Thursday, December 27th, 2018

I’VE SEEN THE LIGHT
初めてのモーニングコートを誂える

THE RAKEの創始者ウェイ・コーが、初めてのモーニングスーツを仕立てた。
選んだのは、英国サヴィル・ロウの老舗ハンツマンだ。
新たな装いは、晴れやかなふたつのサマーイベントで披露された。
text wei koh photography kim lang

 私の親友、アーメド・“シャリー”・ラーマン氏は、底なしに気前がいい。そんな彼から、伝説的な競馬イベント、ロイヤル・アスコットに誘われるたび、私は決まって「モーニングコートを持っていないんだ」と答えてきた。
 仕方ない、実情をお話ししよう。ファッション雑誌の創始者としては大変お恥ずかしいことに、私は少々だらしがない。前回のピッティ ウォモで、気温が40度近くに達する中、私は改まった格好を真っ先に諦めて、ルビナッチのグルカショーツとシャツを身に着けた。そのシャツたるや、東南アジアの売春宿で、ドアマンが着ているような代物だった。
 その日がリングヂャケットの社長、福島薫一氏と会う日であることを、私はもちろん忘れていた。私は「THE RAKE の創始者」として紹介されたが、彼は私のけばけばしいアンサンブルを二度見して「本当ですか?」と答えた。

正しいモーニングとは?

 私のような初心者のためにご説明すると、モーニングコートの起源は19世紀にさかのぼる。当時の紳士はよく、前裾を斜めに裁ったロングジャケットを身に着け、朝に馬を走らせていた。そして20世紀になると、昼間用礼装として、フロックコートよりも好まれるようになった。
 最もフォーマルで正しいモーニングコートは、ピークドラペル(剣襟)のシングルブレステッドで、リンク式の留め具部分から前裾を斜めに裁っており、丈は膝まである。へちま襟またはピーク襟が付いたダブルのウエストコートを合わせ、それらにはパイピングを施すことができ、ドレススリップを採用する。ドレススリップとは、ウエストコートの上端に付ける白い生地で、下側にもう1層あるかのような錯覚を与えるというものだ。
 シューズは、ブローギング(穴飾り)を施していないオックスフォードを、軍事パレードの参加者のごとく磨き上げる。乗馬に関する場では、ジョッパーやチェルシーブーツという選択肢もある。シャツの襟とカフスは白で、タイは適切な位置にタイピンで留める。ブートニエールとチーフが必要なのはいうまでもない。
 モーニングのてっぺんで輝くアイテムは、シルクのトップハットだが、本物のシルク帽を製造する工場は何十年も前に全焼し、その製法も失われてしまった。そのため今日のハットは、艶を放つように仕上げたラビット・ファー製である。
 グレイのモーニングコートはブラックよりカジュアルだとされていたが、アスコット競馬などで人気を博し認識は変化した。グレイのモーニングを、ロイヤル・ウェディングのような場でも着用できるよう押し上げた人物がいる。それはチャールズ皇太子に他ならない。殿下は世界で最も見事なミドルグレイのモーニングをお持ちだ。アンダーソン&シェパード時代のジョン・ヒッチコック氏が手がけたもので、殿下はハリー王子とメーガンさんの結婚式でもお召しになった。

パイピングを施した、ブラックのモーニングコートとウエストコートとともに、カシミア・ストライプ(この場合は柄を指す。生地はウール製)のトラウザーズを身に着けたウェイ・コー。仕立ては英国サヴィル・ロウの老舗、ハンツマンだ。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 25
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