From Kentaro Matsuo

THE RAKE JAPAN 編集長、松尾健太郎が取材した、ベスト・ドレッサーたちの肖像。”お洒落な男”とは何か、を追求しています!

日本一高価なセレクトショップとは?
中村哲彦さん

Monday, April 10th, 2017

中村哲彦さん

 HIKO取締役会長

text kentaro matsuo  photography tatsuya ozawa

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いま話題の超高級セレクトショップ、銀座HIKO(ひこ)のオーナー、中村哲彦さんです。この店で驚くのは、置いてある商品が、あまりに高額なことです。百万円、2百万円は当たり前。中には1千万円以上のプライスタグが付いているブルゾンがあったりします。もう洋服屋というより、外車ディーラーの世界です。ここにいると、だんだん感覚が麻痺してきて、例えば10万円のニットを見つけたりすると、「安い!」と思ってしまいます。

 

HIKOの創業は1986年、もともとは熊本のお店です。九州男児といえば、質実剛健なイメージですが、熊本はちょっと違うのだとか。

「熊本はファッション好きが多いのです。飛びつくのも早いが、飽きるもの早い、それが熊本県人ですね(笑)」

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 スーツはジリー。「世界最高のものしか作らない」というコンセプトを掲げるフランスのブランドです。素材はウール×シルクで、うっすらと上品な光沢があります。

タイもジリー。

「初めてジリーの商品を仕入れたのは、もう25年くらい前になります。カシミアのコートでした。品質が他のものとは全然違うので、びっくりしました。値段も倍以上して、こちらにも驚きました」

 

シャツは日子のオリジナル。

 

ラペルに挿したピンは、特注のホワイトゴールド製。「魚座なので、イルカをモチーフにしました」と。

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時計はアンティークのヴァシュロン コンスタンタン。20年ほど前にパリで購入されました。

 

シューズはイタリアのバレット。

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「がちがちにキメるのは嫌いなのです。どこか、抜けている部分がないと、粋じゃない。例えば私の場合は、スーツを着る時などは小物やシューズで少し遊びを入れています。

 

中村さんは、バブル期には、フェレ、ミッソーニ、フェラガモなどのイタリアン・ブランドを、いち早く九州に入れました。その後、自らの店HIKOを立ち上げ、しばらくはうまくいっていました。

「しかし、バブルがはじけて、売り上げが急にダウンしました。それまでは問屋から回してもらった商品を、そのまま陳列し、売れた分だけお金を払うというやり方でした。でも、そんな商売は続けられなくなった。そこで、自ら海外へ行って、自分がいいと思ったものを、直接仕入れることにしたのです。当時、われわれのような小さな店で、そんなことをやっているところはありませんでした」

 

海外へ出てみると、今まで見えていなかったものが、見えるようになったといいます。

「われわれが知らなかったいいものがたくさんありました。それらをお客様に紹介したいと思い、ひたすらやってきたら、こんな品揃えになったのです。でも最初に超高額商品を仕入れたときは、ドキドキしましたね。確か200万円のアストラカンのコートだったと思います。『売れなかったら、どうしよう』と何日か迷いました。しかし、どうしても頭から離れなかった。今だったら、なんとも思いません。仕入れは度胸ですね(笑)」

 

銀座に進出したのは、昨年の10月です。そのきっかけは熊本地震でした。

「あの地震で店は半壊し、何日も車中泊をするはめになりました。自然の力の前では、人間は無力だと思い知らされましたね。『人の命なんて、いつどうなるかわからない。だから、やりたいことはやっておこう』と思い、かねてから考えていた、東京進出を決めました」

 

現在では、娘の響子さんと二人三脚で店を切り盛りされています。

「娘はまだまだですね。面白い発想をすることもあるけれど、もっと経験を積まないと、経営者としては生きていけない。点数をつけるとすれば、60点くらいでしょうか」

となかなか手厳しい。しかし、その目は愛情に溢れていました。

 

世界中から選び抜かれた超一流品を見に、ぜひHIKOへ足を運んでみてください。

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 現在最も高額な商品は、ヘッタブレッツのクロコダイル・ブルゾン。価格は驚愕の1,400万円!

ヒコ店内