Dressing for a New Era Part1
鴨志田康人:大研究 Vol.3
スタイルはすべて経験から学んだ
April 2021
日本人ならではの感性と美意識、経験によって生まれた独自のスタイルはどのように作られ、完成されたのか?
photography tatsuya ozawa
毎日のコーディネイトを決めるのは大抵5分。ほとんど悩まないというが、その日の気分を表現するテーマがあるらしい。この日は「フランス的ダサカッコイイ」。ジャケットはアットリーニ別注。肉厚なスコティッシュツイードでふたつボタン、パッチ&フラップポケット、センターベント、エルボーパッチ付きのカントリースタイル。長年持っていたが着用していなかったものを自ら洗濯機で洗い、肩パッドを外したことでいい馴染み感が出ている。
最終日にはお気に入りのインテリアショップを訪ねた。「カテゴリーで区別するのは好きではない」という言葉通り、店内はメイド・イン・ジャパンと海外の製品が共存し、独自のテイストを打ち出している。
鴨志田氏のコーディネイトも同様で、そのスタイルは日本、外国とカテゴライズは難しいのではないだろうか。独特の感性は天性のもので、人には天才肌と言われるというが、こうした感覚は果たして学べるものなのだろうか?
「はじめは教科書に従ってスタイリングを学びました。若い頃はセンスがなかったと思います。フランス人のスタイル、着崩し方の影響が大きい。センスを叩きこんで努力した結果です。今までのアイビーによる呪縛から逃れた。つまり基礎を学んでから応用を学んだ。順番としては良かったですね」
カモシタスタイルが海外から評価されて、日本人だと意識することは?
「洋服文化は外国から来たものだから、いろいろな情報がある中で自分のスタイルをどう選択するか。それが海外から見たら日本人的スタイルに見える。服そのものが日本人っぽいということではなく、コーディネイションの話。だってアメリカ人だってサヴィル・ロウで仕立てたり、ブルックスのボタンダウンを着るイタリア人もいる。着こなし方に極めてその国らしさが出る。自分がフランス人の着崩しに驚いたように、海外からみると日本人のマルチミックスな着こなしは、自分たちの感覚を超越しているように感じるのかもしれない。自分では日本人だとあまり意識しないのですが、日本には誇りを持てる文化がある。日本の強みや伝統的なものをアピールしていきたいですね」
「若い頃は海外で気後れすることもありました。自分なりに頑張って多くのものを学んだことから、いつしか自分自身を認めてもらうようになり、彼らと対等に付き合えるようになったんです。海外は人と人との付き合いが重要で、個人が評価される社会だということを実感しています」
撮影協力:COMPLEX UNIVERSAL FURNITURE SUPPLY
THE RAKE JAPAN EDITION issue 38