ(ややコンケーブした肩)だけではなく、ルイジの方法はさらに進んでいる。独自の袖付けのテクニックを使うことで、アームホールを高く、大きくキープすることができるのだ。それによって、比類なき動きやすさが生まれる。

「この方法だと、アームホールを大きく、柔らかく作ることができるのです。そしてパッドを使わず、ロリーノのテクニックなしでも、アームホールが大きく開いた状態を保つことができます」彼はさらに続ける。

DIGITAL TECH: DAVID HANSON
PHOTOGRAPHER’S ASSISTANT: VERONICA PEREZ
GROOMING: LUCY HALPERIN
GROOMING ASSISTANT: BETHANY JOHNSON

THE RAKE JAPAN EDITION ISSUE 23
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