ROGER DUBUIS CEO
Jean-Marc Pontroué Interview

ロジェ・デュブイが提案する
体験という新たな価値

Tuesday, August 1st, 2017

 

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Jean-Marc Pontroué

ジャン=マルク・ポントルエ

1964年、フランス・ナント生まれ。ビジネススクールにて経営管理学を学んだ後、レザービジネスの世界でセールスマネージメントとして活躍。1995年にLVMHグループに入社し、パリにてジバンシィのセールスディレクターに就任。2000年にモンブランの商品戦略開発副社長に就任。2011年よりジェネラル・マネージャーとしてロジェ・デュブイに入社。2012年より現職。

 

 

 “Dare to be Rare(あえて個性的に)”を標榜するジュネーブの時計ブランド、ロジェ・デュブイは、初めてモータースポーツの世界との提携を発表し、限定モデルをフィーチャーしたエキシビションを先月、東京で開催した。舞台となったのは東雲にあるラグジュアリースーパーカーのチューニングが行われるガレージ。思いがけない会場での大胆な発表に報道関係者も驚きを隠せなかった。

 

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「ロジェ・デュブイとしてモータースポーツの世界に進出して行くのはこれが初めて。その上で私たちが重要視しているのが、カスタマーエクスペリエンス。つまり体験型の商品であるというコンセプトです」と語るのは、今回のエキシビションに合わせて来日したロジェ・デュブイCEOのジャン=マルク・ポントルエ氏。

 

「今回披露する限定モデルの多くは、もう完売しているんです(笑)。なのになぜこのようなエキシビションを開催するのか。それは何といっても私たちのコンセプトを多くの人々に知ってもらいたいことにつきます。理解してもらい、楽しんでもらいたい。そして価値を伝えたいのです」

 

 時計業界がクルマ業界とコラボレートすることは少なくない。どちらも男心をくすぐるメカニックとして共通する点も多々あり、重なるファン層も存在する。しかしロジェ・デュブイのモータースポーツ界の進出は、他のブランドのそれとは明らかにアプローチが異なっている。

 

「それが狙いでしたので、他ブランドとは違うと感じていただけたら本望です。モータースポーツ界と提携するにあたって、まず私たちもいろいろ調査したところ、多くのコラボレーションが文字盤上にロゴを乗せるのみというものだった。また特別モデルということで限定と謳っていますが、数百本、数千本など生産されていることもあります。本数が少ないということに限定の価値があるわけで、大量に作ったら意味がないでしょう? ですから私たちがモータースポーツ業界とコラボレーションするのであれば、きちんと意義のある形で実現させたかった」

 

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 今回の発表には大きな3つの柱がある。ひとつ目は新素材の提案。宇宙航空業界で使われている純粋で高機能のメタル、コバルトクローム マイクロメルト®︎を時計業界で初めて採用したモデルを発表した。新素材の採用に積極的に取り組む同社らしいアプローチである。ふたつ目は、世界有数のモータースポーツ競技大会にタイヤを提供する世界最大のタイヤメーカー、ピレリ社との提携。4つの限定シリーズではなんと実際に大会で勝利を収めたタイヤのラバーを時計のストラップに採用している。そして最後は、次世代のスーパーカーを開発するイタリアのデザイン・ハウス、イタルデザインとの提携である。

 

「ロジェ・デュブイは常に、ムーブメントも外観もすべて独自路線を突き進み、伝統にとらわれることなく新しい時計を生み出してきました。ですからモータースポーツとの提携も他に類を見ないものを実現しました。これらは長期契約ですので、1度きりのコラボレーションではなく、永続的なひとつのコレクションとしてブランドの大きな柱となる予定です。新作発表の場はSIHHだけでなく、今後はジュネーブのモーターショーなどのクルマ関連のイベントでも行っていきます」

 

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 ロジェ・デュブイといえば、トゥールビヨンやスケルトンモデルがラインナップの中心だが、今後はこれらモータースポーツ業界とのコラボレーションモデルによってさらなるバリエーションの拡充が実現する。しかも、どのコレクションのモデルにおいてもアストラル(星)マークをはじめとするブランドらしい独自の特徴を打ち出していくという。

 

「デザイン、素材などのあらゆる分野において、独自の路線を突き進めているのが私たちの強み。私たちがいちばん時間をかけているのは開発であり、その独創的なインスピレーションの源は、実は他の業界から得ているのです。例えば、開発チームはモーターショーや航空業界のショーなどに足を運び、新しいハイテク素材を追求しています。最近は医療関係の業界の動きにも注目しています。常に違った分野にも目を向けて敏感になることによって、既成概念にとらわれない、新しい時計を生み出すことができるのです」

 

 時計業界の歴史にとらわれることなく続けられる、モノづくりへの飽くなき挑戦は商品(=時計)だけではない。時計を買うという出来事をも変化させつつある。

 

「エンドユーザーにとってどのような新しい面白さを提供できるか、ということを強調していきたいと考えています。そこで重要視しているのがカスタマーエクスペリエンス。つまり購入した方に、体験して購入いただくということ。例えば、今回発表したピレリ社とのコラボレーションモデルを購入されたお客様には、単純に時計を店頭でお渡しするのではなく、実際にF1レースのピット内に入っていただき、技術者と一緒にレースを体験することができます。白熱するF1レースの空気を味わってもらった上で、時計を贈呈します。体験も含めた商品なのです」

 

 こういった販売方法は、時計業界にはこれまでほとんどなかった新しい取り組みである。一方、クルマ業界では早くからこの販売方法に取り組んでいた。例えばポントルエ氏が前職時に10年間住んでいたドイツでは、顧客は納車を待つのではなく、デリバリーセンターに赴き、購入した車を取りに行くというシステムだった。実際に足を運ぶことで、エンジニアと直接会うことができ、エンジンや仕様について説明を受けることができる。

 

「時計製造の現場を見せないブランドも多いんですが、私たちはとてもオープンにしていて、すべて公開しています。どのような開発を行なっているか、どうやって時計ができあがっていくか、私たちは“バックステージ”と呼んでいるのですが、そのプロセスをお客様に見学していただきます。また実際に時計の組み立てを体験してもらうこともできます。日本からも、もう何十組の方々をマニュファクチュールにご招待しました。まさに“時計を買う”という購入体験が商品です。今までの時計業界にとらわれない。それがロジェ・デュブイなのです」

 

 

ロジェ・デュブイ

TEL.03-4461-8040

http://www.rogerdubuis.com/