From Kentaro Matsuo

THE RAKE JAPAN 編集長、松尾健太郎が取材した、ベスト・ドレッサーたちの肖像。”お洒落な男”とは何か、を追求しています!

「高級お直し店」という存在を広めた
檀正也さん

Saturday, June 10th, 2017

檀正也さん

 サルト代表取締役 檀正也さん

text kentaro matsuo  photography tatsuya ozawa

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日本に“高級お直し店”という存在を広めた、サルトの社長、檀正也さんです。

高身長にスリムな体型。オーダーメイドのスーツがよくお似合いです。

「高校生の頃は、もっと細かった。身長180cmに対して、体重は50kgちょっとしかなかったのです。だから、どんな服を買っても、ダブダブになってしまう。そこで買った洋服は、すべて直してから着ていました。どこをどう直すか、いつも自分で工夫していました。その頃から“お直し”が大好きだったのです」

大学卒業後、アパレルメーカーへ就職し、企画を担当するも、どうしても興味は、“作る”ことよりも“直す”ことへ向いていってしまったそうです。

「せっかく大枚叩いて買った洋服なのに、1シーズンで着られなくなってしまうのは、おかしいと思っていました。ヨーロッパなどでは、当時からお直しの文化がありましたからね。また私は実は、サルトの前に一つ会社を立ち上げているのですが、そこでは環境にやさしい洗剤や香り、防虫剤などを扱っていました。若い頃から、そういったことに関心があったのです」

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スーツは、韓国のB&テーラーによるもの。サルトのショップでも扱っています。

「スーツ職人だった父親と、イタリアで修行した息子2人がやっているテーラーです。サルトの支店をソウルに開く際に、たまたま見つけて惚れこみました。とにかく柔らかくて着心地がいい。また、すごい数のパターンを持っていて、デザインがとてもいいんです。決まり切った形しかやらない普通のテーラーとは、全然違います」

 

シャツは、サルトのオリジナル・オーダーメイド。カラーピンは後付けです。

 

タイは、加賀健二さんが手がけるフィレンツェのセブンフォールド。最近いろいろなところで見かけます。

「加賀さんとは、10数年のお付き合いになりますね。今回もいいコレクションでした」

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時計はアンティークのブローバ。かつては非常にメジャーだった、アメリカの時計メーカーです。

「なんでも古いものが好きなのです。クルマもそうで、現在の愛車は、フィアット1200カブリオレという1965年式のイタリア車です。これがもう、壊れる壊れる。この間は走行中に、ドアノブが落ちました(笑)。現在も修理中です」

もう、なんでも直すのがお好きなのですね。

 

 シューズは、やはりフィレンツェの深谷秀隆さんのイル・ミーチョ。このブランドも、もはや世界中の洒落者の定番ですね。

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「サルトを立ち上げたのは、2000年のことでした。当時はセレクトショップがこぞってイタリア製の服を扱っていました。しかし今と違って、その作りはひどかった。イタリア人が作る服はいい加減で、袖がねじ曲がっていたり、マニカ・カミーチャの雨の分量が左右で違っていたり、そんなことはしょっちゅうでした。そこで、ビジネスを立ち上げるなら、そこを狙うしかないと思ったのです」

サルトが登場するまでは、お直しは “町のお直し屋”に持ち込むしかありませんでした。しかし、そういった店はお洒落とは無縁だったので、納得いく仕上がりからは、ほど遠かったのです。そこへ檀さん率いるサルトが現れて、「いい服を、少しずつお直ししながら長く着る」ということが、ようやく一般的になったのです。

現在では発祥の地、福岡をはじめ、東京、名古屋、札幌、そして韓国ソウルなど、各地にショップを展開されています。

 

さぞや、もうかっているでしょう、と聞くと、

「全然もうかりません」とのお答え。

「この仕事は、高いものを扱っているので、決して手は抜けない。そして、凝れば凝るほど、もうからないのです。洋服なら安いラインも作れますが、お直しでは、そうはいかないでしょう?」

なるほど、確かに。

しかし、そういう檀さんの顔は実に嬉しそうです。この方、根っから「直す」ことが好きなのですねぇ。クレイジー・ダイヤモンドみたいです。

 

<サルト銀座店>

東京都中央区銀座2-6-16 第二吉田ビル2F・3F

Tel.03-3567-0016

11:00-19:30(日・祝11:00-19:00)最終受付は18:30(日・祝 18:00)

http://www.sarto.jp/