From Kentaro Matsuo

THE RAKE JAPAN 編集長、松尾健太郎が取材した、ベスト・ドレッサーたちの肖像。”お洒落な男”とは何か、を追求しています!

ニューヨークの精神科事情とは?
松木隆志さん

Thursday, August 25th, 2016

松木隆志さん

精神科医

text kentaro matsuo  photography tatsuya ozawa

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アメリカ、ニューヨークで精神科医を営まれている松木隆志さんのご登場です。マウントサイナイ医科大学ベスイスラエル病院にて、精神科救急部の部長をなさっています。そこは24時間体制で、精神に異常をきたしてしまった人たちが担ぎ込まれてくる、つまりはERの精神科版です。

「最近ではニューヨークでも脱法ドラッグが流行っていて、救急搬送されてくる方が急増しています。中には極度の興奮状態で大暴れをするような人もいますよ。襲われたりして、スタッフが怪我をする危険があるため、救急外来には何人もガードマンがいますし、必ず金属探知機で検査をしてから中に入れるようにしています」

ただでさえヤバそうなニューヨークで、本当にヤバい人たちを相手にしているとは、大変なお仕事です。その現場は壮絶でありましょう。

 

プライベートオフィスでは一般外来診療とカウンセリングも行っており、こちらで診療しているのは普通の方たちばかり。日本人の患者さんが多いとか。

「患者さんは、8割が女性です。駐在員の妻の方が多いですね。言葉ができず、やることもなく、狭い人間関係の中で疲れ切ってしまっている。『旦那の上司の奥さんに嫌われている』と悩んでいたりね。男性の場合は、金融マンや商社マンが多い。ニューヨーク在住のビジネスマンは、とにかく朝から晩まで働きづめ。それで心のバランスを崩してしまう」

そんな彼ら彼女らを相手にするときは、医者のユニフォームである白衣は着ないのだとか。

「アメリカの精神科医は白衣を着ません。白衣を着ると、患者さんに威圧感を与えてしまうんです。ツィードなどのジャケットに、ネクタイをするのが一般的です」

 

松木さんご自身も、ジャケット・スタイルの日がほとんどです。そしてそのすべてを、VESTA by Johnford(ヴェスタ バイ ジョンフォード)で仕立てています。美人マネージャー、北川美雪さんがいることで有名な、銀座のテーラーです。

「私はニューヨークでは洋服は買いません。テーラーはありますが、どこもフルオーダーがメインでとても高い。それにアメリカだと大きめに仕上がってしまうことが多い。VESTAのように手頃な価格で、着心地がよく、キレイなフィットのものが買える店はないのです。それに北川さんのセンスも信頼できますし」

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チェックのジャケットはゼニア製のシルク×ウール地を使ったもの。

コットンのパンツはドーメル製の生地で作られています。

「小さなこだわりは、パンツのサイドポケットを縫い閉じてしまうこと。座ったとき開いてしまうことがなく、ラインがキレイに見えるのです」

シャツはアルビニの生地で。持っているシャツは、すべてダブルカフスだそう。以上すべてVESTAで仕立てたものです。_UG_2993

カフリンクスはティファニー。学生としてニューヨークに留学したときに購入したもの。

「かつてはジャズ・ミュージシャンを志していたこともあったのです。今でも50~60年代の黒人ジャズメンの着こなしに憧れます。だからカッチリした格好が好きなのです」

 

タイはポール・スチュワート。

「アメリカらしくなく、ヨーロッパっぽい」ところがお気に入り。

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シューズはクロケット&ジョーンズのハンドグレード。これもニューヨークで買いましたが、アメリカでは州ごとに税制が違っていて、マンハッタンで買っても、自宅のある隣州のニュージャージーへ直送すれば、衣料品は消費税がかからなくなるのだとか。

「服は日本、小物はニューヨークが多いかな」と。

 

コーディネイトのポイントは、ピンクとグリーンという反対色を組み合わせたところ。往年のプレッピーを彷彿とさせる配色ですね。

 

ファッションの取材だったにもかかわらず、ニューヨークでの精神科医としての話があまりに興味深く、ついつい聴き入ってしまいました。そのすべてを紹介できないのが残念です。松木さんの日常をドキュメンタリー番組にしたら、さぞや面白いことでしょう。